| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

しゃっくり

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「相変わらず太り過ぎだな」
「漫画のキャラに似てますね」
「十九号だよな」
 徹也は洋平にこう返した。
「あの漫画のな」
「はい、そっくりですよね」
「それネットでも話題になってたな」
「何ていいますか」
 あらためて言う洋平だった。
「この一族代々太ってるみたいですね」
「祖父様がそもそもな」
 初代からとだ、徹也は洋平に答えた。ミルクティーを飲みつつ。
「太っててな」
「それで親父さんもですよね」
「太っててな」
「今の将軍様もですね」
「国民は餓えてるのにな」
 それでもというのだ。
「自分達は、だよ」
「肥満してますね」
「成人病にもなってるらしいな」
 肥満が過ぎてだ。
「どうもな」
「国民は餓えてて自分は、ですか」
「酷い話だな」
「全くですね、それで今の将軍様は顔はましですが」
 こうも言った洋平だった。
「ですが」
「ですが?」
「前の将軍様は」
「ああ、不細工だってか」
「本人ここにいないから言いますけれど」
「それあっちの国で言ったら大変だぞ」
 不敬罪だのとみなされてだ。
「即刻粛清だぞ」
「やっぱりそうなりますね」
「ああ、実際に言ったらな」
 その国でだ。
「死ぬぞ」
「そうなりますね、それに本人もう故人ですし」
「そうだな」
「けれどあの顔で、です」
 前の将軍様のそれで、というのだ。
「夜道急に出られたら怖いですね」
「ああ、そうだな」
「どっかの尊師と同じだけ」
 あるカルト宗教のだ。
「怖いですね」
「それもな」
 徹也は調子に乗ってさらに言った。
「尊師と一緒にとかな」
「ああ、それ最強ですね」
「夜道に横からな」
「にゅっと出て来たら」
「気絶するな」
「交番に出たら逮捕されそうですね」
「犯罪やってなくてもな」
 不審者としてだ。
「妖怪より怖いな」
「絶対にそうですね」
「前の将軍様は本当にな」
「そんな顔でしたね」
 今の将軍様、三代目を観ての言葉だ。世襲制の共産主義という有り得ないシステムの国家の国家元首を。
 徹也はこの話からだ、思いついた。それで店員達を妻がいない時に集めてそのうえで言うのだった。
「ちょっとメイクしてくれるか?」
「メイク?」
「メイクっていいますと」
「ああ、全員でな」
 店員達全員でというのだ。
「うちのかみさんが店に来た時にな」
「奥さんしゃっくり止まらないですね」
「奥さん自身困ってますよね」
「どうしても止まらなくて」
「それで」
「それを何とかする為にな」 
 だからこそというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