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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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17話『犠牲』

(……今回の話はキャプテン達に通しておいた方がいいな)

 シャルロットにヴレイブやゼロ炎のデータを盗む指示が出たのがインフラックスが奪われた後と先で変わってくるが、少なくとも……此方から襲撃する理由は出来る。
 最悪G-アームズチームを本社から動かし、キャプテンガンダムと合流して貰う必要が有る。キャプテンを中心とした特殊作戦部隊『シャドウフレア』チームに動いてもらう必要も有るだろう。

「一兄、さっきの質問の答えはまだ聞かない。だけど……状況的にオレ達だけじゃ何も出来ない。寧ろ、学園側に早めに内部告発しておいた方が罰は軽く済むかもしれないぞ」

「そ、それは……」

 四季の言葉に何も言えないのかシャルロットは中々口を開けずにいた。

「まあ、助けるって言うならこれが一番手っ取り早いかもしれないけどな」

「「え?」」

 目が笑っていない笑顔を浮べて笑う四季の言葉に思わず呆けた声を上げる一夏とシャルロットの二人。

「簡単だ。候補とは言え国の名を背負う事になる代表候補生の身辺調査の一つもするだろう」

 流石に優秀なIS乗りと言うだけで国家代表や代表候補生を任せる訳には行かないだろう。当然ながら身辺調査の一つも行なうだろう。国家代表や最新鋭機を任せた代表候補生が実はテロリストでした等冗談にもならない。だが、相応の力を持った組織ならばすり抜ける事も出来るだろう。

 『代表候補生』と言う立場を与えた以上、国の上の立場の人間も『シャルル・デュノア』と言う架空の人間を作り出す事に関わっていても不思議ではない。

「学園側から国に対して正式な抗議を行なってくれれば、上手く倒産寸前のデュノア社をスケープゴートとして切り捨ててくれるかも知れない」

 色々と理由をつけてラファール・リヴァイブの製造ラインを国の方で管理する事もできる。上位互換の第三世代とは言っても一種類しか存在しない、訓練機としての立場ではラファールは必要とされるだろう。まだ暫くはラファールには利益がある。

「要するに学園側に報告する事でフランスを通してデュノア社……引いては君の父親にダメージを与える事で失脚させる事が出来れば、向こうの思惑で彼女を退学にさせられるって事は防げるかもしれない」

 最後に『まあ、暴走すると言う危険もあるけどな』と付け加えておく。

「まあ、君がどんな選択肢をするにしても、今度のトーナメントが終る頃までは時間もあるだろうから、少しは考えておいたほうがいい」

 -何時自由を奪われる父親の飼い犬でいるか、相手に牙を突きつけて裏切るか、を-

 そう言って四季は話は終わりと、部屋を出て行こうとすると。

「おい」

 一夏が彼を呼び止める。

「なあ……四季だったら、お前だったらどうするんだ?」

「……それは、オレが一兄の立場だったら、シャルロット・デュノアを助けるかって事か?」

「そうじゃない。……ただ、お前が言う助ける理由がある奴だったらどうするかって……」

「助けるさ。誰が相手でも、どんな事をしても、どんな手を使ってでも……相手を完全に、徹底的に叩き潰してな」

 ふと、その状況を想像するとそれだけで自然と殺気が湧き上がる。そんな風に詩乃を苦しめ、傷付ける者を許すわけには行かない……二度とそんなマネが出来ない様に徹底的に叩き潰した上で……ふざけたマネをした事を後悔させた上で……。

「っと。悪い」

 四季の殺気で固まっていた一夏とシャルロットの二人に気が付いて、悪いと謝罪して四季は一夏達の部屋を後にする。……寮と言う事もあって最悪秋八や箒とエンカウントしたくないと思いながら寮の廊下を歩きながら立ち去っていく。




 無事、二人に会う事無く寮を出るとすっかり日が落ちてきた空を眺めながら四季はヴレイブとゼロ炎へと視線を向ける。

(……前回のクラス対抗戦の時に動きが有ったんだ。……ヤツラは次のトーナメントでも動くはずだ)

 そう何度も月からの戦力の投入は起こらないだろうと推測している。恐らくは次は地上にあるはずの地上拠点からの襲撃になると推測している。月からの戦力投入は大規模で起せる代わりに分かり易いのだ。何度も単調で大味な行動をするほど敵も馬鹿では無い。逆に此方の裏をかいてくる可能性も有るが、そもそも月からの攻撃は後手に回った所で対応し易いのだ。

 バイクに跨ってヘルメットを手にとった時、四季の視界の中に何処かへと向かって行く秋八の姿が映った。

(秋八。……あっちは剣道場の方だよな……何の心算だ?)

