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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第37話 ゆれる世界(後編)

Size シーゲル・クライン

シーゲル・クライン
「オーブのウズミ・ナラ・アスハ氏からの親書です。」

パトリック・ザラ
「不可侵条約と貿易協定を正式に結びたいとの親書か。
同時にアフリカ連邦の樹立の容認への依頼が含まれている。」

クライン
「条約締結が成った際は、赤道連合やスカンジナビア王国もこれに続く旨の、
嘆願書も来ております。」

ザラ
「今頃か?」

ザフト兵
「会議中、失礼します。」

ザラ
「何事か。」

ザフト兵
「ミスリルのコウキ・イチジョウから評議会議長宛ての荷物です。
中身はホログラフィ装置とメッセージビデオです。
メッセージビデオは封印がなされています。内容は確認していません。
機器の安全チェックは済んでおります。」

ザラ
「小賢しい、後で確認する。」

ザフト兵
「宜しいのですか、中身を評議会で再生しなければ、メディアに情報を流す旨の文書が、入っております。」

クライン
「ビデオを再生したらどうかね。」

ユーリ・アマルフィ(ニコルの父)
「議長、先刻、地球軍の最新モビルスーツ3機も届けられています。」

ザラ
「チィ、再生させろ。」

ザフト兵
「は!」

ザフト兵は議場の中心にホログラフィ装置を設置し、ビデオを挿入にする。
リモコンをユーリに渡し退出した。
ユーリはリモコンの再生ボタンを押す。
そこには光輝の姿が映し出された。

光輝
「再生して頂きありがとうございます。
改めましてコウキ・イチジョウです。
まず初めに、オーブのマスドライバー施設はウズミ・ナラ・アスハ殿によって、
爆破された事を報告します。
残るマスドライバーはカーペンタリア基地だけになります。
これから流される映像はオーブと大西洋連邦の戦闘映像になりますが、
既に放送でご存知でしょうから、スキップさせて結構です。」

ユーリはザラに確認し、映像をスキップさせた。

光輝
「以上の経緯です。
この際捕獲した、最新モビルスーツ3機を届けています。
尚、同戦闘で捕獲したストライクダガーの詳細は地球連合国以外に設計図など、
配布予定です。
プラントへは実機を1機、別便で送る予定です。
機能的にはストライクの量産品です。
これからが本題です。
フリーダムにはNジャマー・キャンセラーが搭載され、核エンジンが使われていました。
Nジャマー・キャンセラーは正式に評議会で審議されておりません。
問題はNジャマー・キャンセラーが2機しか作られていません。
資源量からして5機以上作られていなければ、おかしいのですが、その形跡はありません。
また資源量からして、多くの資源が消えています。
この消えた資源はどこにいったのでしょう。
実は消えたのでなく、見えないのです。
これは、ある角度から取った太陽の写真です。
一部ぼやけていますが、巨大建造物の影です。
太陽を背景にすると乱反射で視認しずらいですが、ミラージュコロイドで隠されています。
次に別の角度から取った写真です。
ミラージュコロイドは光を屈折させ何も見えませんが、背景の星の光が歪められています。
これを実際の天体と比較してとくい違う星々を削除すると、立体的な建造物が浮き出てきます。これは極秘裏開発されたジェネシスです。
ヤキン・ドゥーエと比較するとその巨大さが解ります。
ジェネシスは核エネルギーを使用した巨大なガンマ線レーザー砲です。
地球にジェネシスが着弾した場合、その影響は単に射線上や周辺のみならず、気象変動等の影響で全生命体の80%以上が死滅する計算結果が出ています。
これがジェネシス設計図です。Nジャマー・キャンセラーの真の目的はこれですね。
ザラ議長、これをどう使うつもりですか?」

議場が騒がしくなった。
ザラは否定している。

光輝
「一人の青年を紹介します。議場の外にいますので、どなたか案内して下さい。」

ユーリが青年を招きいれた。

ザラ
「アスラン。ぁっ…」

アスランは亡き母親の遺影と共に入室した。

アスラン
「失礼します。」

光輝
「ザラ議長、亡き夫人の前で弁明してください。」

ザラは押し黙っている。

光輝
「これが私からの設問です。
もし今、貴方が報道されている建て前を言っているのなら、次にスキップして下さい。
貴方が言い訳をされているのなら、二つスキップして下さい。
貴方が押し黙っているのなら、三つスキップして下さい。
別にスキップしなくても心理学者の分析ですのでそのままお聞きされても結構です。

