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IS ーインフィニット・ストラトスー 〜英雄束ねし者〜

作者:龍牙
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4話『決別への宣戦布告』

 四季とセシリアの試合の後に行なわれた一夏とセシリアの試合の結果は…………結果から言えば一夏が負けた。
 まあ、それでも専用機持ちの代表候補生相手に素人が善戦出来ただけ良くやったというべきだろうか? そして、その試合に於ける一夏の敗因としては、

(あの剣……雪片だな。常時SEを喰らうIS用の“妖刀”の様な能力の武器の上に……その代償で得られる力は……)

 『雪片弐型』と言う名の一夏の専用機『白式』の唯一にして最強の武装。SEと言う代償を支払って得られる能力も当然ながら、強力と言っていいだろう。
 ワンオフ・アビィリティー、シールド無効能力『零落白夜』。SEを代償にして発動する相手の絶対防御を無効化する力……織斑千冬が世界を制した由縁とも言える代名詞と言うべき特種スキルだ。その破壊力は正に、

(……一撃必殺……)

 だが、少なくともそれは武器を持った事の無い素人に渡すべき力ではない……。四季としても最初に扱わせてもらう武器としては心の底からお断りしたい。
 しかも、それによって他の武装が装備出来無いと言う欠点と合せて戦闘時の手札が少なくなる。
 付け加えるならば、再現したと言う努力は買うが実際にはスポーツとしては強力限る上に、実戦では役に立たないと言う意図が不明の能力だ。
 単一能力(ワンオフ)としては良いし、データの多い能力だから再現も出来たのだろうが……それを実験機ではなく実際に運用する機体に持たせる等正気とは考えられない。

「あんな玄人向けの機体を初心者に与えるって、何考えてるんだか?」

 近接武装だけの近距離特化の機体と言う高い技量を求められる代物の上に、SEを消費する能力と言う短期決戦型の能力……しかもその能力は最悪の場合、相手の命を奪ってしまうという危険の有る力と、恐らく白式は『ブリュンヒルデ(織斑千冬)』の弟と言う事で作られたのだろうが、少なくとも素人が使うにしては色々とデメリットの多い機体だ。

(……一次移行した時……好機を掴んだ瞬間、躊躇しなければ逆に勝っていたかも知れない。零落白夜によるSEの無効化と、その結果起こる危険の有る最悪の事態を想像して手を止めた、か)

 少なくとも四季であっても雪片を使った最初の一撃は躊躇していただろう。あれは、ISの防御を上回るダメージを確実に与えられる武器だ。
 己に与えられた力に対するそれを振るう上での躊躇、強力な力の代償として支払うSE……それが先ほどの一夏の試合の敗因だった。

「聞いているのか四季、お前も千冬さんの弟なら正々堂々剣道で……」

「なんだあの機体は? あんな物はお前には相応しくない、今からでも遅くは無い、私が用意させた専用機を……」

 後ろで色々と騒いでいる二人に対して苛立ちを覚えつも、一度一夏の専用機への考察を止め、次の一夏と秋八の試合へと考えを其方へと向ける。

「せめて、あの悪趣味な色を塗り替えてから寝言を言え、モノクロは嫌いなんだよ」

 流石に鬱陶しいと思ったのか千冬に対してそう言い切る。思いっきりOTZな体制になっているのは……恐らくだが、一夏達の専用機の色を決めたのは千冬だったのだろう。

(やっと静かになった)

 問答無用で千冬を黙らせると秋八と一夏の試合へと意識を戻す。どちらが次の対戦相手かは知らないが、少しでも情報を得ておく事に越した事は無い。








 30分の休憩を挟んだ一夏と秋八の試合、それは……

(……Hi-νガンダムだって……。あれは……あのアムロ・レイの最強のガンダムじゃないか!? そんな物を何でアイツが)

 そんな苛立ちと共に黒い白式……黒式を纏った秋八がそんな事を考えていた。四季のHi-νガンダム・ヴレイブを見た瞬間からそんな苛立ちを覚え続けていたのだ。

「よし、始めようぜ、秋八!」

「そうだね。でも、最初は手加減してくれないかな? 流石にまだぼくは一次移行してないんだからさ」

 そんな穏やかな会話と共に始まった二人の試合だが、秋八の黒式の一次移行が完了するまでの間は終始一夏が押していたが、秋八側の一次移行が完了してからは同じ特種スキル零落白夜同士の戦いとなった。
 その結果、序盤から零落白夜を使っていた一夏が再び自滅する結果に終わり、秋八の勝利となった。零落白夜……その最大の欠点は外せば外すほど敗北に一歩近付くと言う点である。

