魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Eipic17さぁ世界に喧嘩を売りに行こうか~ Previous Night~
前書き
なんかもう、ずっと雪かきやら雪おろしをしていた1週間でした。筋肉痛? そりゃあもう、酷いッス・・・orz
ミッドチルダ東部にある広大な森林地区。その奥にはプライソンの本拠地の研究所がある。なんてことはない洞窟を入り口として、その奥には人工的に造られた空間が広がっている。施設は蟻の巣の如く地下へと伸びており、彼の製作した兵器の生産施設、格納庫、居住区などなどが幾つもある。そんな研究所の居住区の通路を、複数人の少女が歩いていた。
「いよいよっスね~。もうずっとワクワクしっぱなしで、早く暴れたいっスよ♪」
特徴的な語尾を使うウェンディ。
「おう! 廃棄都市区画で下手を打ったからな!」
言葉遣いが少々荒い、ボーイッシュなノーヴェ。
「うん。雪辱を果たす」
茶色い長髪をうなじ辺りで大きなリボンで結ったディエチ。
「そうね~。私の方も、レリックもプフェルトナーも回収できなかったし。今度こそはしっかりとこなさないとね♪」
薄紫色の長髪をポニーテールにしたクイント。彼女ら4人はプライソン一派であるチーム・シコラクスのメンバーだ。が、彼女たちの後ろにさらに3人の少女が居た。
「セッテ、オットー、ディード。今回の任務には、あなた達も出ることになると思うから」
「問題ありません」
ピンク色の長髪、額を護るヘッドギアを装着したセッテが、感情の薄い声でそう返す。
「僕も問題ありません。いつでも出撃できます」
バトルスーツの上に裾の短いショートジャケットとズボン、さらに起伏の乏しい体のラインと言うことでノーヴェ以上に見た目が少年のようだが、他のメンバーと変わらず少女であるオットーが続く。
「素体フレームおよび武装の調整も、昨日の内にガンマによって調整されましたから」
オットーと同じで目付きが少々ジトっとした、栗色の長髪をしたディードがそう締めた。彼女たちは先の廃棄都市区画戦時には、本格戦闘が出来るような状態ではない、未調整の体であったために参加できなかった。しかし明日12日、地上本部にて行われる公開意見陳述会の襲撃には間に合った。
「これでようやく、真のチーム・シコラクスになったわけっスね♪」
「これならどんな相手が来ても負けない」
「おう。セッテ、オットー、ディード、お前らも気張って行けよ」
「「はい。ノーヴェ姉様」」
ノーヴェがオットーとディードの背中を叩き、次いでセッテの背中を叩こうとしたが、彼女はスッと1歩分前進したことでノーヴェの1発を躱した。
「なんだよ・・・」
「私は仮にもあなたの姉。叩かれる謂れはない」
「気合を入れてやってんじゃねぇかよ。判んねぇかな~、このやり取りの良さがよ」
良かれと思っての行動を否定されたノーヴェは文句を言うと、「そうっスよ、セッテ。気合い注入は重要っスよ!」ウェンディが人差し指を立てて胸を張った。ゆえにノーヴェは「ほらな!」バシッとウェンディの背中に平手を1発。
「あいたー!? ちょっ、オットーやディードに比べて強すぎないっスか、ノーヴェ!?」
「そりゃまぁ、お前は肯定派なんだからいくだろ? 強くさ」
「うへ~。同じくらいが良かったっス・・・」
背中を擦りながら今度はウェンディが文句を言う。ノーヴェは構わずに「んじゃディエチも行っとくか!」次のターゲットをロックオン。ディエチは「あたしはいいよ」そう言って、背中を護るかのように体の向きを変えた。
「まぁそう言わずに、ディエチも1発貰うといいっスよ♪」
しかしウェンディがディエチの腰回りに抱きついてクルッと反転。ディエチの背中がノーヴェの方へ向いたことで、ノーヴェは即座に「気合い注入!」背中を叩いた。また結構力を込めたようで「いった!」ディエチは背中に両手を伸ばして痛がった。
「この馬鹿力・・・!」
「あっはっは! 良し、気合い注入も済んだし、プライソンのところに行こうぜ!」
