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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第70話「仮初の紫天」

 
前書き
再現と言っても、原作キャラだと苦戦する相手ばかり出てきます。
一対一で勝てる原作キャラはいません。再現される相手が強いのばかりなので。
(逆に言えば再現される相手によればクロノやなのは辺りなら勝てる)
 

 








       =out side=





「ここは...。」

「さっきと変わんねー...けど、違うな。」

 結界に突入したなのは達は、ノイズ混じりの光景に驚く。

「ちっ、気持ちわりー。早く封印して出ようぜ。」

「うん。...でも、ジュエルシードはどこに...。」

 ヴィータの言葉になのはが頷き、辺りを見回す。

「...なのは、アレ....。」

「あれは...。」

 そこで、遠くに何かが浮かんでいるのを見つける。

「レイジングハート、わかる?」

〈...Apparently, it seems to be a girl.(どうやら、少女のようです。)

「女の子...?」

 レイジングハートを介した映像を見て、なのは首を傾げる。
 そこに佇んでいるのは、白と紫を基調とした服に身を包み、赤黒い翼のようなものに包まれているなのは達と同じくらいの金髪の少女だった。

「...あの感じ...なのは、アレはジュエルシードだよ...。」

「...うん。少し、どうしてここにいるのかな?って思ったけど、この感じはよく知っているよ...。」

 ジュエルシードが発するプレッシャーのような魔力を感じ、なのははあれがジュエルシードが再現した姿だと確信する。

「...まだこっちに気づいてねーみたいだな。」

「...不意を突くべきか。」

 なるべく早く戦闘を終わらせたいシグナムとヴィータは、冷静に初手を考える。

「おいなのは、お前の長距離砲撃で瞬殺してやれ。」

「え、ええっ?...いいのかなぁ...?」

「気づいてねーんだから好都合なんだよ。どうせアレには理性がねぇ。なら、不意打ちの一発で終わらせた方が他の所にも行けて手っ取り早いんだよ。」

 なんとなく不意打ちというのに気が引けるなのはに、ヴィータはそういう。

「う、うん。そうだよね...。よし...。」

「特大のをぶちかましてやれ!」

 レイジングハートを構え、なのはは暴走体に向けて魔力を溜める。

「....“ハイペリオンスマッシャー”!!」

 そして砲撃を放ち、暴走体に命中させる。

「.....おいおい、マジかよ...。」

「これは....。」

 しかし、命中したものの、シグナムとヴィータの表情は晴れない。

「...なのは...。」

「嘘....私、手を抜いた訳じゃないのに....。」

 命中はした。しかし、当の暴走体は、防御魔法と翼を使い、受け止めていた。

「なんて防御力...!」

「っていうか、気づいていてこっちを無視してたみてぇだな...。」

 そう。ヴィータの言う通り、暴走体はなのは達に気づいていた。
 だが、手を出さない限り反撃する事はなかったのだ。

「...誰かを再現する。そう聞いたはずだが...。」

「あんなの、私たちは知らない...!」

 再現している姿...ユーリの事を、なのは達は忘れている。
 だからこそ、驚きも大きかった。

「やべぇぞ、なのはの魔法を防ぐってんなら、相当な相手だ...!....行動される前に、ぶっ潰す!!」

「待て!ヴィータ!」

 ゆっくりと動き出す暴走体に向かって、ヴィータはカートリッジを使用して一気に加速し、接近する。

「“ラケーテンハンマー”!!」

 シグナムの制止も聞かず、加速して遠心力を乗せたハンマーを暴走体へと叩き込む。

「なっ....!?」

 しかし、その一撃は暴走体の翼...魄翼を固める事によって防がれてしまう。

「ヴィータ!」

 すかさず動きの速いフェイトが援護のために後ろに回り込み、斬りかかる。
 しかし、それも魄翼によって防がれる。