 ……どこぞの妖獣デジモンの必殺技を想像させてくれる……。



『ギチ……?』(どこぞの妖獣デジモン)

 最もそっちは命中すれば回復できるが。






 そして始まるのは四季と秋八の試合。共に一勝している秋八と四季。……一試合だけしかしていないが共に全勝同士の試合、同時に男性操縦者同士の試合となれば盛り上がらないわけが無い。代表候補生に勝った四季と天才と呼ばれている秋八の試合は当然ながら注目が集まる。

 対峙するのは黒と青。四季の専用機のHi-νガンダム・ヴレイブと秋八の専用機の黒式。

「やあ、こうして試合するのは久し振りだね、四季」

「…………」

「君が引き取られて何年も会わなかったけど、前の面影なんてすっかりなくなったね」

 秋八の言葉に無言で睨み付ける事で返す四季。シールドを背中にブースターとして装着し、ビームライフルとハイパーバズーカを両手に装備している。
 それに対して秋八は雪片と同系列のブレードを持って立っている。……一夏と同じ雪片の同系統の武器なのだろう。

(……あいつも以前とは比べ物にならない位む強くなった。しかも、専用機はHi-νガンダム……。Hi-νガンダム相手じゃ、白式と同スペックの機体じゃ勝負にはならないか)

 余裕そうな表情の奥で冷静にそう考えていた。
 ……普段から激情を表に出さず、爽やかな笑顔の仮面で悪意さえも隠し続けている秋八だが、激情は比較的直ぐに冷めるタイプだ。そして、冷静にどう行動すれば自分に利があるか考える。

(……流石に無様を曝す気は無い。あのアムロ・レイじゃないとは言えHi-νガンダム相手に、神様からの専用機でもない限りは勝ち目は薄い……。一撃の破壊力はぼくに部があるけど、あいつの隙をうかがいながら、チャンスが無いようなら降参するか……幸い、勝ちを譲る理由は有る)

 クラス代表を辞退する理由を与えたのは他ならぬ秋八だ。……千冬の期待には応えられないだろうが、それでも降参するマイナス点は少ない。

(……中華娘は僕の好みじゃないし、そっちも一夏に押し付ける意味も含めて一夏をクラス代表にする必要があるからね)

 秋八の考えとしては天然フラグメーカー(原典主人公)のフラグを彼女に固定すると言う意味合いも有ったりする。単純にその為の接点が多かったのが、彼女であり一番欠けても惜しくなかった。

(それに、向こうも満更バカじゃない。しっかりと白式の対策はしているか……ぼくの黒式も同型だから、か)


《試合開始》


 試合開始と同時に雪片を展開し秋八は四季へと切りかかる。それに対して四季は秋八から距離を取りながら両手に構えたビームライフルとニューハイパーバズーカを向けて引き金を引く。

「ふっ!」

 連射できないバズーカの弾丸の隙間を縫う様に飛びながら秋八は四季との距離を詰めていく。

(やっぱりガンパンツァー隊長には悪いけど、バズーカは趣味に合わないな)

 ビームライフルを収納し、バックパックからビームサーベルを取り出し接近してきた秋八の雪片との切り合いを始める。
 Hi-νガンダム・ヴレイブのビームサーベルは予備的な武装だが、ブレードよりも軽く扱いやすい。手数が必要な時は此方を選択する事が多い。

(イメージ通り……いや、キレは劣っていて、力は多少上か……)

 仮想敵としてイメージしていた彼と実際の彼との差を補正しつつ、ビームサーベルで近接戦闘を繰り広げていく。

(……フィン・ファンネルを使っても良いけど、流石にそれだと面白味にかけるな……)

 ビームサーベルとの切り合いを繰り広げながら四季はそんな事を考える。此処でフィン・ファンネルによるオールレンジ攻撃を仕掛けて勝っても面白味に欠ける。……と言うよりも決着は剣で着けたいと言う気持ちもある。
 何より、