満足したのか大手を振って歩き出すノーヴェだったが、彼女の背後に佇んだままのウェンディ達の目はどれもノーヴェの背中に向けられていた。ウェンディ達はそろそろと足音を殺してノーヴェの背後に忍び寄ると、一斉に利き手を振り上げた。クイントはその様子に口元を右手で押さえ、笑わないように堪えている。
「せぇ~のっス!」
ウェンディの掛け声で、彼女を含めたセッテ、オットー、ディエチ、ディードは振り被っていた利き手をノーヴェの背中に向けて振り下ろした。バッチーン!と、聞くだけで痛くなるような派手な音が通路に響き、「ぶえ!?」叩かれたノーヴェは痛がる前に前方へと吹っ飛び、「あべしっ!?」床を数回バウンド、さらにずざざーっと床を滑ってからようやく停止した。クイントもこうなるとは思わなかったのか「あらら」目を点にしていた。
「いってー! ふざけんな、マジで! いくらなんでも強過ぎんだろ、今の! つうか、誰だ、頭を叩いた奴は!」
後頭部や背中を擦りながらノーヴェはズンズンと足音を立てつつ戻って来て、「正直に答えろ!」問い質す。セッテ達は視線を逸らすことはなかったのだが、「ウェンディ!」だけが明後日の方を見たことで、ノーヴェも犯人が察したようだ。
「バレたっスか♪ でも吹っ飛ぶほど強烈な1発はあたしじゃないっスよ」
「ああ、そうだろうな。だが、頭を叩いた事実は消えねぇよ」
「えっ? 素直こそ美徳だってママりん言ってたっスよ? 素直に謝ったら許してくれるって!」
ジリジリと歩み寄って来るノーヴェから逃げるウェンディは、謝ったのに許してもらえないことに驚き、ママりん――クイントを見た。ウェンディ達の視線を受けたクイントは「あはは・・・」苦笑した後・・・
「こういう場合もあるよ♪」
ニコッと笑って見せた。そしてウェンディはノーヴェに捕まり、「いたたた!」ヘッドロックを受けた。ある程度ウェンディを懲らしめたノーヴェは次に「セッテ。お前、馬鹿力過ぎ」そう嘆息してセッテを見た。
「???」
「いやだからさ、あたしを吹っ飛ばしたのお前だろ? この中で一番の怪力はお前しか居ないんだからな」
ノーヴェの言うように、サイボーグ化手術を行われたメンバーで構成されたチーム・シコラクスの中で、セッテが一番の戦闘能力を有している。空戦ランクで言えばSランクに相当するほどだ。
「そうだった。すまない。許してくれると助かる」
小さくだが頭を下げて謝ったセッテに、「セッテもヘッドロックを食らうっスよ~♪」頭を抱えた涙目のウェンディが言い放つ。しかしノーヴェは「ああ」セッテの謝罪を受け入れて彼女を許した。
「うえええ!? ちょっと待ってほしいっス! なんであたしは血も涙も無いヘッドロックで、セッテは謝罪1発だけで許されるっスか!?」
「いやだってさ。おまえはわざとだろ、どうせ。だがセッテは力加減を間違えただけ。そうだろ?」
「ああ、間違えただけ」
コクリと頷くセッテを見て、ノーヴェが「ほらな」ウェンディへと目を移した。ウェンディが「な~んか納得いかないっス」膨れっ面になっていたところに・・・
「あら、クイントにみんな。そんなところで何をやっているの?」
女性の声が彼女たちの背後からした。クイント達は一斉に振り返る。そこに居たのは「メガーヌ」という名の女性と、「ルーテシア、リヴィア」という名の少女2人と、「アギト」という名の30cmほどの身長しかない少女1人だった。
「今から出発式でしょ。遅刻すると、スキュラの娘たちからまた顰蹙を貰っちゃうかも」
彼女たちの服装は、クイントを除くチーム・シコラクスのメンバー達のように統一されたバトルスーツではなく、それぞれ別の私服姿だ。メガーヌはネックラインがギャザード・ネックのTシャツ、ふくらはぎまでの長さがあるエプロンワンピース。ルーテシアは変わらずビスチェワンピースで、リヴィアは黒のノースリーブセーラー服、アギトはボーダー柄のTシャツの上にパーカー、ボンテージパンツ。ちなみにクイントの服装は、膝丈のタートルネックのワンピースにデニムジャケットだ。
「アイツら偉そうだよな~実際」
「確かにこの前のあたし達は任務をミスったけどさ、随分前だけどアルファだって片腕片足を吹っ飛ばされるミスだって犯してんのにさ。結局お咎め無しってなんだよそれ」