「堅い...!」

「はぁっ!」

 さらにシグナムが斬りかかり、“防ぐ”という動作をさせる事で隙を作る。
 そしてすぐさま三人は飛び退き、そこへなのはの魔力弾が殺到する。

「...あたしのハンマーが通じないなんて...。」

「先走るなヴィータ。...どうやら、想像以上の相手のようだ。」

「...ああ。」

 やはりといった形で、無傷でそこに佇む暴走体。
 その事実に四人は一層警戒を高めた。

「四人で入ったのは正解だったな。...あれはそれほどの相手だ。」

「隙を突くか作るかしないと、ほとんどの攻撃は通じない...。」

「その通りだ。テスタロッサ。それほどあの“翼”と障壁は堅い。」

 なんとなく、封印された記憶の名残から魄翼を“翼”だと仮定するシグナム。

「封印するには余程の威力じゃないとダメ....だよね。」

「だとすりゃあ、この中で最も適任なのは...。」

 シグナム、ヴィータ、フェイトの視線がなのはに集中する。

「....私?」

「私たちで隙を作って、なのはが砲撃で封印っていうのが一番いいからね。」

「あの悪魔みてーな全力砲撃ならアレもさすがに倒せんだろ。」

 実際に砲撃を何度も放たれたフェイトとヴィータがそういう。

「あくっ...!?ヴィータちゃん!?」

「別にいーだろ。こんな言い方でも。」

 案外的を射ている言い方なので、それで言い返せなくなるなのは。

「悠長に話している時間はなさそうだぞ。」

「え?...っ!?」

 シグナムの忠告の直後、なのは達がいた場所に魄翼の爪が振るわれる。
 それを咄嗟になのは達は躱す。

「私とヴィータで相手をする!テスタロッサはそこへ隙を作るように援護を!なのはは援護射撃をしつつ、いつでも砲撃魔法を使えるようにしてくれ!」

「「「了解!!」」」

 シグナムがそう言い、各々のポジションに三人は就く。

「(とはいえ、未だに相手の出方は分からん。それによっては動きを変える必要があるかもな...。まぁ、ともかく今は...!)」

 隣に立つヴィータと目配せをし、シグナムは暴走体に斬りかかる。

「はぁっ!」

     ギィイン!

「でりゃぁっ!」

     バチィイッ!

 振るわれる剣と槌を、暴走体は魄翼で受け止める。

「(やはり、普通の攻撃では通りそうにない...か。)」

「(だけど....!)」

 すかさず背後に回ったフェイトがバルディッシュで一閃を繰り出す。

     ギィイイン!

「っ...!」

 ...が、それも魄翼によって防がれてしまう。

「なるほど。反応はなかなかに早い。」

「けど、あたし達を忘れるな!」

 しかし、その瞬間に懐に入り込むようにシグナムとヴィータが挟撃を仕掛ける。

「はぁあああっ!」

「でりゃぁあああ!!」

 先程よりも強力な一撃。だが、それも魄翼によって防がれる。

「“アークセイバー”!!」

 それを見越し、フェイトは魔力を込め、斬撃を飛ばす。

「使わせんぞ!」

 魄翼で防がれる前にシグナムは行動を起こし、蛇腹剣のようになったシュランゲフォルムで魄翼を絡めとるように巻き付ける。
 魔力の塊のようで実体がないが、それでも効果はあったらしく、魄翼の動きが鈍る。
 そして、フェイトの魔法が直撃した。

「ぬっ...!...やったか?」

「いや、まだだ!」

 レヴァンテインが弾かれつつも、シグナムがそう呟くが、ヴィータが否定する。
 事実、その通りだった。防御魔法が張られており、暴走体は無傷でそこにいた。

「ちぃ...!っ!!」

     ッギィイイン!!

「なっ...!?危ねぇ!?」

 悔しがるシグナムに魄翼が振るわれ、それを防いだもののシグナムは吹き飛ばされる。
 ヴィータにも振るわれていたが、そちらは間一髪躱していた。

「っ...!“プラズマランサー”、ファイア!!」

「“アクセルシューター”、シュート!!」

 その魄翼を止めるため、フェイトとなのはが魔力弾を放つ。
 それらは魄翼にきっちり命中し、何とか動きを阻害させる。

「かっ飛ばせぇええええ!!」

     ガッ、ギィイイン!!