(何より……あいつの剣の腕は和人や直葉ちゃんに劣る)

 そう思うと今更ながら、この程度の相手との決着の為にあそこまで必死になっていた事を恥ずかしく思う。剣を交えて理解した事だが、今の己ならば間違いなく勝てると言う確信がある。

「カハッ!」

 ビームサーベルで雪片を受け止めて腹へと蹴りを打ち込む。

(グッ……こいつ、容赦無い。こんな奴とあんまり長く戦っても得は無いな)

 秋八の動きが止まった瞬間、ハイパーバズーカを秋八へと向けて引き金を引き、弾丸の射出と共にその場から離脱する。

「っ!?」

 流石にISには絶対防御等の防御機能が有ると言っても至近距離からのバズーカの弾丸等、恐怖以外の感情を感じない訳が無い。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 バズーカの直撃による衝撃に吹飛ばされる秋八のSEを大きく削り取る。なるべくSEを消費する零落白夜を使わずに戦っていたが、先ほどのダメージで仕える回数が大きく減った事を感じる。
 下手に零落白夜を使っていたら、それが原因で今のバズーカの直撃で負けていた可能性もある。

「っ!? 早い!」

 そんな事に思考を向けている間に、爆煙を引き裂いて向かって来る三本のビームの光が更に秋八のSEを削る。同時に真上からブレードを両手で構えた四季が迫ってくる。

「くっ!」

 咄嗟に雪片を構えてブレードを受け止めるが加速を加えた一閃が秋八の手から雪片を弾く。

(……使っているのがあの屑だとしても、流石はHi-νガンダムって所か。武器も無くなった事だし丁度良いか。クラス代表になるのは一夏じゃなきゃダメだからね……。これから先の危険の大部分は一夏に引き受けて貰わないと)

 そんな事を考えながら動きを止めていた秋八を警戒し、距離を取ってビームライフルを向けていた四季に対して彼は両手を挙げる。

「……何の心算だ」

「いやー、流石に武器が無きゃ戦えそうに無いからね。SEも結構減ってるし、悪いけど降参させて貰うよ。次の試合にも備えたいしね」

 秋八のギブアップ宣言が受理されたのか、暫くして試合終了のアナウンスと共に四季の勝利が放送された。
 本来ならば他の武装を使えば良いだけだが、黒式も白式も武装が雪片一つだけなので武器を失ったと言うのは十分にギブアップの理由になる。

「……何を考えているんだ、お前は」

「何を? 次の試合の事に決まってるじゃないか?」

 警戒心丸出しの四季に対して秋八は何時もの爽やかな笑みを浮かべながらアリーナの地面に突き刺さっている雪片を回収してピットへと戻っていく。

(……くそっ! くそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそくそ! あの屑がっ!)

 表向きの言葉と表情とは別にその目には憎悪を宿しながら心の中で怒りをぶちまけていた。……表向きのキャラクターを崩さない為に心の中で絶叫するしかないが、

(計画通りとは言っても本当に屈辱だよ、これはっ!!! 最悪の結果だ! あんな屑に! みんなの前で! このボクが負けるなんて!)

 憎悪に満ちた視線をピットに戻っていく四季へと向けて心の中で絶叫する。

(四季ィ! この屈辱は何千倍にして返してやる!!! オレの目の前に絶対這い蹲らせてやる!!!)




















 その後に行なわれた秋八とセシリアの試合では苦戦しながらも僅差で秋八がセシリアに勝利した。
 試合内容は終始圧倒されていた秋八が辛うじて零落白夜を決める事ができ、運良く勝利する事が出来た。……いや、秋八にとっては一夏と四季の試合から対策を立てた結果の勝利だったのだが、最初の試合で見せた四季の勝利に比べると、劣っていると言われても仕方ない試合だった。

(くそっ! 本来なら、ぼくが代表候補生の彼女に勝って才能を見せ付けている所だって言うのに!!!)

