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クローンといえど

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第四章

「それは」
「しかし教育次第でだよ」
「彼等もそうなりますか」
「そう、教育は凄いね」
「教育次第でどうでもなるんですね」
「ヒトラーやスターリンはどうして創られたのか」
 悪名高き血塗られた独裁者達はというのだ。
「環境だからな」
「独裁者も最初から独裁者じゃない」
「そうではないかね?」
「そういえばスターリンも最初は普通の神学校の少年でしたね」
 ここで山村はこの独裁者のことを思い出した。
「父親に虐待されていた」
「学校でも教師から殴られていた」
「それで共産主義に触れてああなった」
「そう、ヒトラーにしても」
 博士はこの独裁者に言及した。
「最初はどうだったか」
「はい、彼も父親に虐待されていたとか」
「そして人種的な偏見を何処からか受けた」
 何故ヒトラーが人種主義者になったかについては諸説ある。
「そうしてだったね」
「独裁者も普通の環境ならですね」
「普通の人になるからね」
「だからですか」
「そう、教育次第なのだよ」
「そうなんですか」
「そうだよ」 
 まさにというのだ。
「私が実験した通りにね」
「まさか博士は」
「前から考えていたのだよ、人は最初から邪悪なのか」
「邪悪とされる人物も」
「そう考えていてね」
「それで彼等のクローンを創ってみて、ですか」
「実験をしてみたのだよ」 
 独裁者のクローン達を生み出して彼などに聖職者の教育を施してみたというのだ。
「そうしたらその通りだった」
「成程、そうですか」
「いや、いいことがわかった」
 自分で納得している言葉だった。
「ではこのことを学会に発表しようか」
「人は誰でも最初は真っ白である」
「環境、教育次第で誰でも大きく変わるとね」
「ううん、クローン技術を使ったことはともかくとして」
 人道的に色々と言われているそれをというのだ。 
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