「そうっスよね~。まぁ、あたしらもお咎め無しだったから強くはツッコめないっスけど。ベータやデルタにイプシロンは仲良くしてくれるっスけど、アルファとガンマだけはあたしらのこと下に見てるって感じがありありとするっス」
「あ、ちょっと解る。プライソンも若干だけどあたし達とスキュラ連中に差を付けてるよね」
目的地であるプライソンの研究室へと再び歩き出しながらアギト、ノーヴェ、ウェンディ、ディエチの4人は、チーム・シコラクスと同じサイボーグ姉妹である“スキュラ”シリーズ、その長女であるアルファと三女であるガンマに対して不満を漏らした。
「クイントは何か思うところはある?」
ノーヴェ達のリーダーでありながら、母親としての役目も宛がわれているクイント。彼女の意見を伺おうとメガーヌが話を振った。
「まぁあの娘たちは、私たち家族の中で最も重要な役割を与えられているからしょうがない気もするかな~。でも私たちも、あの娘たちが動けない間を護衛するっていう重要な役割でもあるから、そこは尊重してほしいかもね」
クイントの意見は両方を尊重するものだった。プライソンの与えた両陣営のコンセプトがそもそも違う。チーム・シコラクスは“スキュラ”シリーズの護衛役および遊撃部隊として開発されたシリーズだ。プライソンにとっては替えの利く存在でしかない。
「けどゼータの死にはほとんど関心なかったよな、アイツら。マジで信じらんねぇ~」
「あたし達の誰かが死んでも、プライソンはやっぱり何と思わないんスかね~・・・」
「お母さんは、あたし達の誰かが死んでもやっぱり・・・?」
姉妹であるにも拘らず末っ子の死を悼むことすらしない“スキュラ”に対し、怒りや憐れみを通り越して恐怖を憶えるノーヴェ。ウェンディの言葉を聴いたディエチが前を往くクイントにそう訊ねる。
「もちろん悲しいわ。だからノーヴェ、ディエチ、ウェンディ、それにセッテ、オットー、ディード。約束して。任務はとても大事だけど、身の危険を感じたら撤退して。たとえ失敗しても生き残れば次がある。プライソンやスキュラの娘たちに怒られるかもしれないけど、それでもまずは生き残ること」
ディエチにそう答えた後、クイントはノーヴェ達へとそう伝えた。命を大事に、と。ノーヴェ達はそれぞれ「うんっ!」と首肯した。プライソンは生みの親、そう自覚していながらも彼女たちにとって重要なのは育ての親、クイントなのだ。
「遅い! 集合時刻の3分前に来るとはどういうつもり!?」
クイント達チーム・シコラクスと、メガーヌ達チーム・スキタリスが研究室に到着して即座に聞こえて来たのは、ブロンドのウェーブの掛かったロングヘアをした18歳ほどの少女・アルファの怒声だった。白のブラウス、赤いリボン、裾付近に白のラインが1本入った黒のプリーツスカート、オプションとして藍色のブレザーを着ている。
「遅刻じゃないだけマシじゃん」
「何か言った、アギト?」
「言ってな~い」
アルファにジロリと睨まれたアギトはぶっきらぼうにそう言いつつ、ルーテシアの頭の上に座り込んだ。ルーテシアとリヴィアが「恐かったね?」アギトを心配すると、「ベ、別に恐くなんかない」アギトがプイッと明後日の方へと目をやった。若干恐ろしかったらしい。
「明日からの大仕事では1分1秒の遅れが致命になるかもしれないというのに。そんなのでは困るから、きっちり時間を守れるように再調整を受けた方が――」
アルファがさらに文句を続けようとした時、「馬鹿を言え」彼女たちに背を向けて操作盤に展開されているキーボードのキーを打ち続けていた少年がそう言って、座っているデスクチェアをクルっと回して彼女たちへと体を向けた。
「再調整している暇などあるか」
見た目は9~12歳ほどの少年だが、実年齢は60歳を越えている。薄紫色の髪、瞳の色は黄金で釣り目。笑うと八重歯が光る。青いストライプが縦に描かれたYシャツ、蝶ネクタイ、黒ベスト、そして紫色のジュストコールを羽織っている。名をプライソン・スカリエッティ。史上最悪の科学者だ。