 そこへさらにヴィータがグラーフアイゼンでかちあげる。
 全力で一部分を叩いたため、かちあげに成功し、そのまま一回転して本体も狙う。

     ドドドォオン!!

「でりゃああああっ!!」

 なのはの援護射撃により隙を広げ、そのままヴィータは攻撃を繰り出す。
 ...が、それはまたもや防御魔法に防がれる。

「ちっ...。“翼”は突破できても、防御がかてぇな...。」

 反撃の魄翼を躱し、ヴィータはそう呟く。

「...無事か?シグナム。」

「ああ。防御はできていたからな。」

 そこへ吹き飛ばされていたシグナムが舞い戻ってくる。
 攻撃自体は完全に防いでいたので、大したダメージはなかった。

「「っ....!」」

     ギギィイン!ギギギィイン!!

 休む暇もなく、暴走体は魄翼による攻撃を繰り出す。
 それをシグナムは逸らし、ヴィータは躱して凌いでいく。
 要所要所でなのはやフェイトの援護も入り、徐々に動きに慣れていく。

「はぁっ!」

「でりゃあっ!」

 動きに慣れてきたのもあり、シグナムとヴィータは反撃の一撃を繰り出す。
 魄翼を躱してから放たれた一撃は、暴走体に防御魔法を使わせた。

「っ...!今っ!」

「“エクセリオンバスター”!!」

 そこへフェイトが射撃魔法で魄翼を妨害し、シグナムとヴィータが飛び退いた所へなのはが強力な砲撃魔法を繰り出した。

「通った...!...けど、浅い!」

「ちっ、もっと強力なのをぶちこまねーとダメみてぇだな!」

 確かに防御魔法を貫通し、暴走体へダメージを与えた。
 しかし、それだけでは足りず、少し焦げたものの暴走体は魄翼を振り回した。

「っ、避けて!」

「なっ...!?」

「なんて量の弾幕...!なのは以上かよ!」

 咄嗟にフェイトが叫んだ瞬間、至近距離のシグナムとヴィータが暴走体が放った魔力弾の雨に見舞われてしまう。
 辛うじて回避が間に合った二人は、その魔力弾の多さに戦慄する。

「フェイトちゃん!」

「うん!相殺する...!」

 すぐさまなのはが魔力弾を放ち、シグナムとヴィータを襲う魔力弾を相殺する。
 シグナムとヴィータがその場から離れた所へ、フェイトが砲撃魔法を繰り出す。

「“プラズマスマッシャー”!!」

「今だ!」

 砲撃魔法が炸裂し、魔力弾の回避が容易くなった所で、再びシグナムとヴィータは突撃する。

「“ラケーテンハンマー”!!」

 ヴィータのハンマーが魄翼を打ち破る。

「一刀にて斬り伏せる!“アォフブリッツェン”!!」

 そこへシグナムの一閃が叩き込まれ、防御魔法を削る。

「撃ち抜け、雷神!」

〈“Jet Zamber(ジェットザンバー)”〉

 さらにフェイトの魔力の刃が炸裂し、防御魔法を破り切った。
 そして、なのはがそのまま砲撃魔法を撃とうとして...。

「なっ...!?」

「バインド...!」

 シグナムがバインドに捕まってしまう。
 その事で一瞬全員の動作が遅れ、結果的にチャンスを逃してしまう。

   ―――“ジャベリンバッシュ”

「させる、かぁあああ!!」

 投げつけられる魄翼による槍を、ヴィータが庇うように弾く。
 だが、まだバインドは解けていなく、このまま庇い続ける事になってしまう。

「ちっ....フェイト!シグナムは任せる!あたしとなのはで時間を稼ぐ!」

「わ、わかった!」

 その場に立ち止まるのは愚策だと思い、ヴィータはシグナムの事をフェイトに任せ、援護であるなのはと共に暴走体の相手をして時間を稼ぐ事にした。

「でりゃぁあああああ!!」

 ヒット&アウェイを繰り返し、暴走体に魄翼で防がせる。
 ダメージは一切通じないものの、それによってヴィータはシグナム達から離れる。

「(ありえねぇ堅さに、ありえねぇ程の弾幕...。...堅さと射撃魔法に至っては、なのはの完全上位互換じゃねぇか...!それに、あの“翼”の事も考えると、反撃も馬鹿にならねぇ...。...落ち着いて解析してみりゃ、中々厄介な相手じゃねぇか...!)」

