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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第28話 闇の胎動

Side マリュー・ラミアス

サザーランド
「軍令部のウィリアム・サザーランド大佐だ。
諸君ら第8艦隊アークエンジェルの審議、指揮、一切を任されている。
座れ。既に、ログデータはナブコムから回収し、解析中であるが、
なかなか見事な戦歴だな。マリュー・ラミアス艦長。」

マリュー
「…」

サザーランド
「では是より、君達からこれまでの詳細な報告、及び証言を得ていきたいと思う。
尚、この査問会は軍法会議に準ずるものであり、ここでの発言は全て、
公式なものとして記録されることを申し渡しておく。
各人、虚偽のない発言を。よいかな?」

マリュー
「はい。」

サザーランド
「ではまず、ファイル1。
ヘリオポリスへのザフト軍奇襲作戦時の状況。マリュー・ラミアス当時大尉の報告から聞こう。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

ハロ
「ハロ!ハロ!
ナンデヤネン!」

ラクス
「あら?あらあら?」

ハロ
「アラアラァ?」

ラクス
「何を見てらっしゃいますの?」

ハロ
「テヤンデイ!」

ラクス
「キラの夢は、いつも悲しそうですわね。」

ハロ達
「「ハロハロ…」」

キラ
「悲しいよ…。
沢山…人が死んで…。
僕も…沢山…倒した…。
うぅぅ…」

ラクス
「貴方は戦ったのですわ。」

キラ
「ぅ…」

ラクス
「それで守れたものも、沢山あるのでしょう。」

キラ
「…」

ラクス
「うふ。でも…」

キラ
「ん?」

ラクス
「今はお食事にしましょう!もう一度温めてきますわね。」

キラ
「ぇあぁ…」

ハロ
「マイド!マイド!」

ラクス
「それに、貴方はまだお休みになっていなくては。」

ハロ
「ミトメタクナイ!ミトメタクナーイ!」

ラクス
「大丈夫です。ここはまだ…平和です。」

Sideout



アラスカの街の雑踏の中、ラウ・ル・クルーゼがムルタ・アズラエルの配下から、
データディスクを受け取っていた。



Side マリュー・ラミアス

サザーランド
「では君はその時点で、既にこの少年キラ・ヤマトが、コーディネイターなのではないか、
という疑念は抱いていた、と言うことだな。」

マリュー
「はい。」


~~回想~~

キラ
「無茶苦茶だ!こんなOSでこれだけの機体を動かそうなんて!
キャリブレーション取りつつ、ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定…、
チッ!なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュール直結。
ニュートラルリンケージ・ネットワーク、再構築。メタ運動野パラメータ更新。
フィードフォワード制御再起動。伝達関数、コリオリ偏差修正。
運動ルーチン接続。システム、オンライン。ブートストラップ起動!」

~~回想終了~~


マリュー
「いくら、工業カレッジの学生であるとはいえ、初めて見る機体の、
それも我が軍の重要機密であったXナンバーのOSを、瞬時に判断し、
書き換えを行うなど、普通の子供に出来ることではありません。
彼はコーディネイターなのではないかと言う疑念は、すぐに抱きました。」

サザーランド
「うん。その力を目の当たりにして、君はどう感じたのかね?」

マリュー
「ただ、驚異的なものと。」

サザーランド
「ふん。そしてジン自爆の際、気を失った君は、彼と、彼の友人らに介抱され、その後彼らを拘束した。」

マリュー
「はい。」

サザーランド
「これは的確な判断だったと言えような。
君は負傷していたと言うことだし、一刻も早く体勢を整え、状況を把握する必要もあった。
だが本体と連絡の付かぬうち、フラガ少佐の追撃を躱したザフトのモビルスーツが、再びコロニー内へ侵攻。
不運だったとしか言いようがないが、だがストライクはその際、何も知らぬ民間人に、
しかもコーディネイターの子供に預けられたままであり、君はそれ十分にコントロールしえなかった。そうだな?」

フラガ
「いえ!しかしあの場合…!」

サザーランド
「今は事実確認を行っているのだ、フラガ少佐。私的見解は無用に願いたい。」

フラガ
「くっ…。」

サザーランド
「結果、ミスリルの、コーディネイターの介入を許した。
主導権をミスリルのコウキ・イチジョウに握られ、何故、ザフト軍を攻撃しなかったのだね。」

マリュー
「報告書の通りです。そこで戦闘していれば、当艦は勿論、ヘリオポリスの崩壊の危険性もありました。」

サザーランド
(いささ)か憶測が入っていると思うがね。」

マリュー
「その後のミスリルの作戦が証明しています。情報分析能力の高さは優れたものがあります。」

サザーランド
「それは結果からの推測論に過ぎまい。」

ナタル
「用兵理論に基づいた作戦であり、報告書を分析して頂ければ、
彼らの推論と作戦には否定材料はないと考えます。」

サザーランド
「認めよう。だがユーラシアの軍事拠点、アルテミスへ助けを求めなかった。」

マリュー
「ユーラシアは友軍であっても、大西洋連邦とは決して仲が良いとは言えません。
軍上層部の命令なくば、こちらの情報だけ抜き取られ、最低限の補給だけ済まして、
護衛も付けられず放逐された可能性もあります。
それにザフト軍には強奪されたブリッツがあります。
アルテミスの傘は常時展開されていません。
ブリッツのミラージュコロイドを使えば、アルテミス内部へ侵入可能です。
友軍を危機にしてまで、危険を冒す必要はありません。」

