八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第九十一話 戦艦大和その八
「帝国海軍を代表する形でね」
「だからですか」
「うん、この船が今もあればってね」
例え時代遅れでもだ。
「そう思うよ」
「けれどもう兵器としては」
「三笠みたいに保存されればいいかな」
横須賀に今もある日露戦争の時の連合艦隊の旗艦だ、その帆船の時代の名残で左右に砲がある戦艦だ。
「ああしてね」
「横須賀の」
「横須賀行ったことあるかな」
「いえ、実は」
千歳さんは僕の今の問いには首を横に振って答えた。
「横浜はありますけれど」
「横須賀はないんだ」
「横浜と近いですよね」
「電車ですぐだよ」
まさに目と鼻の先だ。
「横浜から横須賀まではね」
「そうなんですね、ですか」
「横須賀はないんだ」
「はい、まだ」
「その横須賀にあるんだ」
「三笠がですね」
「うん、保存されているんだ」
あの時の姿のままだ、少なくとも外観は。
「中は色々使われてきたけれどね」
「色々ですか」
「遊戯場になったり水族館になったりね」
「軍艦が水族館になったんですか」
「そうした時もあったんだ」
「そうだったんですか」
「うん、色々使われていたんだ」
歴史のその中でだ。
「戦争が終わってからね」
「それでもよく残ってましたね」
「もう廃棄しようかって話もあったみたいだよ」
「それは」
「勿体ないよね」
「はい、廃棄となりますと」
「色々な考えの人がいるから」
中には戦争絶対反対と言う人もいる、そしてその一環として三笠という軍国主義の残照も抹殺してしまえというのだ。
「だからね」
「そうした考えの人もいて」
「そうした話もあったんだ」
「よく残りましたね」
「今も保存に苦労しているらしいよ」
冗談抜きで歴史の彼方に忘れ去られかけた時もある、保存にも維持費や修復費等のお金が必要なので資金の確保にも苦労しているというのだ。
「そうなっているんだ」
「そうですか」
「けれどね、僕としては」
「三笠もですね」
「残って欲しいし大和もね」
この船もだ、目の前に模型として存在している。
「あって欲しかったよ」
「今も」
「うん、本当にね」
「三笠みたいにですか」
「ああした形でもね。出来れば」
僕は千歳さんにこの船の名前も出した。
「イギリスみたいに」
「イギリスですか」
「ネルソン提督の乗っていたヴィクトリー号ね」
「ネルソンは私も知ってます」
千歳さんはこの人についてはすぐに答えてきた。
「ナポレオンと戦った」
「うん、その人の乗っていた船があったけれど」
「今もですか」
「残っていてね」
それでというのだ。
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