 魄翼を躱し、時間を稼ぐ程度に反撃を繰り出すヴィータは、そう心の中で呟く。
 時間を稼ぐため、躱すのに専念ができるため、改めて落ち着いて解析できたのだ。

「(だけど、何度か防御魔法を破ってはいる。闇の書の障壁程度か。...なら、まだ勝機はある!)」

     ギィイイン!!

 なのはの援護射撃と組み合わせ、防御魔法の上からヴィータは攻撃を繰り出す。
 完全に防がれてしまったが、時間稼ぎはこれで完了した。

「すまない。待たせた。」

「いいや、大した事ねぇ。...だけど、本気を出すつもりらしいぜ?」

 そう、暴走体はまだ本気を出していなかった。
 何度か防御魔法を破られ、再び四人が揃ったため、暴走体はついに本気を出し始めた。

「...赤く染まった...?」

「...おいおい、これ、再現だろ?...なのに、なんてプレッシャーだ...!」

 暴走体の装束が赤く染まる....“白兵戦モード”に、なのは達は全員警戒を高める。
 再現...つまり、偽物なはずなのに、それほどまでにプレッシャーがあったからだ。

「っ....!」

     ギィイイン!

「っぁ...!がっ...!?」

 さっきまでのような受け身のような戦い方と違い、暴走体は攻めてきた。
 魄翼を大きく振りかぶり、シグナムへと振るう。
 シグナムは魄翼自体は受け流せたが、追撃の攻撃を防ぎきれずに喰らってしまう。

「てめっ...!」

「ヴィータちゃん!」

 その事にヴィータが怒り、手を出そうとして...先に攻撃を仕掛けられる。
 咄嗟にグラーフアイゼンで受け止めようとして、横からのなのはの砲撃に助けられる。

「せぁっ...!」

 すかさずフェイトがバルディッシュで斬りかかり、気を引く。
 四人の中で最も速いフェイトの動きであれば、魄翼の攻撃を躱す事も可能だった。

「なのははシグナムの所に行ってくれ!あたしとフェイトで凌いでおく!」

「わ、わかった!やられないでね!」

 格段に上昇した機動性に攻撃性。
 それらに反撃の機会を見いだせないながらも、適切な行動を取っていく。

「シグナムさん!」

「っ...なのはか...!すまん、二度もやられた...。」

「それよりも!」

「ダメージに関しては大丈夫だ。遮蔽物がないのが幸いした。」

 結界内は海の上であり、遮蔽物はなにもない。
 だからこそ、吹き飛ばされたシグナムは何かに当たる事もなく、その分ダメージも少なく済んでいたのだ。

「だが、距離が離れてしまったな...。早く戻らねば。」

「...フェイトちゃんとヴィータちゃんが...。」

「ああ。...なのはは先程と変わらず援護だ。....なに、今度は簡単にはやられん。」

 そういって、二人は戦場へと戻っていく。



「っ、はぁっ、はぁっ...!」

「ぐっ...強ぇ...!」

 フェイトが魄翼の攻撃を何度も躱し、ヴィータが合間を縫うように攻撃を繰り出す。
 しかし、そのどれもが通じず、二人は既に追い詰められていた。

「無事か?」

「....そう言いてぇとこだが...正直、きつい。」

「だろうな...。」

 相手は無傷、対してこちらは既に二人が満身創痍だった。
 防御を貫く手段は持ち合わせているが、当てる所まで持っていく事ができていない。

「三人とも!退いて!!」

「なのは!?」

 体力を消耗している二人を回復させるために、なのはが前に出る。
 本来遠距離型のなのはが前に出た事に、フェイトが驚く。

「....行くよ、レイジングハート!!フルドライブ!」

〈All right.My master.〉

 カートリッジをロードし、なのはは単身で暴走体へと空を駆ける。

     バチィイッ!!

