八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十二話 ホテルに帰ってその十
「朝は二日酔いになって」
「お風呂ですね」
「そこで酒を抜いてな」
「また一日ですね」
「頑張るんだ」
こう豪快に言うのだった。
「気持ちよくな」
「何かそれって」
「おいらしいか」
「はい」
僕は笑って答えた。
「そう思います」
「そうか、しかしな」
「しかし?」
「いや、おいらしいこともいいが」
それでもというのだった。
「おいらしくなくてもな」
「それでもですか」
「またいいだろう」
こう言うのだった。
「おいはそうも思う」
「らしくてもらしくなくても」
「どちらでもな」
「そうですか」
「おいらしくなくてもそれが新しいものを開くのならな」
昔の鹿児島弁の独特のニュアンスで話していく。
「そしてそれがいいことなら」
「らしくなくてもですか」
「いいことだろう」
「そうなりますか」
「らしくてもいいが」
「らしくなくても」
「要はそれが人の道に適っているかどうか」
生真面目なこの人らしい言葉だった。
「それが大事だ」
「そういうことですか」
「そう思う、そして」
「そして?」
「今は飲むことだ」
酒、それをというのだ。
「どんどんな」
「そうですか、じゃあ」
「明日はまた風呂だ」
朝風呂、それだとだ。主将は笑って言う。
「合宿最後の一泊になるが」
「ですね、長い合宿ですけれど」
それもとだ、僕は主将に応えて言った。
「もう終わりですね」
「そうだな、おいの最後の合宿だ」
三年生でも希望者はこの合宿に参加出来るのだ、八条大学の推薦が決まってるなら参加するという不文律もある。
「高校の」
「じゃあ来年からは」
「大学生として参加する」
「ですよね」
「大学でも柔道をやる」
「学部は」
「文学部で国文学をやる」
既にそちらで入学が決まっているというのだ、一学期の推薦入試で。
「近現代のな」
「国文学ですか」
「文学はいい」
実はこの主将は文学少年でもある、文学の作品を読んでも感涙することで知られている。本当に感動屋なのだ。
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