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エクリプス(機動戦士ガンダムSEED編 )

作者:cipher
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第07話 敵軍の歌姫(後編)

Side テレサ・テスタロッサ

「コウキ補給は終わりました。
プラントの民間船がそちらに向かっています。
不味い事に地球軍の艦船が、先に接触しそです。」

『…。
トゥアハー・デ・ダナンは民間船の護衛に付いてくれ。
鹵獲したジン2機も出す様に、地球軍にザフト軍の船と思わせたい。
地球軍が臨検しようとしたら民間船と地球軍の間に入って艦を守る様に、
こちらから誘導して相手から攻撃させる。
その時、大黒特尉に民間船の機関部付近で爆発させろ。
その後、敵を威嚇して撤退させる。
民間船を足止めして目的を知りたい。
詳細の作戦プランはオモイカネにアップした。
この作戦にはタイミングが大事だ。』

「了解しました。」

Sideout



Side マリュー・ラミアス

光輝
「艦長、ミスリルからの報告です。
こちらにプラントの民間船が近づいています。
船の方向と時期を考慮して、ユニウス7(ユニウスセブン)が目的だと思われます。
血のバレンタインの悲劇よりもう直ぐ1年になります。
問題は我々より先に地球軍のパトロール艦が先に民間船と接敵する恐れがあります。
目的をしった場合は民間船を攻撃する可能性が十分あります。
ミスリルの判断でトゥアハー・デ・ダナンを向かわせました。
補給は済んでいるのでアークエンジェルは隠れて警戒監視をお願いします。
トゥアハー・デ・ダナンからの情報は私が中継します。」

マリュー
「分かったわ。
アークエンジェルは前方の戦艦の残骸の影へ隠れて。
観測班は警戒を現に!」

「「は!」」

アークエンジェルは微速前進で、残骸の影に隠れた。
艦橋ではトゥアハー・デ・ダナンからの情報に目を向けている。

マリュー
「民間船と地球軍は5分程で接敵しそうよ。」

フラガ
「俺も出る。」

光輝
「出てどうする。
民間船を攻撃するのか?それとも地球軍か?
アークエンジェルは地球軍の艦船だ。ミスリルに任せとおけ。」

マリュー
「フラガ大尉、コウキさんの言う通りよ。」

地球軍から民間船に臨検の要請が入った。
アークエンジェルの艦橋に緊張が走った。
トゥアハー・デ・ダナンは民間船の間に入りジンを2機発進させた。

フラガ
「何でジンを出した。」

光輝
「初見で地球軍はミスリルについて理解していない。
ザフト軍と思わせたい。民間船も仲間だと思う。
後々、交渉にプラスにする為の布石だ。
今の所、ミスリルを知る人間はクルーゼ隊とアークエンジェル、ヘリオポリスの職員、ハルバートン提督を含む第8艦隊の上層部のみだけだ。」

マリュー
「地球軍が発砲した。
ジンも応戦しているわ。」

光輝
「あくまでこちらは威嚇だけだ。
ミスリルの艦長を信じろ。
もう直ぐ地球軍は撤退する。」

フラガ
「民間船の機関部付近で爆発したぞ。」

光輝
「直撃ではない。敵ミサイルが至近で迎撃されただけだ。民間船の搭乗者に被害はない。
民間船なので故障ぐらいしているかもしれないが?」

戦闘は直ぐに終わった。地球軍は撤退していった。

光輝
「民間船と交渉してくる。目的を聞く必用がある。
アークエンジェルはそのまま待機してくれ。」

マリュー
「分かったわ。それと経過の報告はお願いね。」

光輝
「勿論、そうするさ。」

Sideout


光輝は一人、EX-ギア(エクスギア)でアークエンジェルから出て行った。


暫くして光輝からの第一報が届いた。


Side マリュー・ラミアス

マリュー
「えっ!
…。
艦名は『シルバーウインド』。
目的はユニウス7の追悼慰霊の為の事前調査。
搭乗者にラクス・クライン嬢がおり
プラント現最高評議会議長のシーゲル・クラインの娘である。
修理の間、ミスリル艦で預かる事になったそうよ。
それで私もミスリル艦に招待されたわ。
キラ君の操縦するバルキリーで来艦して欲しいそうよ。
無理ならキラ君だけでもって話。」

ナタル
「それで艦長はどうするのですか?」

マリュー
「せっかくの招待だから行くわ。
今この宙域はミスリルが監視しているから安全よ。
ナタルその間、艦を任せるわ。」

フラガ
「俺もついて行く。」

マリュー
「フラガ大尉は待機よ。
フラガは来るな。アークエンジェルでナタル少尉の補佐でもしていろ。
ってコウキさんから伝言よ。
うふっ大尉の行動は予測しているみたいね。」