「っ...シュート!」

 魄翼を掠めるようにすれ違い、振り返りつつ魔力弾を放ち、背後からの攻撃を防ぐ。
 そのまま上を取るように飛翔し、砲撃魔法を繰り出す。

「(もっと...!もっと強く...!)」

 さらにカートリッジをロードし加速、暴走体の背後に回る。

「はぁああっ!」

〈“Flash Impact(フラッシュインパクト)”〉

 放たれた打撃攻撃は魄翼に防がれるも、その際の閃光が暴走体の目を眩ます。

「.....、シュート!!」

 目が眩んでいる間になのはは暴走体を包囲するように魔力弾を展開し、それを繰り出す。

「(もっと強く...!)」

 油断せずにさらにカートリッジをロード。
 単騎だからこそできる豪快な戦いぶりとは裏腹に、なのはどこか焦っていた。

「....っ!!」

〈“Protection(プロテクション)”〉

     バキィイイン!

 魔力弾の炸裂で発生した煙幕から魄翼が伸びる。
 それを咄嗟に防ぐなのはだが、防御魔法は破られ、吹き飛ばされる。

「っ....!」

 軽いとは言えない程のダメージを受けたなのは。
 だが、すぐに復帰して海の上に立つ。

「(...もう、誰も死なせたくない...!だから、もっと強く...!)」

 ...なのはの脳裏には、緋雪の姿が浮かんでいた。
 緋雪の死の真実を、なのはは記憶の封印により忘れている。
 しかし、“見た”事は事実なので、心のどこかに残っていたのだ。
 “自分がもっと強ければ”という、悔しさが。

「(フェイトちゃんも、ヴィータちゃんも既にギリギリ...前衛の皆が頑張っているんだから、私だって...!)」

 その悔しさと、緋雪の死によって自覚した“死に対する恐怖”が相まって、なのはは大いに焦っていた。それこそ、単身で戦闘するなどという、無茶をするほどに。



「なのは!」

「なのは...!ぐっ...!?」

 呼び止めようとするヴィータとフェイトだが、戦闘によるダメージが大きい。
 直撃はしていないものの、二人とも掠ったり防御の上からダメージが入っている。
 シグナムはまだ戦えるが、割り込む隙がなかった。

「(ヒット&アウェイを繰り返す事で、なのはは単騎で渡り合っている。だが、あれでは長くは持たない。...何とかして、隙を作りださなければ。)」

 シグナムはそこまで考え、カートリッジをロードしておく。
 そして、レヴァンテインをボーゲンフォルムに変える。

「(....いや、ここは敢えてなのはを信じよう。...彼女なら、成し遂げるはずだ。)」

 魔力を溜め、いずれできるであろう“隙”をシグナムは待った。



「っ、ぁ...!シュート!」

 逃げ回り、魔力弾を放って追撃を防ぐ。
 やはり、単純な強さでは暴走体に劣るためか、なのはは劣勢だった。

「(攻撃を徹す隙がない...!せめて、あの“翼”を止めれれば...!)」

 そう考えるが、方法がなくすぐさまそこから飛び退く。

「(...!そうだ...!これが...!)」

 レイジングハートに収納していた“もの”を、なのはは取り出す。
 すぐさま魔力弾を放ち、少しだけ動きを阻害する。

「借りるよ。優輝君...!」

 取り出したのは、優輝の使っていた魔力結晶。
 以前、渡されていたものがまだ残っていたのだ。

「受けてみて!!」

〈“Hyperion Smasher diffusion(ハイペリオンスマッシャー・デフュージョン)”〉

 三つのカートリッジをロードし、間合いを詰めてきていた暴走体に砲撃を放つ。
 その砲撃は魔力結晶を介した際に拡散し、それらは魄翼へと直撃する。

   ―――“レストリクトロック”

「レイジングハート!」

〈A.C.S standby.〉

 砲撃で怯み、バインドで動きを封じられた暴走体へ、なのははレイジングハートの矛先を向け、魔力を迸らせる。

「エクセリオンバスターA.C.S、ドライブ!!!」

 そして、暴走体に向け、なのはは突貫した。

     ッギィイイイイイイイイイッ...!!

