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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十九話 歴史の資料その十三

 けれどだ、話はここからが本番だった。何しろここまでのお話は海軍さんのことであり陸軍さんのことではないからだ。
「しかし陸軍さんではです」
「森鴎外さんが軍医総監よね」
「軍医の中でも強い発言権がありました」
「それで鴎外さんがなの」
「海軍の発見を全否定しました」
 脚気は食事に原因があるそれをだ。
「完全に、脚気菌があると主張して」
「細菌ね」
「そうです、何しろドイツで細菌学を学んだ人なので」
「だからそう思ってなの」
「陸軍では白米のままでした」
 脚気は伝染病と考えられてだ。
「日清日露両戦争の間」
「死んだ人多かったわね」
「はい」
 一言で怖い返事が返ってきた。
「そうなりました」
「やっぱりね」
「その犠牲は戦死者に次ぐものでした」
「大変ね」
「最後は陸軍の上層部も麦御飯を導入した程です」
 森鴎外の主張を無視してまでだ。
「そうした方でした」
「鴎外の評価落ちたわ」
 日菜子さんはここまで聞いて言った。
「本当にね」
「そうですか」
「というか人間として最低?」
「そうかも知れません」
「夏目漱石も問題あったらしいわね」
 日菜子さんはもう一人の文豪の名前をここで出した。
「被害妄想でヒス持ちでDV男だったのよね」
「その様ですね」
「自分の息子さんステッキで殴り回したらしいから」
「ご長男の方を」
「しかもおっちょこちょいで」
「ですが誰も犠牲にしていませんね」
 被害妄想で癇癪持ちで軽率なところもあって尚且つ自分の子供にDVを行う様な問題だらけの人でもである。
「漱石は」
「そうよね」
「しかし森鴎外は犠牲にしています」
「そこが大きな違いなのね」
「そうです」
 まさにというのだ。
「確かに息子さんへの虐待は酷いですが」
「あれで漱石って最低って思ったけれど」
「犠牲にはしていないので」
「鴎外の方が酷いのね」
「私はそう思います」
「そうよね、というか名作書いていてもね」
 鴎外然り漱石然りだ、作品は名作でもだ。
「それでもね」
「人として立派かどうかは別ですね」
「そうよね、本当に」
「ただ、人格が立派に越したことはないですね」
「何につけてもね」
「作品と人格は別でも」 
 小説家はいい作品を書いて残すことに価値があることは事実でもだ、人としては人格が優れているに越したことはないということだ。
「それに尽きますね」
「全く以てね」
「軍人さんも同じですね」
「やっぱり勝って目的を達成しないといけないけれどね」
「人格がよければです」
「その方がいいわね」
「幾ら戦争に強くても悪いことばかりしている人はです」
 早百合さんも言う。
「問題がありますので」
「特に軍人さんはそうよね」
「優秀でも悪いことをする人は駄目ですね」
「武器持ってるしね」
 そして軍隊も率いるからだ。
「そうしたことも考えるとね」
「いい人の方がいいですね」
「全くよね」
 二人でそんな話をしていた、そして僕も思った。 
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