「ですがプライソン! 5分前行動すらちゃんと出来ないようでは・・・!」
「予定時刻を越えなかっただけで十分だ。・・・これで全員が集まったな」
脚を組んだプライソンが「さぁいよいよ宴会の前日だぞ、お前たち」そう言ってパチパチと拍手。アルファ達“スキュラ”も拍手をし始めたことで、スキタリスとシコラクスの両チームも倣って拍手を始める。
「管理世界の注目を一手に受ける公開意見陳述会。俺たちはそれを狙って、時空管理局に喧嘩を売る。俺たちは一夜にして次元世界の歴史に名を残せるわけだ。すでに悪名を得ている俺だが、さらに悪の名声が得られるわけだ。考えただけで興奮するな」
手振りでアルファら作品たちの拍手を止めたプライソンはニタリと凶悪な笑みを浮かべ、「アルファ。作戦の概要説明を」そう促した。アルファは「はい。作戦をおさらいするから忘れないようにね」と応じて一度咳払い。
「作戦開始は明日、9月12日。公開意見陳述会の終了予定時刻である19時ジャスト。警戒していながらも結局何も起きなかったと気が緩んだその瞬間。まずは・・・デルタ!」
「はーい♪」
オレンジ色をしたロングヘアをポニーテールにした12歳くらいの少女・デルタが大きく返事をした。白のブラウス、赤いリボン、裾付近に白のラインが1本入った黒のプリーツスカートという“スキュラ”シリーズ共通の衣服に、オプションとしてクリーム色のベストを着ている。
「それにベータ!」
「うん」
栗色のボブで、左目が前髪で隠した15歳ほどの少女・ベータが頷く。“スキュラ”の共通衣服に、オプションとして黒いセーターを腰に巻いている。
「お前たちは、宴の開始を告げるという大事な役目だ。20時ジャストに、地上本部にウォルカーヌスの一撃をド派手に撃ち込んでやれ」
「うん!」「はい!」
アルファではなくプライソンがベータとデルタにそう指示を出した。“ウォルカーヌス”。昔、第51管理世界ワイエルバキアにて起こった内戦に使用されたレールガンと同名だ。その製作者はプライソンであるため、地上本部に撃ち込むように言った“ウォルカーヌス”も、間違いなくレールガンであろう。
「イプシロン。あなたは、シームルグ、アンドラス、シャックス、マルファス、航空機戦隊を率いてレールガン・ウォルカーヌスより発射されたコンテナミサイル3種の護衛」
「イプシロンは任務を拝命しました」
青色のセミロングヘアで、額を大きく出した10歳ほどの少女・イプシロンが堅苦しい口調でそう応じた。“スキュラ”の共通衣服に、オプションとしてデフォルメされた猫と鼠のイラストが描かれた灰色のパーカーを着ている。
「ガンマ・・・は、もう言わずとも判っているだろうから省略」
この場に唯一集合していない次女ガンマにアルファは諦観して、彼女の担当する作戦の概要説明をスルー。次に「チーム・シコラクス」の概要説明となる。
「01クイント、02ノーヴェ、03ディエチ、04ウェンディ。あなた達4人は、中央区画随所に建造されている砲台アインヘリヤルの破壊を任せる」
大きめのモニターが宙に展開され、破壊ターゲットであるアインヘリヤルと呼ばれる砲台が表示された。回転砲塔式の三連装砲の砲台で、一個武装隊が直掩として周囲を固めている。
「馬鹿の一つ覚えの如く平和と正義を謳うレジアス・ゲイズが、生意気にも俺とは別口で依頼して造っていた兵器だ。純粋な魔力砲とは言え、その出力はかなり高い。下手に俺の作品に手を出されても面倒だからな。グレムリンと共に徹底的に叩け」
「「「はい」」」」「おう」「はいっス」
「05セッテ、06オットー、07ディード。空戦の出来るあなた達3人は、航空機戦隊と共にコンテナミサイルの護衛および航空武装隊の迎撃ね」
「了解」「「はい」」
「最後に、チーム・スキタリス。01メガーヌ、02ルーテシア、03リヴィア、04アギト。あなた達は機動六課の隊舎を襲撃。プリンツェッスィンとプフェルトナーの回収を最優先に」
「ええ」「「ん」」「あいよ」
「機動六課にはとんでもなく面倒な奴が居るが、リアンシェルトが内務調査官に指名しているから戦力にはならんだろう。最高評議会のクソジジイ共からも脅しを掛けられているから、ルシリオンもそう簡単にはルールを破るとも思えん」