貴方が建て前を言っているのなら、この映像は再生されていません。
ホログラフィ装置は銃で打ち抜かれているでしょう。
またクライン派の方々は拘束されるでしょう。
この選択を選んでいたら、貴方は憎しみの為に我を忘れています。
戦果は広がるでしょう。最悪の選択です。

貴方が言い訳を言っているのなら、まだ少し理性が残っていますが、
間違いなく失脚するでしょう。
ただ貴方なら、この選択を選ばないでしょう。
この選択は理性が少し残っているだけで、心は壊れています。

最後の選択ですが、一番これを選ぶと思っています。確率的に80%以上です。
この選択を選んでいると希望します。
貴方は血のバレンタインで夫人を亡くされ深い悲しみの中にいます。
クライン前議長の意見も聞かず、ジェネシスを起動するにもためらいがありません。
しかし、夫人の前で嘘は付けないのです。
評議員の皆様、ザラ議長を攻めないで下さい。
それ程までに失った物が大きいのです。
クライン派の意見を聞くことが出来ない程に…。
そしてプラントには多くのそう言った家族がいます。
ザラ議長は苦労してプラントを作り上げました。
クライン前議長ならその辺りの事をご存知でしょう。
そしてそれを支えたのがレノア夫人でした。
その悲しみが大き過ぎて、今は我を忘れています。
当然、地球軍の非道もあったのが拍車を掛けています。
時間的猶予が少しあります。
この続きは今すぐでなくて、結構ですので、レノア夫人の墓前で彼女と話して下さい。
彼女ならどんな未来を、どういう世界を望んでいたか話をして下さい。
評議会を一時中断して、皆さんもどうかどんな世界であれば笑って暮らせるのか想像して下さい。
ラクス・クライン嬢は歌でそれを表現しています。
今なら皆さんの心に届く筈です。」

評議会は一時中断した。

Sideout



Side アスラン・ザラ

ザラ
「アスラン、久し振りに二人で母さんの墓参りに行こう?」

アスラン
「はい、父上。」

二人はアスランの運転する車で、レノア夫人に墓前に向かった。

ザラ
「どんな未来か、考えていなかったなぁ…」

アスラン
「…」

二人は墓前の前で祈った。

アスラン
(コウキさんが僕達の為に考える時間をくれました)

Sideout



Side シーゲル・クライン

ザラ
「評議会を始める。前回の映像の続きを再生してくれ。」

ユーリ
「は!」

光輝
「皆様、御機嫌よう御座います。
この戦争は非道な物です。ザラ議長の仰る通り、一方的に地球軍が悪いのです。
ここで二人の人物を心理分析しましょう。
一人目はブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルです。
彼は財閥の御曹司として生まれました。
きっと周りにちやほやされて、育ちました。
彼が学生の時に一人のコーディネイターと出会います。
彼は、他の人と違って媚びへつらう事をしなかったと思われます。
子供同士なので、喧嘩したでしょう。それも多数に無勢で…。
それに負けて劣等感を抱いたと思われます。
彼は、学校を数日休んでいます。
それで親に叱責されたのでしょう。それ以降、コーディネイターを敵視しています。
プラントへの過剰なノルマを課したのも、それ故でしょう。
勿論、彼だけでなく、利害関係でプラント理事国も容認しています。
アズラエルは憎しみから強化人間を作りました。
彼にはもう酌量の余地がありません。既に人間性を失っています。
二人目はジョージ・グレンです。
彼は賞賛される一方で孤独でした。
誰も彼と並ぶ者がいない為、彼は彼を作った研究者の言葉を信じ、
人の今と未来の間に立つ者、調整者、『コーディネイター』と称しました。
彼は自らを調整者になろうと思い込みました。
木星探査船に乗り込んだのも一人になり、考える時間が欲しかったのでしょう。
逆にそれが彼を自分を理想に駆り立てたのです。
研究者が陥りやすい罠とも知らずに…。
研究者の第一人者は自分の研究にのめり込み過ぎて、周りを見ていません。
そして理想を追い求めて、その影響を考えていません。
ジョージ・グレンは遺伝子操作詳細なマニュアルを世界中に公開頒布しました。
そこには影響を考慮する事が欠落していました。
心理分析は以上です。」