 何をする心算なのかと疑問には思ったが、秋八と剣道場と言う組み合わせは自動的に篠ノ之箒の存在が浮かび上がるので、それ以上は考えないことにする。




(けして受ける事無く、剣戟を流し。己が身に密着して放つ一撃の閃き)

 一人剣道場で竹刀を振っていた箒の頭の中に浮かぶのは何時かの大会の決勝。竹刀を振りながら思い出すのは決勝の相手、記憶の中の箒の竹刀を受け止めた対戦相手はそれを避けた上で一瞬で竹刀を打ち込まれた。

 一瞬……ほんの一瞬で彼女の目指していた秋八との繋がりは断たれた。……小四の頃の秋八との約束……もしあの時優勝できていたら、自分に勝った彼女と同じ様に己も喜んでいただろうと思うと……余計に憎しみが湧いてくる思いだった。

(全部束姉さんのせいだ。……一度だけ秋八に手紙を出したくて書いた手紙も、『居場所が第三者にしられるのは困る』と言う理由で出すことも出来なかった。秋八との繋がりを断たれたのだ)

 自然と竹刀を握る手に力が入り、強く奥歯を噛み締める。両親とも引き離されて束の実の妹と言う事で執拗に監視される始末。

(剣道を続けていたのも秋八との繋がりを失いたくなかっただけなのに……あいつは!)

 何度も思い出してしまう、傍から見れば無駄の無い動きと年下とは思えない鋭さを持った一閃。結果、箒の敗北は大会において最短記録となってしまった。

(お前が……私と秋八の繋がりを奪った。私には無いものを幾つも持っている奴が……あんな奴が! ああそうだ、あいつが卑怯な手を使ったに決まっている! あの時も四季もそうだ!)

「やあ、箒。あまり根を詰めすぎるのも体に悪いよ」

「ああ、すまない、秋八」

 ……タッグトーナメントで彼女と組む為に仲を深めておこうと画策している秋八だったりする。

「実は打鉄が借りられなかったんだ。私がこうしている間にも、専用機持ちの連中は秋八と訓練している。これでは不公平では無いか」

「そうだね。確かにちょっと不公平だよね。特に四季の奴は専用のアリーナまで仕える始末だし」

「そうだな。本当に卑怯な奴だ」

 思い浮かべるのは他の専用機持ち達の事……。専用機持ち達とISの経験が開いていく一方の己……。

「私にも……専用機が有れば」

「だったら束さんに頼んでみたらどうかな? 束さんならDEMよりも強力な専用機を作ってもらえるはずだし」

「ああ、力を手にするにしても、ISが無ければ始まらない」

 秋八は心の仲で笑みを浮かべながらいつもの一見爽やかな笑顔を浮べる。早めに彼女に専用機を与える事ができればタッグトーナメントでの勝率を上げる事ができる。そう考えての行動だろう。



 だが、そんな彼らを黒い影が眺めていた。……黒い忍び装束に身を包んだ単眼の下忍。此処最近その一群が隠密ガンダムとは別口でIS学園に忍び込み、現在ガンダム忍軍とIS学園を舞台に陣取り合戦を続けている。まあ、此処の能力の高さで現状はガンダム忍軍の方が優位らしい。

 二人の会話を盗み聞きしていた下忍は素早く他の下忍へと連絡をつけるが、連絡をつけた下忍がIS学園から離れた瞬間、即座にその下忍は隠密ガンダムによって排除される。


 ―IS学園に力を求める者有り、利用できる可能性大―


 そう書かれた手紙を敵の本陣へと届けられる事となる。




「えっと……」

 さて、詩乃と放課後のデートを楽しんでいた四季は“それ”の前で呆けてしまっていた。他の者にはまだ以上は認識されていないが、僅かな期間とは言えデジタルワールドを経験した四季にならば、その以上は性格に理解できる。

「デジタルワールド……? いや、違う」

 それは小規模なデジタルワールドと言ったところだろうか? 狭い路地裏だが空間が歪んでいる可能性さえある。

(こう言うのは太一達に任せたい所なんだけどな……)