 誰も居ない通路で勝利者であるはずの秋蜂は苛立ちながら拳を壁に叩き付ける。これで一夏と四季の試合を残した試合結果は、


 四季……2戦2勝0敗
 一夏……2戦0勝2敗
 秋八……3戦2勝1敗
 セシリア……3戦1勝2敗


 と言う結果になった。残すは此処まで勝ち星の無い一夏と全勝の四季の試合のみ。誰もが四季の勝利で代表決定戦が幕を閉じると予想していた。折角の男性操縦者同士の試合と言っても此処まで圧倒的な強さを見せている四季の敗北を予想する方が難しいだろう。

 逆に四季に順ずる戦績の秋八の評価は天才と呼ばれていた彼の普段の評価を落すのに十分すぎほど無様なものだった。
 ……普通に戦って勝てたのは同じ素人の一夏相手にだけ、四季相手には終始圧倒されてギブアップした、セシリアには運良く勝てただけのマグレ勝ち。
 ……天才と言う彼に対するコレまでの評価を知っていたらしい一部の観客達からは、『この程度?』と言う失望の視線が向けられていた。

(四季ぃ!!! 何処までぼくの邪魔をすれば気が済むんだ、あいつはぁ!)

 本来ならばセシリアに勝利した事で汚名返上する予定だった。……Hi-νガンダムの力を知っているから、接近戦特化の黒式では不利だと思ったからこそギブアップする予定だった。
 だが、結果はどうだ? セシリアに勝てたのは運が良かったから……そんな周囲の視線が突き刺さる。見下すのは己のはずなのに……。その原因は分かっている……四季だ。四季が自分よりも先にセシリアを相手に圧倒的な勝利をして見せたから秋八の勝利は誰も評価してくれていない……。


『試合開始』


 そんな事を考えながら秋八がピットに入ると丁度四季と一夏の試合が開始された。憎悪を浮べながら一夏と対峙しているHi-νガンダム・ヴレイブを憎悪の篭った視線で睨み付ける。

(そうだ……こんな役立たずじゃなくて、神様からの特典で貰える筈だったISだったら勝てていたんだ!!! ぼくがあの屑に負けたんじゃない……黒式がHi-νガンダムに負けただけなんだ!!! こんな物が最強のガンダムの一角に勝てるわけが無いんだ!!!)








 アリーナ

「ウォォォォォォォォォオ!!!」

 開始早々一夏は真正面から突っ込んでくる。それを一瞥しながら四季はビームライフルを収納、バックパックからブレードを手に取り、それを迎え撃つ。

(……どうしようか?)

 何一つ恨みも無く……寧ろ、数少ない味方だったと言える相手との試合。四季としてはどう戦うべきかと戸惑いを覚えていた。
 最小限の動きだけで一夏の剣を避ける。訓練の相手が『英雄』と呼べるガンダム達……彼らを相手にISを使って特訓を繰り返してきた四季とこの日まで剣道しかしていない一夏との間では大き過ぎる差がある。

 フェイントも無く正面から向かって来るだけの技は騎士ガンダム程の鋭さも無く簡単に避けられる。受け止めてみた一撃も武者頑駄無程の重さも無く、コマンドガンダムの様な接近する事を許さない針の穴を通す精密さと嵐の如き激しさを持った攻撃も無い。

 ……何気に今まで格上と同格相手の試合や訓練が多かったために格下相手の戦いに熟れて居ないのだ。

(……さっさと終らせるか)

 秋八との試合で既に宣戦布告は終った。……寧ろ、相手のギブアップの判断が早かったためにトドメの一撃まで持って行けなかった事は、四季としては不本意以外の何物でもない。
 過去との決別の為の宣戦布告……仲間達と共に先に進む為にも、大切な人と一緒に未来に向かうためにも……捕われている過去と決別する為の宣戦布告だったのだが……残念ながら不完全に終ってしまった。
 此処で一夏相手にそれをやって宣戦布告しなおす……それは単なる八つ当たりになってしまうと考えて早めに試合を終わらせようと考えた。

 その為に上段からの一夏の一閃を避けて箒との試合で見せた七星天剣流の技を使う。

「“回羅旋斬”!!!」

「っ!? うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 咄嗟に雪片を盾にして四季の必殺の一撃を防いで見せるが、衝撃までは防ぎきれずにアリーナのバリアー近くまで吹飛ばされる。

「へぇ」

 必殺の一撃を防がれた事……それでもSEを削っているが、本来は一撃で終らせる心算ではなった技が防がれた事に対して四季は……笑みを浮かべた。
 まだまだ経験不足から四季の所には届いていないだろうが、それでも……秋八やセシリアとの試合で一夏もまた成長したと言う事だろう。

(……流石は一兄。これは、オレも……真剣で行かせて貰おうか!)