「「うーむ…。」」

光輝
「ここでユーリ・アマルフィに渡した情報を審議して下さい。
審議が終わったらこのビデオの続きを再生して下さい。」

ユーリはアスランから貰った情報を説明した。

議員達
「地球軍め、また…」
「バルキリーの…」
「ニュートロンジャマー・キャンセラー…」

議場は喧騒としていた。

クライン
「イチジョウの話の続きを聞きたいが…」

誰一人として、反対する者もいなかった。

光輝
「ここでミスリルの掴んだ情報です。
ラウ・ル・クルーゼがオペレーション・スピットブレイクの情報をムルタ・アズラエルに流しました。
これが証拠の映像です。」

クルーゼがアラスカの街でアズラエルの手先からデータディスクを受け取っている場面とアラスカ基地内部に侵入している様子を映像で見せた。

光輝
「まだ状況証拠です。
ただ、サイクロプスの事は間違いなく知っていて、その事をザフト軍に伝えなかったのは事実です。金銭の授受がないことで、金銭目的ではありません。
情報を貰っている以上、対価は情報の筈です。
次の音声を聞いて下さい。」

クルーゼ
「これはザラ委員長閣下。このお時間ではまだ評議会の最中では?

分かりました。お伺い致します。

う…うぅ…う…
ふ…せいぜい思い上がれよ…パトリック・ザラ…。」

光輝
「ラウ・ル・クルーゼの自宅の盗聴をしたものです。スピットブレイク可決後の音声です。電話の相手は、ザラ議長ですね。」

ザラ
「おのれ、ラウ・ル・クルーゼ!」

光輝
「私はラウ・ル・クルーゼを大西洋連邦に押し付けたいと思います。
ムルタ・アズラエルとラウ・ル・クルーゼを暗殺する事は簡単ですが、
それでは直ぐに忘れられ、また別の人間が争いを起こします。
彼らは人間の作った法律できちんと裁かなくてはいけません。
それで多くの人々の考えを、変える事が出来ます。
詳細な作戦と分析データはこのディスクに収めています。
良き議論をお願いします。
因みにこのディスクを持って来たザフト兵は私です。」

ザラ
「わはははぅ…、一本取られたな。」

クライン
「ザラ、君の悲しみに気付かなくて、すまない。
君には私の言ったことが綺麗ごとに聞こえていたのだろう。」

ザラ
「私こそ済まない、忘れていたものを思い出した。
妻の墓前で久し振りに妻と語ったよ。危なく取り返しのつかないところに踏み出そうとしていた。」

Sideout



Side アスラン・ザラ

アスランはラクスに招かれていた。
皆は評議会の様子を見ていた。

ラクス
「アスラン、良かったですわね。」

アスラン
「ああ…」

カガリ
「ぅ…うぅ…アスラン、良かった。」

光輝
「アスラン、これで憂いを断てたな。」

アスラン
「コウキさん、ありがとうございます。」

光輝
「いや、ザラ議長が最後に踏みとどまれたのは、君の存在があるからだ。
君が死んでいたら、ジェネシスを使用していただろう。
そして君を支えていたのはキラ君だ。
キラ君もまた、君に支えられていた。
本来、ザラ議長とムルタ・アズラエルは当初、この戦争の禍根を取り除く、
生贄と考えていた。しかし、ザラ議長が死ぬと君が迷い、引きずられてキラ君も迷いが生じる。その悪影響が今回の事で解消される。
それは私の過ちだ。きっとハウメアの導きなのだろう。
それからニコル君は優しすぎる。君を庇って死ぬところであった。
彼の性格では今の戦争から身を引くことを良しとしないだろう。
しかし、次の戦争には参加させない方がいい。
誰かを庇って死ぬ可能性がある。」