プライソンもルシリオンについては一応の警戒はしているようだ。メガーヌが「万が一、その調査官がルールを破って戦力になったらどうするの?」そう訊ねると、プライソンは「その時は、奴を目覚めさす」ニヤリと笑った。
「これで以上ね」
アルファが満足そうに締めたが、ノーヴェが「おい、アルファ。アンタはどうすんだ?」そう訊いた。“スキュラ”の中でアルファの名前だけが作戦概要に出て来なかったからだ。
「私? 私はアンドレアルフス担当だから、本作戦には参加しないの」
そう答えるアルファの瞳は一段と強く銀色の輝きを発していた。
「お前たち、各々の役目は再確認したな? 俺はこの日をずっと待ちわびていた。俺の誕生から幾年、ずっと思い描いていた舞台だ。だから俺の悲願をお前たちが叶えろ。期待しているぞ」
本当に待ち遠しかったのか、プライソンの表情は輝いている。そして彼はデスクチェアより立ち上がり・・・
「さぁ世界に喧嘩を売りに行こうか」
人知れずに宣戦布告をした。
†††Sideはやて†††
「いよいよ明日、地上本部にて公開意見陳述会が開かれる。開会時刻の14時に備えて、もう警備が始まってる。会場となる地上本部の警備には、私たち機動六課も参加することになってるから、なのは隊長とヴィータ副隊長、リイン曹長、フォワード4名、そんでギンガが先発組となって、これから出発や」
「みんな、初めての夜勤シフトになるけど・・・、ちゃんと眠れた?」
「「「「はいっ!」」」」
フェイトちゃんに対して元気よく返事をしたフォワードのスバルとティアナとエリオとキャロ。夜勤シフトは慣れてへんとホンマに辛いからな~。ギンガは局員歴が長いから夜勤ももう慣れてるやろ。
「私とフェイト隊長とシグナム副隊長は明日の早朝に本部入りになるから。それまではよろしくな」
とゆうわけで、私たちは先発組の出発を見送るために隊舎の裏にあるヘリポートへ移動。私は「ヴィータ、リイン。気ぃ付けてな」ヘリに乗り込もうとする2人に声を掛ける。
「おう!」「はいです!」
ヴィータとリインと手を振り合って見送り、「ヴァイス君。よろしくな」ヘリのパイロットのヴァイス君にも声を掛けると、「うっす、お任せを!」親指を立てて応えてくれた。
「あれ、ヴィヴィオ?」
搭乗口の方を見ると、ヴィヴィオと寮母のアイナさんが居った。なのはちゃんは「どうしたの、ここは危ないよ?」って、ヴィヴィオの元まで戻ってく。
「ごめんなさいね、なのは隊長。一応止めはしたんだけど、どうしてもママのお見送りをするんだって」
「そうですか。・・・ありがとう、ヴィヴィオ。でもダメだよ、アイナさんに我がまま言っちゃ・・・」
「あぅ・・・ごめんなさい」
ちょっぴり叱られてしもうたヴィヴィオはしょんぼりすると、「待って、なのは。なのはが夜勤でお出掛けって、今回が初めてだから不安なんだよ・・・」フェイトちゃんがそう言うた。
「あ、そうか。・・・なのはママ、今夜はお出掛けで一緒に居られないけど、明日の夜には帰って来るから。そしたらまた一緒に寝ようね♪」
「ぜったい・・・? あした、ちゃんと帰ってくる?」
「もちろん! じゃあ約束。指切りをしよう。ヴィヴィオが良い子で待ってくれてたら、ヴィヴィオの大好きなキャラメルミルク、作ってあげるから♪」
「うん」
なのはちゃんとヴィヴィオは指切りをした。名残惜しそうに別れるなのはちゃんとヴィヴィオに続いて、ヴィータ達もヘリに乗り込んだ。そんで私らは空へと飛び去ってくヘリを見送った。
それから終業時間まで通常勤務して、「よし。ご飯にしよか」食堂へ。そこで「はやてちゃんもこれから?」すずかちゃんと、「あたし達もなのよ」アリサちゃんと合流。
「うん。一緒にどうや?」
「「もちろん♪」」
食堂の受け取りカウンターでご飯一式を受け取って、空いてるテーブルに着く。そんで「いただきます」挨拶。そんで食事をしながら、明日について2人に改めてお願いする。
