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コマンドサンボの女

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第五章

「冗談抜きで」
「それだけやばいってことか」
「見ての通りね」
「そうか」
「そう、他にも技は一杯あるけれど」
 ふとだ、エリカは道場の時計を見た。そのうえで幸太郎に話した。
「もう時間ね」
「ああ、五限目のな」
 幸太郎もその時計を見て言った、道場の壁にかけられているそれを。
「それじゃあな」
「帰りましょう」
「今日は教えてくれて有り難うな」
「いえいえ、お礼もいいから」
「いいのか」
「これ位はね」
「気前がいいな、しかしな」 
 幸太郎は立ち上がって練習台を収めるエリカを手伝って一緒に運びつつ言った。
「確かにやばい技が多いな」
「そうでしょ」
「急所攻撃とかな」
「そういうのばかりだから」
「しない方がいいな」
「そうよ、絶対にね」 
 こう言うのだった、共に倉庫に入り練習台を収める幸太郎に。
「私も使ってないから」
「柔道の時もか」
「柔道の時は柔道の技を使うものでしょ」
「それはな」
「だからよ」
「御前も使わないか」
「そうなの」
 実際にというのだ。
「教えてもらってるけれど」
「使う技じゃないか」
「そう、お父さんも多分ね」 
 考える顔になってだ、エリカは話した。
「今は使ってないわよ」
「軍隊にいた時とは違って」
「そんな技使う国じゃないから」
 日本はというのだ。
「少なくとも普通に暮らしていればね」
「だからか」
「そうしてると思うわ」
「あくまで元か」
「軍人さんだったのはね」
「そうか、軍人さんじゃないと」
「しかもそうした特殊な状況じゃないとよ」 
 相手と素手で戦う、そうした状況でなければというのだ。
「アーミーナイフ使う場合もあったでしょうけれど」
「殺人術なんてものはか」
「普段は使わないわよ、だから私も使ってないし」 
 柔道家に徹しているというのだ。
「あんたも間違っても使ったら駄目よ」
「よくわかかったよ」
 幸太郎はエリカに真顔で答えた、彼女が指し示した場所に練習台を一緒に置きつつ。
「さもないと大変なことになるからな」
「世の中そうしたものもあるのよ」
「コマンドサンボ然りか」
「ロシアの大統領なんてね」
 世界的に有名な人物だ、元秘密警察の幹部でありしかも諜報の最前線にいた。そこで任務上何をしていたのか怖い噂の尽きない人物だ。 
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