アスラン
「え?次の戦争…。」

光輝
「それだけ、禍根が大きい。
ザラ議長は夫人だけで我を忘れた。
この戦争で家族全てを失った人がいる。
自己を確立している人の中で次期政権担う人達がいる。
今の中堅のいる人でナチュラルとコーディネイターの双方で悪感情刷り込まれてしまった人々がいる。
戦争だけではない、テロリズムもある。
決して一度の戦争で払しょくできない。
だがそれを知る我々が戦い、連鎖を断ち切らねばならない。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

マリュー
「マクロスって映画みました?」

フラガ
「アニメだろ。マクロスってあのオーブでの飛来物に似ているし、
バルキリーもそっくりだよな。」

ナタル
「設定がリアル過ぎますね。
文明を忘れたゼントラーディが歌の力で文化を思い出す。
ゼントラーディは今の人類ですね。」

フラガ
「挿入歌の『愛・おぼえていますか』はラクス嬢が歌っていた曲だよな。」

ナタル
「作詞作曲がプロトカルチャー、映画の内容と重なりますね。」

フラガ
「まさかコウキはプロトカルチャーでは?」

マリュー
「それは飛躍し過ぎよ。逆にこのアニメの監修にコウキさんが絡んでいる方が自然ね。」

フラガ
「それもそっか。でもよあの飛来物、変形して立ち上がりそうだぞ。」

ナタル
「まさかね…。もしそうなら、あれはミスリル製かもしれません。」

マリュー
「あっチョット待って。タイミングと場所、余りにも都合良すぎない。」

フラガ
「あっあの野郎、これも計算づくだ。」

Sideout



Side ムルタ・アズラエル

サザーランド
「今回の件、大変でしたね。」

アズラエル
「金と時間を無駄にしたが、大統領を解任して乗り越えた。
奴らもブルーコスモスの力を甘く見ていたな。」

サザーランド
「私も助けて頂き感謝しています。」

アズラエル
「パナマの方はどうだ。」

サザーランド
「24時間体制で修復しています。1ヶ月で修復して見せます。」

アズラエル
「いやいや、お見事です。流石ですな、サザーランド大佐。」

サザーランド
「いえぇ、助けて頂いた恩があります。」

アズラエル
「まだまだ課題も多くてねぇ、こっちも。
しかしよもや、カラミティ、フォビドゥン、レイダーまで奪われるとは思っていなかった。
本当にとんでもない国だね、オーブは。何考えてたんだか?」

サザーランド
「上手く立ち回って、甘い汁だけ吸おうと思っていたんでしょう。
卑怯な国です。プラントの技術も相当入っていたようですからなぁ。」

アズラエル
「どちらにしろあれは何とかしなきゃねぇ。」

サザーランド
「それでご自身で宇宙へと?」

アズラエル
「アークエンジェルはL4宙域に向かったと情報があった。
ミスリルのあの機体、核エネルギー、使ってるんじゃないかと思ってさ。
上手くすれば基地事、手に入れられるかな。」

サザーランド
「なんですと?」

アズラエル
「確証はないけど。でもあれだけのパワー、従来のものでは不可能だ。」

サザーランド
「Nジャマーも、コーディネイターの作ったものですからなぁ。
確かに奴等なら、それを無効にするものの開発も可能でしょうが、それが本当なら由々しき事態ですな。」

アズラエル
「おいおい、国防産業理事の僕の目を疑うのかい?」

サザーランド
「いえ、そのようなことは…。」

アズラエル
「大体我々は弱い生き物なんだからさ。
強い牙を持つ奴は、ちゃんと閉じこめておくか、繋いでおくかしないと危ないからさぁ。」

サザーランド
「宇宙に野放しにした挙げ句、これでは、ですな。」

アズラエル
「頑張って退治してくるよ。僕も。」

Sideout



Side ホフマン大佐

月基地オペレータA
「第2輸送船団、ランディングシークエンススタンバイ。
B班は第5船団を早くパッドから移動させろ。第22輸送船団は、抗放射線軌道で待機だ。」

月基地オペレータB
「N-11作業グループは、Fパッドの作業を支援せよ。そうだ、ドミニオンの出航が最優先だ。」

ホフマン
「第8艦隊、ホフマン大佐です。」

将校
「ん。君に、第7機動艦隊司令官を命ずる。地球連合軍最高司令部のサザーランド大佐の強い推薦だ。それと旗艦として、アークエンジェル級2番艦、ドミニオンを与える。」

Sideout

 
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