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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第40話 開く扉(前編)

Side マリュー・ラミアス

ルリ
「ドミニオンから信号弾です。一時撤退するようです。」

マリュー
「ハァ…」

ナタル
「コウキ殿のシナリオ通りですね。」

ルリ
「期待した、主戦力があれでは仕方ないです。
これでザフト軍も混乱するでしょう。
少なくとも、フェイズシフトダウンの原因究明にログ解析が終わるまで戦闘はありません。
ムルタ・アズラエルはオーブ戦で恐怖を感じています。
その証拠が第7機動艦隊で攻めて来た理由です。
また、新型のパイロットがナチュラルです。
ロドニアのラボをミスリルに襲撃されて、強化人間(エクステンデット)の補充が出来ません。
警戒はミスリルに任せて、戦闘配備解除して構いません。」

マリュー
「戦闘配備解除!またこの情報を各艦に通達して。」

ナタル
「は!分かりました。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

光輝
「キラ君は私に付いて来てくれ、アスラン君は護衛の為に残ってくれ。」

キラ
「はい。」

アスラン
「キラ!?」

キラ
「大丈夫だよ。無茶はしないから。」

アスラン
「ああ。」

Sideout



Side ラウ・ル・クルーゼ

クルーゼ
「来るぞ!」

イザーク、ディアッカ、ニコル
「「は!」」

イザーク
「ストライク!…デュエル、バスター、ブリッツ?」

ディアッカ、ニコル
「「くっ…」」

クルーゼ
「ほぉ、今度は貴様がそれのパイロットか。ムウ・ラ・フラガ!」

フラガ
「新型か?」

クルーゼ
「ここでこうして貴様と戦えるとはな!」

フラガ
「くぅ…ラウ・ル・クルーゼ!」

クルーゼ
「私も嬉しいよ、ムウ。」

フラガ
「くぅ!くっそー!」

クルーゼ
「ふん、なかなかやるじゃないか!」

フラガ
「貴様!今日こそ!」

フラガ
「くぅ!」

クルーゼ
「貴様に討たれるならそれもまたとも思ったがね、ここで!」

フラガ
「う!」

クルーゼ
「だがどうやら、その器ではないようだ。」
(所詮子は親には勝てぬということかね。)