「私たちが隊舎を空けてる間、すずかちゃんとアリサちゃんが頼りになる。プライソンはきっとヴィヴィオとフォルセティを狙ってくるやろう」
「でしょうね。話には聞いてるけど、2人はプライソン一派にとって重要な存在らしいし」
「でも大丈夫だよ、はやてちゃん。アイリやシャマル先生、ザフィーラも一緒だから。きっと大丈夫だよ」
「うん。そうやな」
すずかちゃんとアリサちゃんは、たとえブーストなんて無くても十分過ぎるほどに強いしな。それにシャマル達だって負けてへん。
「つか、地上本部だって結構まずいわよ? 壊滅するっていうような預言食らってんだし」
「そうだよ。そこが心配」
「おおきにな。そやけど、地上本部の周辺にはシャルちゃんを筆頭に高ランク騎士、それに本局からの応援部隊も展開される。結構安全な方やと思うよ」
まぁそれでも余裕とゆうわけやないけどな。それから私たちは食事を終えて、一緒にお風呂へ。すずかちゃんやアリサちゃんと一緒に入るんやけど、ホンマにすごいんよ。何がって? こう・・・ボーンと飛び出る大きな果実、みたいな。すずかちゃんは元学校組の中で一番のスタイルやからね。同じ女の子でも魅了されるわ~。
「お邪魔~♪」
「お邪魔しますね~」
すずかちゃんとアリサちゃんの大きくて柔らかな胸を堪能し終えたところで、「お疲れ様、シャマル、アイリ」とも合流。髪や体を洗い始めるアイリに「今日はフォルセティとは一緒やないんやね」そう訊く。するとアイリは・・・
「フォ~ルっセティ~~❤」
女風呂と隣接してる男風呂の方へ向かってフォルセティの名前を呼ぶと、「な~に~?」返答が来た。続けて「今、何やってるの~?」って訊くと、「パパに髪の毛あらってもらってる~♪」また返答が、しかも弾んだ声で返ってきた。
「というわけだね」
「なるほど。今日はルシル君と入ってるんやね~」
「そうなんだよね。一緒にお風呂に入ろうって思ったんだけど、ルシルが先に連れて行っちゃった」
「そうなんか~。それは残念やな~」
ルシル君がお風呂に入るのが遅くなるような時は、アイリがフォルセティを連れてお風呂に入ることがある。もちろんアイリが男風呂に入るのはアウトやから、フォルセティを女風呂に入れることになるわけや。
「あの一丁前に恥ずかしがる顔が堪らへんよな~♪」
「だよね~♪ 色んなところがちっちゃくて可愛いのに、羞恥心だけはちゃんと持っててね~♪」
アイリとフォルセティのリアクションの可愛さ談義してると、「アンタ達ね・・・」アリサちゃんが呆れて、「フォルセティが可哀想だよ」すずかちゃんがちょっぴり非難。
「そやけどな~」
「あの可愛さからしてやめられないよね~?」
こんなんでも私とアイリは、フォルセティのことを心から愛してるんよ。まぁ若干歪んでるってゆうのも自覚ありやけど。それから男湯のフォルセティを交えてお喋りしながらのんびり体を温める。
「ママ~、アイリおねえちゃ~ん! 僕とパパ、もう出るね~!」
「「はーい!」」
フォルセティから知らされると、「アイリも出よう~っと♪ お先にね~」アイリが湯船から出る。ルシル君、フォルセティと合流するためやろうな。となれば・・・
「すずかちゃん、アリサちゃん。私もお先に出るな」
「はーい」「あいよ~」
私も一緒に湯船を、そんで浴室から出て脱衣所でパジャマに着替える。そんで脱衣所直通で行けるランドリーで洗濯物を洗濯機に入れてスイッチオン。終わったら自分で干しても良し、寮母さんに任せてもOK。
「あ、ママ、アイリおねえちゃん!」
男性専用のランドリーの前に居ったパジャマ姿のフォルセティが駆け寄って来た。遅れてランドリーから出て来たパジャマ姿のルシル君。うん、良いタイミングやったな。
「フォルセティ~♪」
「?・・・ママ、いいにおいがする」
フォルセティを抱っこするとそう言うてくれたから「石鹸の香りかな~」そう返す。
「ねえねえ、フォルセティ。アイリはどう?」
アイリが私とフォルセティの側に来てそう訊くと、フォルセティはアイリに顔を近づけて匂いを嗅いで、「うん! いいにおい!」笑顔でそう答えた。
「ありがとう~♪ んじゃ部屋に行こうか、フォルセティ。湯冷めしちゃうといけないし」