 パートナーデジモンであるギルモンが戦えない現状で、ISだけでデジモン相手に突っ込んでいくほど四季は愚かでは無い。そもそも炎システムやアメイジング・レヴを介したフォームチェンジが対デジモン用の側面さえ持っているが、どっちにしてもパートナーなしで戦う事は出来ないだろう。

「どうしたの、四季?」

「詩乃。……これを」

「これって!?」

「ああ。路地裏にデジタルワールドと似た空間が出来ているらしい」


『その様だな』


 二人の耳に聞こえてくる第三者……デュナスモンの声が響く。ギルモンの変わりにパートナーの代理を務めてくれているギルモンの究極体であるデュークモンと同じロイヤルナイツの一角。この状況に立ち向かうには心強い仲間だ。

「悪い、折角のデートだけど、これを放置できない」

「うん、分かってるわ」

 この場で対応できるのは四季だけ……それを理解した上で詩乃はそう答える。

「念の為に太一達に連絡を頼む。……それと、この埋め合わせは絶対にするから。どこでもいいよ、詩乃の好きな所で良い」

「それなら考えておくわ。だから、絶対に帰ってきてね」

「ああ」

 そんな会話を交わして四季は路地裏へと飛び込んでいく姿を確認すると、詩乃はスマフォを取り出して連絡先を表示する。




 路地裏だった場所は既に現実世界の物とは違う形に変貌していた。それ以前に其処は明らかに路地裏では無い。
 深々と広がっている森……明らかに街の風景とはかけ離れすぎている場所だ。

「っ!?」

 突然向かってきた気配に反応し、部分展開したヴレイブの右腕でブレードを一閃する。それによって地面に落ちるのは生物でありながら、何処か機械の様にも見える一匹の蜂。しかも、それは何処か見覚えが有る。

「モンスター、キラービット」

 地面に落ちたモンスター。エルガとの戦いで何度も倒したモンスターの一匹だ。針には毒をもち、個体としての能力もそれなりに高い上に複数の群で行動する事がこのモンスターの特徴だ。

『モンスター? こいつ等は我等デジモンとは違うようだが……』

「ああ、エルガとの戦いで倒した事もある、騎士ガンダム達の住むスダ・ドアカワールドのモンスターだ。しかも、こいつは群で行動するタイプ……一匹じゃないな」

『ふむ、あの我等に勝るとも劣らない見事な騎士の居た世界か』

 獣騎士ベルガダラスとの戦いの後、デュナスモンは騎士ガンダムとも会っている。その結果、気に居る所か寧ろ敬意を払ってまで居る。
 何故擬似的とは言えデジタルワールドにスダ・ドアカワールドのモンスターが居るのか……答えは一つだ。

「奴等の仕業か」

『ところで四季よ』

「どうした、デュナスモン」

『確か、さっきお前はこいつ等は群で行動するといっていたな?』

「ああ」

『だったら……出てくるんじゃないのか? 他の固体が』

「っ!?」

 デュナスモンの言葉に思わず背筋が凍る。それと同時に後ろから無数の羽音が響いてきた。

「で、出たぁ!?」

 慌ててヴレイブを展開して飛翔する。現実世界への影響がわからないので下手に飛び道具は使えない。地道にブレードだけで戦うしかないのが現状だ。はっきり言って群で行動するキラービット相手には不利としか言いようが無い。

 キラービットの群に対応しながら新たに襲ってくる体の横に複数の触手を持つモンスター、『ギガンローパー』をビームライフルの一撃で倒すと、奥の方に妙な羽音が聞こえて来たので、其方を覗き込む。

「っ!? こんな所に有るから予想できていたけど……結構きついな」

 過去のエルガとの戦いは直接参加していない太一達にも見せられたので、知識としては知っているだろうが、あまり気持ち良い光景ではない。

 其処でキラービット達に囲まれながら倒れているのは、この路地裏で屯していたであろう数人の不良と思わしき男女達……辛うじて息は有るだろうが、殆ど動いていないのはキラービットによる毒による物だろう。

『どうする?』

「……この擬似デジタル空間を形成しているボスを叩く方を優先する。流石に助けた所で運び出すのは無理だ」

 彼らを抱えながらモンスターとの戦闘を介しながら出入り口に向かうのは無理だと判断する。流石に倒れているのが一人や二人では無い以上、自分とデュナスモンだけでの救助は無理だろう。後から救援に来る者達か一刻も早い此処のボスの撃破に集注した方が助けられる可能性が高い。
 救援に来るのが誰になるのかは分からないが、入口付近のキラービット達には注意する様に、との連絡が出来ないのは拙い。