フラガ
「なに?
うわっ!」

クルーゼ
「やはり運命は私の味方だ。なに?」

キラ
「ムウさん!」

クルーゼ
「フリーダム!
チィ!」

キラはクルーゼのモビルスーツの両足を切り落とした。

フラガ
「大丈夫だ。」

キラ
「ムウさん!」

クルーゼはコックピットを開け、モビルスーツから外に出た。

クルーゼ
「今日こそ付けるかね、決着を?」

フラガ
「くっ…あの野郎何を…」

クルーゼ
「ならば来たまえ!引導を渡してやるよ、この私がな!」

フラガ
「くっそー!」

キラ
「ムウさん!」

Sideout



クルーゼとフラガは銃撃戦をしながら、建物に入って行く。



Side キラ・ヤマト

クルーゼ
「ここがなんだか知っているかね、ムウ?」

フラガ
「知るか、この野郎!」

クルーゼ
「罪だな、君が知らないというのは。」

フラガ
「…」

キラ
「ムウさん!」

フラガ
「キラ!」

クルーゼ
「キラ…生きていたか?君まで来てくれるとは嬉しい限りだ、キラ・ヤマト君!」

フラガ
「チィ…」

クルーゼ
「そうか…君がフリーダムのパイロットか!」

キラ
「ムウさん!」

フラガ
「キラ!」

キラ
「ハァハァハァ…」

フラガ
「何で来たんだ!」

キラ
「あのまま外で待つなんて出来ませんよ。マリューさんに、なんて報告すればいいんです?」

フラガ
「くっ…生意気…」

キラ
「…」

フラガ
「それよりお前、撃つ気あるならセーフティー外しとけ。」

キラ
「あぁ…。」

クルーゼ
「さぁ遠慮せず来たまえ、始まりの場所へ!キラ君、君にとってもここは生まれ故郷だろ?」

キラ
「えぇ!?」

フラガ
「引っかかるんじゃない!奴の言うことなんか、一々気にすんな!」

フラガとキラは建物の最深部へと誘導される。
奥にはこの研究所の実験設備があった。

フラガ
「何だここは?」

キラ
「ぅ…ぅ…うわ!」

フラガ
「くっ!」

クルーゼ
「懐かしいかね、キラ君?」

キラ
「え?」

クルーゼ
「君はここを知っているはずだ。」

フラガ
「ぇぇぃ!」

キラ
「知っている?僕が?…」

クルーゼの放った弾丸がフラガを捉えようとした時、
光輝が前に出て銃弾を掴み取る。

フラガ
「あっ!」

キラ
「ムウさん!
大丈夫ですか?」

フラガ
「…」

クルーゼ
「コウキ・イチジョウ!貴様まで来ていたとはな。」

キラ
「ぇぇぃ!」

クルーゼ
「殺しはしないさ。せっかくここまでお出で願ったのだから。
全てを知ってもらうまではね。」

クルーゼはあるファイルをキラ達の前にぶちまけた。

キラ
「ん?」

フラガ
「ぅ…、親父!?」

キラ
「え!?」

クルーゼ
「君もまた知りたいだろう?
人の飽くなき欲望の果て、進歩の名の下に狂気の夢を追った、愚か者達の話を?
君もまた、その息子なのだからな。」

キラ
「ん?」

クルーゼ
「ここは禁断の聖域。神を気取った愚か者達の夢の跡。君は知っているのかな?
今の御両親が、君の本当の親でないということを。」

キラ
「う!?」

フラガ
「ぅ…貴様、何を!…」

クルーゼ
「だろうな。知っていればそんな風に育つはずもない。
何の影も持たぬ、そんな普通の子供に。
アスランから名を聞いた時は、想いもしなかったのだがな。君が彼だとは…。」

キラ
「ぅぅ…」

クルーゼ
「てっきり死んだものだと思っていたよ。あの双子、特に君はね。
その生みの親であるヒビキ博士と共に、当時のブルーコスモスの最大の標的だったのだからな。」

キラ
「何を…」

クルーゼ
「だが君は生き延び成長し、戦火に身を投じてからも尚存在し続けている。何故かな?」

キラ
「ぅぅ…」

クルーゼ
「それでは私の様な者でもつい信じたくなってしまうじゃないか。彼らの見た狂気の夢をね!」

キラ
「僕が…僕が何だって言うんですか?」

フラガ
「ぅぅ…」

キラ
「貴方は何を言ってるんだ?」

クルーゼ
「君は人類の夢、最高のコーディネイター。」

キラ
「ぅ…」

クルーゼ
「そんな願いの下に開発された、ヒビキ博士の人工子宮、それによって生み出された唯一の成功体。
彼の息子。数多の兄弟の犠牲の果てにね。」

キラ
「ぁぁ…」

フラガ
「キラ!」

光輝
「キラ君にはヒビキ博士の事は話してある。それに人間は生命に無頓着過ぎる。
卵子と精子の段階では、自我が生まれていないから、生命に対する意識が薄い。
誕生した子供には抵抗感を感じるのにね。」

キラ
「ぅ…」

フラガ
「コウキ、本当の事なのか?」

光輝
「ある意味本当だが、クルーゼはミスリードしている。
唯一の成功体、これはブルーコスモスが襲撃した結果だし、
数多の兄弟の犠牲といっても生まれる前だ。
キラ君に重責を押し付けようとしている。
確かに動物実験を行えばいい話だが、当時の情勢では仕方のない出来事だ。」