「うん。ママ、おやすみなさい」
とのことやけど、正直フォルセティを放したない。ヴィータとリインも今日は居らへんし、「なあ、フォルセティ。今日はママと一緒に寝ぇへん?」そう訊いてみた。するとフォルセティは「いいの!?」満面の笑みを浮かべてくれた。フォルセティが六課に来てから、正式に養子として引き取ってから今日まで、一緒に寝たことなかったからな。
「うん。今日は一緒に寝てるヴィータが居らへんから、ベッドが空いてるんよ。そうゆうわけで、ええかな? アイリ・・・ルシル君」
「フォルセティがそれで良いなら、アイリは良いよ」
「ああ。私も、フォルセティがそうしたいなら構わないよ」
「おおきにな♪」
ルシル君とアイリからも許可を貰ったことで早速部屋に行くために階段を上がる。そんで「おやすみ、フォルセティ、はやて」ルシル君と、「また明日ね~」アイリの2人と、2階の踊り場で別れることになったところで・・・
「パパとアイリおねえちゃんは一緒じゃないの?」
フォルセティが悲しげな声を漏らした。ルシル君は「また明日、一緒に寝ような」そう言うてフォルセティの頭を撫でるんやけど、その表情は晴れへんかった。そやから私は「ルシル君・・・」意を決した。
「ルシル君さえ良ければ、私やフォルセティと一緒に寝て・・・くれる?」
自分の顔や耳が熱くなるんを自覚しながらそうお願いしてみた。目を点にしてるルシル君は「え、あ、いや・・・」珍しく動揺した。隣に居るアイリが「親子、親子♪」そう言いながら、ルシル君の脇腹を肘でツンツン小突く。
「パパ・・・」
「ぅぐ・・・」
「ルシル君・・・」
「あー・・・」
「今日くらいはね~・・・」
「おー・・・」
私とフォルセティとアイリから視線を受けたルシル君は少し悩んだ後、「判った。一緒に寝よう」とうとう折れた。ルシル君と一緒のベッドで眠る。10年くらい前にたった一度だけの経験を思い出して、さらに全身が熱くなるのが判った。
「アイリは~、リインのお出かけバッグとパジャマを借りよう~っと」
とゆうわけで、男子禁制の3階へ上がって、私とヴィータとリインの自室へ。
「どうぞ~」
「失礼します」「お邪魔しま~す♪」
まずは私と、抱っこしてるフォルセティが部屋に入ってから、ルシル君とアイリを招き入れる。アイリは早速「フェーフォルム」本来の姿に戻って、私が用意したリインのパジャマに着替える。そんで・・・
「パパはこっち、ママはこっち♪」
フォルセティを真ん中に、私は左隣、ルシル君は右隣の川の字でベッドに入った。フォルセティを間に挟んでると言うてもやっぱりドッキドキや。
「えへへ~、パパとママといっしょ、嬉しいな~♪」
ホンマに嬉しそうなフォルセティの様子に、もっと早くから一緒に寝てあげれば良かったって後悔。フォルセティの方を見ると、「あ・・・」ルシル君と目が合うた。なんかホンマに親子になったような感じがして照れくさい。そやけど、やっぱり嬉しいとゆうか、すっごく幸せを感じてる。
「おやすみ、フォルセティ、ルシル君❤」
「おやすみ、フォルセティ、はやて」
「おやすみ、パパ、ママ!」
笑顔で挨拶を交わす。
「アイリにもおやすみをプリーズ!」
「「「あはは!」」」
今の時間を出来れば永遠にしたいな。そう思える瞬間やった。
後書き
ドブロ・ユートロ。 ドベル・ダン。 ドベル・ヴェチェル。
公開意見陳述会に向けて、プライソン一派も本格的に動き出した今話。
アニメでのセッテって、ほとんどトーレと一緒で妹達との絡みが全くないので、どんな口調になり、どう名前を呼ぶのか、そういうのがサッパリでした。事件後もスカレッティ達と一緒に拘置所送りで、その後のVividやForceにも登場しませんし。ですので、セッテの結構ブレる可能性があります。なんて難しい娘だ。
後半は、久しぶりのはやてとルシルのイチャイチャ?というレベルでもないですが、ちょっと恥ずかしい話になってしまいました。はやての恋はどうなってしまうんでしょうね~・・・。
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