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聖闘士星矢 黄金の若き戦士達

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480部分:第六十七話 豪州という地その五


第六十七話 豪州という地その五

「あの神々もまたその力だ」
「戦いに餓えた神々じゃな」
「あの神々とも戦い、そして勝たなければならない」
 シオンの言葉には深刻な響きもあった。
「この地上の平和の為には」
「それではシオンよ」
「何だ」
「御主もそこに留まるだけで終わらせるつもりではあるまい」 
 鏡の向こうの男はこう彼に問うてきたのだった。
「それだけでは。終わらせるつもりはあるまい」
「必要とあらばだ」
 こう前置きしてからの言葉である。
「私も戦う」
「そうか。やはりな」
「そしてだ」
 今度はシオンが鏡の向こうの男に対して問うた。
「御前もそれは同じだな」
「わしはここから動くことはできぬ」
 男の返答はまずはこれであった。
「しかしじゃ」
「しかしか」
「そうじゃ。ここに来るというのなら相手をする」
 強い言葉であった。老いている筈だが何故かそこには確かな若さがあった。
「ここにいるあの者達を解き放たたせるわけにはいかんからのう」
「狂闘士達、いやアーレスは」
「あの者達を解き放とうとすると思うのじゃな」
「間違いなくそうして来る」
 シオンの今の言葉は確信であった。
「御前を倒したうえでだ」
「そして世界を分けるというのじゃな」
「アーレスとあの神の絆は深い」
 シオンは静かに言った。
「それを考えればだ」
「解き放ちそのうえで世界を分け合う」
「そうしてくるだろう」
「そうなればどのみちじゃ」
 男の言葉はいささか何かを含むものになっていた。それは妙に剣呑なものも帯びている、そうしたものを含む言葉になっていたのだ。
「この地上は終わってしまう」
「人間の世界の平和もまた」
「あの二柱の神々の下では人は生きてはいけぬ」
 男の言葉はそれを見透かしたものであった。
「間違いなくな」
「だからだ。それを許してはならない」
「その時は任せておくのじゃ」
 男はシオンに言ってきた。
「わしが何としても守るからのう」
「頼めるか」
「任せておくのじゃ」
 こう返す男だった。
「わしもその時は戦う」
「そうしてくれるか」
「確かにこの場を離れることはできぬ」
 それはどうしてもだというのだ。
「しかしじゃ。ここに来るのならばじゃ」
「戦ってくれるか」
「シオンよ」
 男のシオンにかける言葉が実に優しく親しげなものになっていた。
「あの者達は気付いておらぬがのう」
「誰一人としてな」
「しかし戻って来てくれた」
 その彼等も見ている言葉であった。
「そしてまた同じ時を過ごせる」
「そうだな。だが私は」
「間も無くか」
「この戦いが終わって暫くか」
 言葉に寂しげな笑みが宿っていた。
「去ることになる」
「左様か。遂にじゃな」
「長いようで短い時間だった」
 シオンの言葉には過去を懐かしむ確かなものがあった。
 
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