クルーゼ
「仕方のない事だと!」

光輝
「ああ。」

クルーゼ
「僕は、僕の秘密を今明かそう。
僕は人の自然そのままに、ナチュラルに生まれた者ではない。」

フラガ
「くっそー、あの野郎…おいキラ!」

キラ
「ぁぁ…」

クルーゼ
「受精卵の段階で人為的な遺伝子操作を受けて生まれた者。」

フラガ
「チィ…」

クルーゼ
「人類最初のコーディネイター、ジョージ・グレン。
ふっふっふ…。奴のもたらした混乱は、その後どこまでその闇を広げたと思う?
あれから人は、一体何を始めてしまったか知っているのかね?」

クルーゼはモニターのスイッチを入れた。

妻A
『目はブルーがいいな、髪はブロンドで…』

夫A
『子供には才能を受け継がせたいんだ…』

医者A
『優れた能力は子供への未来の贈り物ですよ…』

夫B
『流産しただと!?何をやってたんだ?せっかく高い金をかけて遺伝子操作したものを!』

医者B
『妊娠中の栄養摂取は特に気を付けて下さい。日々の過ごし方もこの指示通りに…』

医者C
『完全な保証など出来ませんよ。母胎は生身なんでだし、それは当然胎児の生育状況にも影響しますよ…』

妻B
『目の色が違うわ!』

クルーゼ
「高い金を出して買った夢だ。誰だって叶えたい。誰だって壊したくはなかろう。」

ユーレン・ヒビキ博士
『最大の不確定要素は、妊娠中の母胎なんだ…。それさえ解消できれば…』

クルーゼ
「だから挑むのか!それが夢と望まれて叶えるために?」

研究助手
『3号機、エマージェンシーです。』

ヒビキ博士
『くっそー…濾過(ろか)装置のパワーを上げろ!』

研究助手
『心拍数上昇、血圧200を超えます。』

ヴィア・ヒビキ
『もう止めて!あれは物ではない!命なのよ!?』

ヒビキ博士
『解っている。だからこそ完成させねばならないんだ!』

ヴィア・ヒビキ
『命は産まれ出ものよ!創り出すものではないわ!』

クルーゼ
「人は何を手に入れたのだ!?その手に、その夢の果てに!?」

ヴィア・ヒビキ
『嘘つき!返して!あの子を返して、もう一人の!』

ヒビキ博士
『私の子供だ!最高の技術で、最高のコーディネイターとするんだ!』

ヴィア・ヒビキ
『それは誰の為?貴方の為?』

ブルーコスモス構成員A
『青き清浄なる世界の為に!』

ブルーコスモス構成員B
『青き清浄なる世界の為に!』

ブルーコスモス構成員C
『青き清浄なる世界の為に!』

ヴィア・ヒビキ
『最高のコーディネイター?それがこの子の幸せなの!?』

ヒビキ博士
『より良きものをと、人は常に進んできたんだ!それは、そこにこそ幸せがあるからだ!』

ヴィア・ヒビキ
『う…ぅぅ…うっわぁ…』

クルーゼ
「知りたがり、欲しがる!」

フラガ
「キラ!おい…チィ!」

クルーゼ
「やがてそれが何の為だったかも忘れ、命を大事と言いながら(もてあそ)び殺し合う!」

サザーランド
『奴等が居るから世界が混乱するのだよ!』

パトリック・ザラ
『我等はもはや、ナチュラルとは違う、新たな一つの種なのです。』

フラガ
「ほざくな!」

クルーゼ
「何を知ったとて!何を手にしたとて変わらない!最高だな人は。」

パトリック・ザラ
『この作戦により、戦争が早期終結に向かわんことを切に願う。真の自由と、正義が示されんことを。』

クルーゼ
「そして妬み、憎み、殺し合うのさ!」

サザーランド
『この犠牲により、戦争が早期終結に向かわんことを切に願う。青き清浄なる世界の為に。』

クルーゼ
「ならば存分に殺し合うがいい!それが望みなら!」

フラガ
「何を!貴様如きが偉そうに!」

クルーゼ
「私にはあるのだよ!この宇宙でただ一人!全ての人類を裁く権利がな!」

