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ヒカリアン・フォーエバー

作者:7仔
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プロローグ"ウィンドロード"
  "ウィンドロード"1

 
前書き
まずは彼女の物語から始めよう。 

 
2011年秋。
ミナヨ「私は・・・めちゃくちゃにしたのね。誰かの・・・宝物を・・・。」
テツユキ「ああ・・・そうだよ。ついにやっちまったんだよ。」

私は神田ミナヨ。港区界隈で中華料理屋を経営する父を手伝っている。
私には大勢の友がいる・・・いや、いたというべきか?

その友の半数は人間ではない。
この世界には、宇宙からやって来て、地球人と共に生活する生命体が存在していた。
暗黒面のブラッチャーと、正義の心を持ったヒカリアンたち。
彼らは両方とも電車や気動車、機関車など、鉄道車両を中心とした乗り物をボディとし、90年代中ごろから地球で活動していた。
私と、幼馴染のテツユキくんは、ヒカリアンをサポートする立場となり、彼らと友情を育んだ。
私に恐いものなどなかった。その頃は。

だが、今は・・・自分の人生が終わったような気持ちだった。
その年、23歳になった私は免許を取ったばかりだった。今まで自転車でしていた出前を早速カブに切り替えた初日だった。
同じ原付に乗った若者が挑発してきた。出前はすんだ後であったし、私自身、昔から乗りやすい性格だった。
相手の原付を追い抜いたと思ったその時だった。
目の前にトラックが迫っていた。慌ててよけて、歩道に侵入してしまった。
そして一台の自転車と接触し、ガードレールに激突。ようやく停車した。
自転車の少女は大きな怪我をしなかったが、自転車の前輪周辺が歪んでしまった。
ワガママな私もここまで大きな不始末は初めてだった。その上その自転車が・・・。

テツ「プジョーNS40。1970年代にフランスから日本に輸入されていたミニサイクルだ。
40年も前の、しかもフランス製の自転車。修理するにも部品は手に入りづらい・・・とまあ、それだけならまだましだ。俺みたいな嫌われ者がネットで金を出して部品を買えば済む。だが、あのプジョーは・・・特別な一台なんだ。乗っていた子にとって。」
そうだった。私は自転車に乗っていた少女の顔を思い出していた。
峠アオバ。三鷹並木橋にある「アオバ自転車店」の一人娘。店の名前となっていることから分かるように、父親・工一氏にとって文字通り愛娘なのだ。
事故の後、私は工一氏と会った。顔を見るのが怖かった。辞儀をしてうつむいたまま「私の不始末です」と静かに言うのが精一杯だった。
工一氏は怒る前に言いたいことが多くありそうな顔だったが、一言呟いただけだった。
「軽い気持ちで運転していい乗り物はないと思ったほうがいいですよ。今言いたいのはそれだけです。」
アオバのほうはほとんど口をきかなかった。恨みのこもった目線さえ向けたくないらしい。
ぷいと顔をそむけたまま、帰ってと言っただけだった。
彼らなりに耐えていたのだ。本当なら、もっと怒りをぶつけても仕方がないはずなのだ。なぜなら・・・。
「あのプジョーは、アオバちゃんのご両親の縁を結んだものなんだ。」
テツユキ君の隣でケンタ君が話し始めた。
彼はテツユキくんの後輩だ。4つ年下のはずだ。

ケン「峠輪業っていって、アオバ自転車になる前のお店、そこで売っていた自転車なんだ。そしてその自
転車を選んだのが高校生だったワカバさん・・・アオバちゃんのお母さん。でも病弱でそれまで自転車に乗ったことがなくてね。店を継ぐ前の工一さんが教えていったんだよ。」
私は半ば放心して聞いていた。
あの青い・・・真っ青な空のような色の自転車。小柄でおしゃれで、古くて貴重なだけではない。
一組の愛を実らせた、家族の象徴でもあったのだ。それを壊してしまった・・・。
ケン「直せない事はないけど、それでミナヨ姐ちゃんが許されるかどうかは・・・さて、どうしてくれるの?」
昔は流されやすい性格で、私などに散々振り回されていたケンタ君がどうしてくれる、という言葉を吐いた。
強くなったんだね。それに引き換え、私は落ちるところまで落ちてしまったのだろうか・・・。
テツ「とりあえず、しばらくは自重だな。出前はつばさやドクターが手伝うそうだ。」
ケン「そういうこと。ボクはもう戻らないと。」
二人とも開店前の374庵から去っていった。
テツユキ君はアメリカのヒカリアン組織の局長。ケンタ君はJHR西日本の運転研修センターに通い始め、運転手を目指している。
二人とも近頃は店に来る回数が減っている。そろそろ私に愛想を尽かし始めていたのか・・・。 
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