八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第八十九話 歴史の資料その十一
「大抵日本酒だったね」
「ワインじゃなくて」
「日本だったからね」
それも戦争前のだ。
「そうだったんだよね」
「成程ね、八条荘に帰った時にビール飲むけれど」
ダオさんはまた言った、ここで。
「ここにいる間は日本酒ね」
「江田島にいる間はね」
「そうなるわね」
「じゃあその江田島の中でも一番有名な場所の一つに行こうね」
もっと言えば江田島の代名詞になっているこの候補生学校のその中で最も歴史的な資料が充実している場所にだ。
「これからね」
「じゃあ観るわよ」
「この目でね」
ダオさんとラブポーンさんも応えてくれてだ、そしてだった。
僕達はその資料館に入った、資料館には様々な帝国海軍そして戦争までの日本についての歴史的資料が多く展示されていた、その中にだ。
森鴎外の筆もあった、日菜子さんはその筆を見て隣にいた早百合さんに言った。
「これがなのね」
「はい、鴎外さんの筆ですね」
「あの文豪の」
「まさにあの人です」
「森林太郎ね」
「本名です」
その森鴎外のだ。
「当時は本名でも有名でした」
「確か陸軍軍医総監だったのよね」
「中将待遇でした」
「中将って偉いわよね」
「宮廷に出入り出来ました」
早百合さんは中将についてこう日菜子さんに説明した。
「そして陸軍でもかなり偉い人でした」
「そうだったのね」
「はい、ですが」
「ですが?」
「評判は悪かったみたいです」
「陸軍のお医者さんで一番偉い人なのに」
「結構性格的に問題があったそうで」
早百合さんは鴎外のことをこう話した。
「非常に頑迷な方で権力志向とエリート意識が強く」
「結構嫌な人だったの?」
「今で言うファザコンでマザコンだったとか」
「両方は凄いわね」
「しかも極端なドイツ贔屓で」
ドイツに留学したせいらしい。
「周りから何かと」
「好かれていなかったのね」
「その様です」
「そうした人だったなんてね」
「実はです」
「問題のある人だったの」
「その様です」
こう日菜子さんに話していた。
「特にエリート意識と頑迷さが問題でして」
「その二つが」
「それで問題も起こしています」
「何をやったの?」
「脚気のことで」
「あの病気で」
「当時軍でも脚気は問題になっていました」
脚がむくんで動けなくなってそのうえで酷いと死んでしまう、それで問題にならない筈がないことだ。軍隊でも他の組織でもだ。
「それは陸軍も海軍も同じで」
「ここでもなの」
江田島は海軍だからだ。
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