「彼らは可哀想だけど先を急ごう」

『ああ』

 それでも、と思って威力を絞ったビームライフルで不良達の周囲に集まっていたキラービットを一匹打ち抜き、相手の注意を己へと引き付ける。

「急ごう!」

『ああ!』

 デュナスモンからの強い返事を聞くマシガンモードのビームライフルで居ってくるキラービットの群を纏めて撃ち抜く。

(モンスターの動きは組織的じゃない。群のボスはそれほど上位の固体じゃないのか?)

 エルガによって支配されていた時のモンスター達はどの固体も組織的に行動していた。本能だけで動いている今のモンスター達は数こそ厄介だが、纏めて倒し易いとも言える。

「どっちにしても、折角の詩乃とのデートを邪魔してくれたんだ、ただじゃ済ませない!」

『いや、それはどうかと思うんだが……』

 デュナスモンのツッコミをスルーしつつ、飛んでいるとアラーム音が鳴り響く。

「っ!? レーザー!? しかも、反応はデジモン?」

 とっさに回避すると後方にいたキラービット達が何匹かそれに撃ち落される。しかも、正面に有るのはデジモンの反応。

「っ!?」

 森を抜けて広い所に飛び出すと思わず息を呑む。……其処に居たのは一体の完全体デジモン『キャノンビーモン』。上部に巨大な武器コンテナを持って下部に大口径レーザー砲を装備した巨大なサイボーグ型完全体デジモン。だが、その威容は異常だった……。

『なんだ……あれは!?』

「キラービット」

 上部コンテナが武器ではなくキラービット達の巣となったキャノンビーモンの姿にはキャノンビーモン自身の意識が感じられない。……寧ろ、群としてキラービット達の意思によって操られている様に見える。

『四季よ……一つ聞く』

「ああ」

 拒否は許さないと言う意思の感じられる怒気を孕んだデュナスモンの声。ヴレイブのモニターから写るキャノンビーモンを睨む四季の声からも怒気を感じられる。

『キャノンビーモンはどうなった?』

「キラービット達に寄生されて意思を操られている。恐らくだけど、デジコアにも強い侵食を受けているはずだ」

『四季よ……オレを出せ、これ以上あの姿を曝させているのは忍びない……』

「ああ」

 デュナスモンの声に従い己のデジヴァイスを取り出し、

「リアライズ、デュナスモン」

「おぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

 デジヴァイスから飛び出したデュナスモンが一直線にキャノンビーモンへと向かって行く。それに反応するようにキャノンビーモンを巣にしていたキラービット達が一斉にデュナスモンへと向かうが、キラービットがそれなりに強いとは言え、高位の究極体のパワーの前に問答無用に粉砕される。

(妙だ)

 キャノンビーモンへと肉薄するデュナスモンを見据えながら四季はそんな事を疑問に思う。キラービット達への怒りが冷めた訳では無いが、敵の動きに妙な物を感じてしまう。

「っ!? デュナスモン、止まれ!」

 ヴレイブのセンサーが一瞬だが危険を訴える。敵の動きは一直線に向かうデュナスモンの真横にぶつかる位置だ。
 四季はデュナスモンへと警告すると敵の反応のあった位置へとビームライフルを打つ。

「なにっ!?」

 ビームが弾かれるとそれに気がついたデュナスモンが立ち止るが、デュナスモンの鎧の一部に切り傷が出来る。

「これは」

「デュナスモン、落ち着いた方が良い、敵の動きも妙だ」

「ああ、どうやら……お前の忠告がなければやられていたのはオレの方だったようだ」

 デュナスモンに合流した四季の言葉にデュナスモンはそう答えると、手の中に有る“それ”を四季へと見せる。

「こいつは『ブレイドクワガーモン』だ。成熟期ながら群に襲われれば究極体すら切り殺されると言われているデジモンだ」

「……究極体すらって!?」

「ああ。こいつは全身がクロンデジゾイドになっているのだからな」

「なるほど……オレの場合、下手したら絶対防御も意味無く死にそうだな」

 デュナスモンの言葉の意味を正しく理解してしまう。僅かなコーティングだけで強靭な防御力を与えられるクロンデジゾイド。
 人工的にDEMでも精製する為の研究が行われているデジタルワールド特有の金属だが、まさか成熟期で全身クロンデジゾイドと言うトンでもない固体が存在しているとは思わなかった。