サザーランド
「うぐっ。結果論だが、まあ無事に脱出したのだ、良しとしよう。
その後、ラクス・クラインを保護したようだが、何故、拘束しなかった。
ラクス・クラインは当時、プラントの評議会議長シーゲル・クラインの娘なのだぞ。」

マリュー
「いえ、保護したのはミスリルであって、我々ではありません。
それとも、民間人を人質にして戦争を有利に運ぶよう…とは教えられていません。
仰り様では人質にした方が良かったのでしょうか?」

サザーランド
「うぐっ…。それはさて置き、第8艦隊合流後、第8艦隊を置いて地球に降下した件を、
どう説明する。」

マリュー
「報告書の通りです。ザフト軍との戦力差があり、ザフト軍は当艦を目標にしていたので、
第8艦隊を守る為に囮役になったまでで、重要なのは設計図と運用データです。
ハルバートン提督から先に届けられたのではありませんか?
ザフト軍圏内へ降下したのは、一隻のローラシア級が特攻した為の不慮の事故であり、
我々の目的はストライクの地上での戦闘データを集める事であり、
報告書にあるように、十二分に役目を果たした思っております。」

サザーランド
「うぐっ…。我々はコーディネイターと戦っているのだぞ!
ただのコーディネイターの子供などに、ストライクを任せてどうするのだ!」

フラガ
「コーディネイターとは反応速度が違います。
我々だけではアラスカに辿り着かなかったでしょう。」

マリュー
「全ては、私の判断ミスと?」

サザーランド
「我々はコーディネイターと戦っているのだよ?ラミアス少佐。
その驚異的な力と、民間人の子供であろうが、コーディネイターはコーディネイターなのだ。
それを目の当たりにしながら、何故それに気付かない?
奴等が居るから世界は混乱するのだよ!」

フラガ
「曲解です!我々は…!」

サザーランド
「我々は?…なんだね?」

マリュー
「我々は、ただハルバートン提督の…!」

サザーランド
「彼の意志が地球軍の総意なのかね?一体いつそんなことになったのだ。」

マリュー
「うぅ…」

サザーランド
「私は全て諸君等に非があると言っているわけではない。
過酷な状況の中、実によく頑張ったものだと思う。
だがそれだけの犠牲を払い、入港したアークエンジェルは、肝心のそのストライクすら失っているという有様だ。
それで犠牲になった者達は浮かばれるのかね?
全てを明確にし、この一連の戦いの成果と責任をはっきりさせねばならんのだよ。
誰もが納得する形でね。
では、続けようか。」






ナタル
「ストライクは同型機相手に、4対1で戦った上での大破です。
それも原因は自重による脚部への負担が原因で、イージスの自爆に巻き込まれたのです。
戦闘データは回収出来ているので、問題はない筈です。」

サザーランド
「うぐっ…。では是にて、当査問会は終了する。長時間の質疑応答、御苦労だったな。
アークエンジェルの次の任務は追って通達する。ムウ・ラ・フラガ少佐、
ナタル・バジルール中尉以外の乗員は、これまで通り、艦にて待機を命ずる。」

フラガ
「では、我々は…?」

サザーランド
「この2名には、転属命令が出ている。明0800。人事局へ出頭するように。以上だ。」

ナタル
「我々は第8艦隊の所属です。本部と言えどもハルバートン提督の許可なく、末端の人事の変更は出来ません。
ハルバートン提督の許可はお取りですか?」

サザーランド
「うぐっ…。」

Sideout



Side ウィリアム・サザーランド

連合軍幹部将校A
「アークエンジェルか、厄介ですな。」

連合軍幹部将校B
「誰に教わったか知らないが、理屈ばかりで…。」

サザーランド
「ふん!どうせ奴らは…。
かまわん、おそらくはこれから起こることも。
全ては、青き清浄なる世界の為に。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

フラガ
「流石はコウキ。
質疑応答集が全部的中していたな。」

ナタル
「心理学者ですね。すべて計算通りです。」

アークエンジェルクルー達
「「クスクス…。」」

マリュー
「みんな、笑っては失礼よ。」

フラガ
「あー、腹がいてぇ。
サザーランド大佐、ぐうの音も出ない様子だったな。
何度吹き出すかと思ったぜ。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

ラクス
「ずっとこのまま、こうしていられたら良いですわね。」

キラ
「…」

Sideout

 
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