「く、ぅうぅぅう....!!」

 魄翼と防御魔法による障壁と、なのはが拮抗する。

「(堅い.....!)」

 魄翼との合わせ技により、かつての闇の書の時よりも防御は強固になっている。
 そのため、突破するのに僅かながら時間がかかる。
 その隙を、暴走体は見逃さない。

「っ....!」

 防御を防御魔法だけにし、魄翼をなのはへと振り下ろす。
 回避も防御も不可能。だが、なのはの瞳に“諦め”は浮かんでいなかった。

「魔力結晶は...一つだけじゃない!!」

 さらに“二つ”。レイジングハートから魔力結晶を取り出した。
 レイジングハートを持つ手を片手だけにし、もう片方の手で結晶を一つ掴み...。

「バスター!!」

 ディバインバスターを放った。
 それにより、魄翼の攻撃は相殺される。

「はぁああああああっ!!」

 そして、再び両手でレイジングハートを握る。
 さらに、残ったもう一つの魔力結晶が砕け、その魔力がなのはを強化する。

「ブレイク...シュート!!!」

 そして、ストライクフレームが暴走体の障壁を貫通し、砲撃が至近距離で放たれた。



「やった...!?」

 それを遠くで見ていたフェイトが、ついそう呟く。

「いや...油断はできない。」

「っ...!」

 しかし、シグナムは油断せずに、ボーゲンフォルムのレヴァンテインを構える。
 矢を生成し、それを番え、狙いを暴走体へと定める。

「封印のための魔法を用意しておけ。奴はなのはに集中している。...その隙を突く!」

「...任せろ!」

「了解...!」

 同じく、ヴィータとフェイトも魔力を溜め、大魔法に備える。



「はぁっ、はぁっ、はぁっ...っ...!」

 一方、砲撃を放ち終わったなのはは、さすがにフルドライブの反動で疲労していた。
 しかし、それでも油断はせず、前を見据えて警戒する。

「(まだ...油断できない...!)」

 あのシグナムやヴィータ、フェイトを相手にして圧倒していた暴走体だ。
 自分一人ではまだ倒せていないだろうと、なのはは考え次の行動に備える。

「っ....!」

 案の定、砲撃を打ち込んで発生した煙幕の中から魄翼の腕が伸びてくる。
 それを後ろに避け、魔力弾を放つ。

「(ダメージはある。けど、足りない...!)」

 姿を現した暴走体の服はボロボロで、明らかにダメージを受けていた。
 しかし、それでもなのはに攻撃を繰り出す。

「避け...っ!?バインド...!?」

 間合いを取ろうとするなのはだが、バインドで足を取られ、動けなくなる。
 回避もできず、防御も間に合いそうにない。
 なのはが死を覚悟し、目を瞑った瞬間...。

「翔けよ、隼!!」

〈“Sturmfalken(シュツルムファルケン)”〉

 一筋の炎閃が、暴走体を捉えた。
 魄翼と防御魔法で咄嗟に防いだものの、それでもダメージは通った。

「っ、ぁああっ!?」

 余波に巻き込まれ、吹き飛ばされるなのは。
 吹き飛ばされながらも、矢を放ったシグナムを見て、安心する。

「レイジングハート!」

〈“Restrict Lock(レストリクトロック)”〉

 咄嗟に拘束魔法を使用し、暴走体の動きを阻害する。

「轟天爆砕!!」

 そこへ、ヴィータがギガントフォルムを使って暴走体の上を取り...。

「“ギガントシュラーク”!!」

 超巨大な槌の一撃を叩きつけた。
 その一撃は、暴走体の魄翼と防御魔法の防御を砕き、海へと叩きつける。

「今だ!テスタロッサ!」

 そして最後に、上空で魔力を溜めて待機していたフェイトが動く。
 カートリッジを三発ロードし、構えていたバルディッシュを振り下ろす。

「雷光一閃!!“プラズマザンバーブレイカー”!!」

 雷を纏った砲撃が、ヴィータの攻撃で無防備になっていた暴走体を呑み込んだ。







「....やった...の?」

「直撃はしたはずだ...これで死なねぇなら、それこそバケモンだ。」

 杖を支えにするように浮かぶなのはに、ヴィータがそういう。

There is no reaction.(反応ありません。)