 この試合で初めて四季が構えを取る。篠ノ之流の物とはまったく違う七星天剣流の構え……。初めて剣士としての全力を、

「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」

 見せる。





 ピットの中で試合の映像を眺めながら秋八が震えを覚えていた。……歓喜ではなく恐怖の感情で、だ。

(なんなんだ……なんなんだよ、あいつは!?)

 初めて攻勢に出た四季の剣に辛うじて一夏が喰らい付いている。最初は防ぐのが限界だったが、何とか数回程度では有るが反撃も出来ていた。動きを止めての互いに剣のみでの近接戦闘。四季の剣は確実に一夏のSEを削っているのに対し、同様に一夏の剣も四季のSEを削っていた。

 零落白夜を一夏の白式も持っているはずなのに使えない。……寧ろ、使ってしまえばその瞬間にSEが0になるのは己だと、本能的に理解しているのだろう。





「同じ一週間なのに、なんでこんなに差が出るんだよ」

「いや、寧ろオレはその差を短時間で少しずつ縮めていると思えるけど」

 悔しげに呟く一夏の言葉に四季は呆れた様に返す。だが、己と一夏の間にはこの試合の中では決して埋める事の出来ない大きな差が有る。

「練習量が足りないのは当然……剣道しかやってないのも問題だけど、こっちは好きなだけアリーナが使えたんだからな」

 DEMのIS用アリーナでのG-アームズを初めとするガンダム達を相手にした模擬戦と訓練、剣道の練習では差が出るのも当然だ。
 だがそれ以上に、

「悪いけどオレと一兄との間には埋められない差がある。譲れない想いと、信念と……大切な人を守ると言う……覚悟が!!!」

 大切な人を守ると言う譲れない想い。ガンダム達の背中を追いかけた……大事なパートナーを二度と転生できないほどのダメージを与えてしまったエルガとの戦いでみた……彼等の信念と覚悟。

「オレにだって覚悟や信念ならある! オレは、オレに関わる全ての人を守る! それがオレの覚悟だ!」

「……それは覚悟じゃない……」

 所詮人間が守れるのは己以外にはたった一人だけ。

「……単なる夢想だ……」

 その守るべき者を持っているか否か。

「一兄の全てを守るって言う“理想”を否定する気は無い」

 一夏を蹴り飛ばして距離を取る。……一夏の言う言葉を否定する気は無い。だが……全てを捨てても失いたくない大切な相手を持っていない者に、守るなどと言う言葉を軽く使って欲しくは無い。

「本当に守りたいと言う気持ちを持った事が無い奴が、守られている奴が、“守る”なんて言葉を使うな」

 己もまだ守られているだけと言う自覚はある。だがそれでも……彼女の、詩乃の笑顔だけは守りたい。それが四季の誓い。

「これで終わりだ……」

「ああ、決着を着けてやる!!!」

 イグニッションブースト+零落白夜、この場面で無意識の中でイグニッションブーストと言う技術を使えた一夏は才能は有るのだろうが、

「七星天剣流」

 四季は詩乃の表情は全て好きだが、彼女の泣き顔だけは見たくない。苦しんでいる表情も、助けを求める言葉は……自分の名を読んでくれる事だけは嬉しいが、そんな風にしてしまった全てに怒りを覚える。……己を含めてだ。

 七星天剣流……四季が求めた守る為の『力』の象徴。彼女を傷つけるモノ全てを切り伏せるための力の1つ。


「“瞬剣光斬”!!!」


 四季と一夏の影が交差し、次の瞬間……飛行不能のダメージを受けた一夏のSEが0となり、そのまま地上へと堕ちていった。

「……悪いな……オレは負けられないんだよ……こんな所で」

 守りし者と名乗れないのはよく分かっている。……だが、『ヴレイブ』の名と姿は己の目指すべき姿そのもの……。

 彼女のための勇者であると。

 だからこそ、負けられないのだ……。


五峰四季……三戦三勝


こうして代表決定戦は四季の完全な勝利となった。 
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