「それにしても。なるほど……キラービット達はブレイドクワガーモンで確実に獲物を仕留める為の囮か」

 キラービット達を倒せる敵は不意打ちのブレイドクワガーモンで仕留めると言う罠だったのだろう。罠自体は単純だが一撃必殺の破壊力を有していると言うのは厄介だ。

 罠に失敗した事を悟ったのかキラービット達の動きが変化する。周囲を取り囲む様に飛んでいた固体達が四季とデュナスモンを取り囲み、一斉に円を書くように飛翔する。

「デュナスモン! キラービット達はオレが相手をする、キャノンビーモンを頼む!」

「おう!」

 円を書く様に飛翔するキラービット達が一匹ずつ円から飛び出して四季達に襲い掛かるが。

「ガンダム剣技……波動剣!」

 両手にブレードを持った四季の波動剣によって向かって来るキラービット達を撃ち落す。そして、デュナスモンはキャノンビーモンの居る方向へと向かって再び飛翔する。それを脅威に感じたキラービット達が巣としているキャノンビーモンのコンテナより飛び出し、巨大な蜂の球の中に閉じ込められる形となる。

「その程度……オレの脅威では無い! ブレス・オブ・ワイバーン!!!」

 デュナスモンを阻止しようとしたキラービット達だが、巨大な光の翼竜となったデュナスモンによって吹飛ばされていく。そして、

「キャノンビーモン、今助けてやる」

 デュナスモンはキャノンビーモンへと肉薄、右腕をキャノンビーモンへと突きつけ、静かにそう継げる。

「ドラゴンズ・ロア!」

 完全体と究極体……圧倒的な格上のデジモンであるデュナスモンより放たれた一閃がキャノンビーモンを貫き、キャノンビーモンをデータの塵へと変えて行った。

「あの状況で広範囲に影響のある技を使うなよ……って、どうしたんだ?」

 キラービット達を纏めて吹飛ばした大技に巻き込まれたことに対して抗議の声を上げるが、それよりもデュナスモンの様子が可笑しい事に気がつく。

「これを見ろ……」

 そう言ってデュナスモンの差し出したのは一つのデジタマ……デジモンは死んでも一度デジタマへと戻り再び進化をやりなおす。それは善悪関係なく全てのデジモンに与えられた一つの権利だ。だが……

「おい……何の冗談だよ、それは?」

 砕けたデジタマがデュナスモンの手の中でゆっくりと消えていく。……完全なる消滅……デジモンに与えられる真の意味での『死』が、其処にはあった。

「なぜだ……? ……なぜこんな事になった……」

「多分、意識を操られていた時にキャノンビーモンのデジコアにも影響が有ったせい……じゃないのか?」

 考えられる理由はその程度しかないが、検証する気も無ければ手段もない。

「四季、お前達の戦いは……オレの闘いにもなったぞ。何者かは知らんがこいつ等の所業を許すわけにはいかん……」

 怒気の篭った言葉を小さく呟くデュナスモン……。そんな時、四季はビームライフルを取り出し明後日の方向へと銃口を向けてトリガーを引く。

「どうした、何かいたのか?」

「多分……だけどな」

 単なる直感であって、ヴレイブのセンサーには反応はなかったが……どうも敵味方関係なく超常の力を持っている連中は悉くそれを簡単に掻い潜る傾向に有る。
 特に隠密ガンダムの言う所の忍術でセンサーを掻い潜る方法については一度詳しく聞いてみたいと思ったこともある。

 同時にその気配が消えた瞬間、擬似デジタルワールドが崩れ始めていく。流石に人目の無い擬似デジタルワールドの中では兎も角、現実世界でISを許可無く展開していたら、色々と問題が有る。そう考えてヴレイブを解除すると現実世界へと戻った。








『デジモンの戦力データ蒐集失敗。しかし、利用価値大。研究進行推奨』

 彼等の姿を見ていた一体の異形の影……魔法使いを思わせる影がそう呟きながら姿を消して言った。最後に、

『モンスターを介してのデジモンの操作実験……“成功”。二次実験の開始を推奨』

 そういい残し。 
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