「...よかった...。」

 レイジングハートの言葉に、過激な戦闘を経てボロボロになったなのはは崩れ落ちる。

「...ったく、無茶しすぎなんだよ。」

「え、えへへ...ごめんねヴィータちゃん...。」

 気が抜けて落ちそうになるなのはを、ヴィータが支える。
 そこへ、ジュエルシードを回収したシグナムとフェイトがやってくる。

「封印は完了した。直に結界も崩れるだろう。」

「...そういえばまだ終わりじゃねーんだったな。」

「ああ。まだジュエルシードは残っている。」

 ここまで強敵だったのにまだ残っているという事に、ヴィータは顔を顰める。

「...早く、他の所にも行かなきゃ...だね。」

「ああ。だけど、なのは。お前は休め。一人で戦ってたんだからよ。」

「...ううん。大丈夫。援護くらいならまだできるよ。」

 休む事を促すヴィータだが、なのははそれを断る。

「ヴィータ、なのははこう言ったらなかなか聞かないよ?」

「ちっ...わーったよ。だけど、無理すんじゃねーぞ?」

「にゃはは..さすがにわかってるよ...。」

 フェイトの言葉に渋々認めるヴィータに、苦笑いしながらいうなのは。
 そうこうしている内に、結界は崩れ始める。

『....!...よかった!繋がった!』

「アリシアちゃん?」

 そこへ、アリシアが通信を繋げてくる。

『通信が転移事故のせいで繋がらなかったの!他の皆の方は繋がったから、これで完全に回復したの!そっちは無事?』

「...なんとかな。相手が強敵だったから、だいぶ梃子摺ったけどな。」

『そっちもなんだ...。クロノの方も、今ママの援護が入る所だよ。』

 ヴィータの返事に、不安を感じながらもそういうアリシア。

「とにかく、我々も他の所へ向かう。」

『ちょっと待ってね。他に助っ人が必要そうなのは...。』

 他の戦況をアリシアが確認している間に、結界は崩れ、元の世界に戻される四人。

「...まず、陸に戻ろうか。飛んでばかりでは、疲れるだろう。」

『っ...!待って!そっちに大きな魔力反応!!それに、結界が...!』

「っ....!!」

 叫ぶようなアリシアの警告と同時に....()()が四人を襲った。







「してやられた!四人とも結界内に行っていたなのは達を狙うなんて...!」

 通信を行っていたアリシアは、焦ったようにそういう。

「皆!どうにかして凌いで!他の皆を向かわせる!...皆!?」

 防御に徹するように言うアリシアだが、通信先がノイズに塗れる。

「っ...!また通信妨害...!」

 完全になのは達を孤立させられた事に、アリシアは悔しそうに手を叩きつける。

「(...お願い優輝、皆...!早く、フェイト達を助けて...!)」

 何もできない事に憤りを感じながらも、アリシアはそう願った。













 
 

 
後書き
Hyperion Smasher diffusion(ハイペリオンスマッシャー・デフュージョン)…ハイペリオンスマッシャーのバリエーション。優輝の魔力結晶を通して放つ事により、拡散して複数の対象に攻撃できる。

多対一よりも一対一のが圧倒的に書きやすい...。
やっぱりキャラが少ない方が動かしやすいんですよね...。

とりあえず闇の書と一対一で戦えるという事で、一人の方が戦闘の派手さを増すなのはさん。もう全部この人だけでいいんじゃないかな。
カートリッジもどんどん使っているので、短時間であれば渡り合えます。
というか、闇の書と同じような展開に...。(主にA.C.Sの部分)
なお、これでも原作ユーリよりも弱い模様。 
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