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提督はBarにいる。

作者:ごません
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ダーツ上達に何よりも必要な物。

 ビリヤードで圧倒的敗北を鳥海に喫した長門。そんな失意の長門に、俺はダーツも薦めてみる事にした。

「なら長門、ダーツはどうだ?あっちならまだ勝てる余地が有るんじゃないか?」

「提督よ、ダーツにも不動のチャンピオンが居るじゃないか。彼女を倒すのは限り無く難しい……!!」

 その時、ダーツボードの方からワッと歓声が上がる。何人かの艦娘がカウントアップで対戦していたらしい。

「Oh,amazing!!2回連続でインブルだヨ、時雨~‼」

 バス・ペールエールを瓶で煽りながら金剛が驚いたような声を上げている。

「ひえぇ……なんでそんなに中心ばかり当たるんですかぁ。」

 カシスソーダをチビチビと飲みながら、比叡がプルプルと小刻みにふるえている。

「は、榛名は真似できそうに無いです……」

 アハハ…、と苦笑いしながらジンビームを舐める榛名。

「わ、私の計算以上の命中率だなんて……!!」

 そう驚きつつカイピリーニャを砂糖少なめでグビグビ飲み干していく霧島。俺はお前の飲みっぷりが計算以上だ、蟒蛇め。既に7杯目だ。

「フフッ、そんなに誉めないでくれよ、照れるじゃないか。」

 少し照れ臭そうにしながら、ジョニー・ウォーカーの黒をロックでチビリと飲んでいるのは時雨。我が鎮守府最強のダーツプレイヤーである。



 そういえば30分位前、金剛姉妹と時雨がやって来てそれぞれの酒とサラミとチーズの盛り合わせ、そしてダーツボードの使用許可を取りに来たんだった。勝負をしている訳ではないが、間もなく大会が近いから練習しにきたのだろう。その中でチャンピオンの時雨から少しでもコツを盗もう、といった所か。

「提督、ジョニ黒おかわり。」

「流石幸運艦だな、時雨。二投連続インブルなんて凄いじゃないか。」

 ダーツのルールを知らない読者諸兄に説明するが、ダーツボードの中心にはブルと呼ばれる二重の円があり、各種様々な遊び方があるダーツの中でも高得点に位置している場所だ。中でもインブル(インナーブル)は二重の円の内側で、二投連続でインブルを捉えるのはかなり難しい。

「提督も解ってないなぁ。ダーツに必要なのは運じゃない……乱れない精神力…スピリッツが重要なのさ。」



「一切の雑念を捨てて、ただインブルに投げ込む事だけに集中する。後は正しく真っ直ぐに投げられる姿勢が身に付いていれば、それほど難しい事じゃないさ。」

 ダーツボードの方を見やると、目をギラつかせた金剛四姉妹が順番にダーツを投げている。……が、力みすぎなのか真ん中には飛んでいかない。

「金剛さん達は……申し訳ないけど、雑念が多すぎるよね、長門さんもだけど。」

(テートクと二人っきりテートクと二人っきりテートクと二人っきり……)

(お姉様とデートお姉様とデートお姉様とデートお姉様とデート……)

(提督とデート提督とデート提督とデート提督とデート提督とデート……)

(お酒飲み放題お酒飲み放題お酒飲み放題お酒飲み放題お酒飲み放題……)

 うわぁ、雑念が見える。長門も時雨の横で撃沈している。時雨と俺は苦笑いしながら、ジョニ黒を酌み交わしながら遊戯台の様子を眺めていた。こんな騒がしい夜も、たまには悪くない。 
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