キラ
「うっ!」

フラガ
「ふざけるな!この野郎!」

ヒビキ博士
『クローンは違法です!』

アル・ダ・フラガ
『法など変わる。所詮は人の定めたものだ。』

ヒビキ博士
『しかし…』

アル・ダ・フラガ
『苦労の末手にした技術、使わんでどうする。欲しいのだろ、研究資金が?』

クルーゼ
「覚えてないかな、ムウ?私と君は遠い過去、まだ戦場で出会う前、一度だけ会ったことがある。」

フラガ
「なんだと!?」

キラ
「ぁぁ…」

アル・ダ・フラガ
『ほんとにこれが私かね?まあいい、兎も角あとはこれに継がせる。
あんな女の子供になど…しっかり管理して教育しろ。あのバカの二の舞にはするなよ。』

フラガ家使用人
『旦那様と奥様がまだ中に!』

幼い頃ムウ・ラ・フラガ
『父さん、母さん…』

クルーゼ
「ふふふ…。私は、己の死すら、金で買えると思い上がった愚か者、
貴様の父、アル・ダ・フラガの出来損ないのクローンなのだからな。」

キラ
「ぁぁ…」

フラガ
「なっ?」

光輝
「出来損ないでなく、正常だ。」

クルーゼ
「何だと。」

光輝
「元になった、アル・ダ・フラガの体細胞のテロメアが短いのだからな。
もし人工子宮を使わずに、母体をつかっていれば、テロメアはリセットされた。
またクローンでなく、コーディネイターとしてアル・ダ・フラガの遺伝子配列を使用していれば、テロメアが短くなる事はなかった。」

フラガ
「そうなのか?」

光輝
「人間を形作る要素として、遺伝子などの先天性のもの以外に、経験や学習といった、
後天性なものが重要であり結局、同じ人間を作る事は不可能だ。
アル・ダ・フラガはそこを知らなかった。
あくまでクローンは遺伝子が同じ一卵性双生児と同じなのだ。
・人格なき学識
・道徳なき商業
・人間性なき科学
が生んだのがラウ・ル・クルーゼ、君なのだ。」

クルーゼ
「何を?」

光輝が指弾でラウ・ル・クルーゼの覆面を弾く。
覆面が顔から剥がれる。

クルーゼ
「くっ…」

フラガ
「ぅ!」

キラ
「ぁぁ…」

光輝
「やはりな、クルーゼ。君のテロメアは修復されつつある。」

クルーゼ
「…」

光輝
「デュランダルに薬を貰っただろ。
その薬にはテロメアを修復する成分が入っている。
君は知らないようだが、彼の実質的な息子の為に私の論文を元に作ったのだろう。
君は最近、発作や苦しみが少なくなっているだろ。」

クルーゼ
「…」

光輝
「それは薬が効いているだけでなく、テロメアは修復されつつある結果だ。
薬を飲み続ければ、やがてテロメアは修復される。
が、完全ではない。その薬は不完全だが老化防止の薬でもある。
ある程度、修復されたら服飲は止めた方がいい。
ナチュラルの君では、病気により長く苦しむ事になる。」

クルーゼ
「そんな事にはならない。
間もなく最後の扉が開く!私が開く、そしてこの世界は終わる!」

光輝
「それはNジャマー・キャンセラーの事を言っているのだろ。
君には間もなくザフト軍で逮捕命令が出る。
私がアラスカで君に会った事を評議会に報告した。」

クルーゼ
「チィッ、この果てしなき欲望の世界は。」

フラガ
「ぅ…」

クルーゼ
「そこであがく思い上がった者達!その望みのままにな!」

キラ
「そんなこと!」

フラガ
「キラ!」

キラ
「させるもんか!」

クルーゼ
「ふん、貴様等だけで何が出来る!もう誰にも止められはしないさ。この宇宙を覆う憎しみの渦はな!」

フラガ
「待て!」

光輝がフラガとキラを制止した。

Sideout

 
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