「「ふっふっふ。」」

Sideout



Side キラ・ヤマト

マリューを乗せて、トゥアハー・デ・ダナンから誘導の元、艦に着艦した。
ミスリルの隊員が一斉に敬礼して出迎えた。

テレサ
「私はこの艦の艦長でテレサ・テスタロッサ大佐であります。気軽に『テッサ』と及び下さい。」

マリュー
「…。
私はアークエンジェルの艦長マリュー・ラミアス大尉です。」

キラ
「僕はキラ・ヤマト少尉です。」

テレサ
「もう直ぐ、コウキさんも戻られます。暫くお待ち下さい。」

そこへメリッサ・マオ曹長が操縦するシャトルが到着した。
この映像(音声なし)はシルバーウインドとアークエンジェルにもリアルタイムで流されていた。

テレサ
「今からこのブロックは疑似重力が発生します。ご注意下さい。」

マリュー、キラ
「疑似重力?」

テレサ
「えぇ、長期任務では重力がないと不便ですからね。
重力のスイッチを入れて下さい。」

その時ゆっくりと1Gの重力が掛かった。

マリュー
「あっ。」

そこでシャトルの扉が開き、光輝が初めに降りてきた。
スロープの下で待機する。
ラクスの護衛が次に降りて安全を確認する。
ラクス・クライン嬢が降りてくると、光輝は片膝を床に付けてラクスに手を掲げる。

光輝
「ようこそ。トゥアハー・デ・ダナンへ、乗組員一同。
ラクス嬢の来艦歓迎します。」

ミスリルの隊員が一斉に拍手で出迎える。

ラクス
「歓迎ありがとうございます。」

ラクスは光輝の手を取ると優雅にスロープを降りてくる。
この映像見ていたシルバーウインドとアークエンジェルのクルーは溜息をついた。
まるで中世の王女とナイトの姿そっくりである。
それは光輝の演出でもあった騎士の姿に変装してある。
シルバーのピカピカした甲冑にマント姿、腰には1本剣を帯剣している。
剣は模造で先に護衛に確認してあった。
着替えはマオ曹長にシャトルで運ばせる念の入れようである。

ハロ
「ハロ!ラクス、ハロー。」

ラクス
「これは友達のハロです。」

ハロ
「ハロハロ。オモエモナー。ハロハロ?」

マリュー
「…あっ!…ハァ。」

光輝
「貴賓室に案内します。付いて来て下さい。」

Sideout


光輝達はシルバーウインドの修理が終わるまでの予定を話し合った。


Side キラ・ヤマト

光輝
「キラ君、ラクス嬢はアスランの婚約者だ。
マオ曹長と一緒に相手をしてやってくれ。
君とアスランの関係を話せば、アスランに君の無事が伝わるだろう。マオ曹長が話をリードしてくれる。
私は作業があるからチョット出かけてくる。」

キラ
「本当にアレをやるんですか?」

光輝
「勿論、やるに決まっている。後は任せた前。それじゃ君の対応はマオ曹長に任せる。」

マオ曹長
「了解です。」

キラとマオ曹長を残して光輝は何処かに歩いて行った。

マオ曹長
「キラ君付いて来てくれ、軽食と飲み物を用意する。」

キラ
「はい。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

キラとマオは昼食後のお茶を運んでいた。

マオ
「ところでラクス嬢、キラ・ヤマトはアスランの幼馴染みなんですよ。」

ラクス
「まぁ、本当ですの?」

キラ
「月の幼年学校で友達でした。」

ラクス
「アスラン・ザラは、私がいずれ結婚する方ですわ。」

キラ
「コウキさんに聞きました。」

ラクス
「優しいんですけども、とても無口な人。」

キラ
「…あぁ。」

ハロ
「ハロ。」

ラクス
「でも、このハロをくださいましたの!」

ハロ
「ハロハロ!」

キラ
「…。」

ラクス
「私がとても気に入りましたと申し上げましたら、その次もまたハロを。」

キラ
「…あぁ。
…そっかぁ、相変わらずなんだな、アスラン。僕のトリィも彼が作ってくれたものなんです。」

トリィ
「トリィ!」

ラクス
「まぁ!そうですの?」

ハロ
「テヤンデイ。」

キラ
「…あぁ、でも…」

Sideout


マオは気を利かしてそっと部屋を出る。
何故護衛が側にいないかは、護衛を連れ出し格闘訓練をさせていた。
それから暫く時間が過ぎた。



Side マリュー・ラミアス

何故かトゥアハー・デ・ダナンの格納庫には特製ステージが組み上げられて、
光輝がミュージシャンの姿でマイクの前に立っていた。

光輝
「シルバーウインドとアークエンジェルの皆様、ラクス嬢に同意して頂きましたのでラクス嬢に1曲歌って頂きましょう。
ラクス嬢、ステージに上がって下さい。
追悼慰霊コンサートの始まりです。
プラントの歌姫、ラクス・クライン嬢です。皆様、暖かい拍手を!」

光輝はラクス嬢をエスコートしてマイクの前まで案内し、自分は後ろにあるキーボードの前へ移動した。

ラクス
「ミスリルの皆様、ありがとうございます。それでは聴いて下さい。」

光輝が伴奏を始めた。
まるでオーケストラ響きである。
照明もオモイカネが曲調に合わせて色鮮やかに演出している。

ラクス
「静かなこの夜にあなたを待ってるの♪



静かな夜に……♪」

歌が終わると艦内で歓声鳴り響く。

光輝
「続きまして、ライブの録画映像ですがご覧ください。
銀河の妖精 シェリル・ノームと希望の歌姫 ランカ・リー。」

立体映像で映し出された。
光輝はラクスを貴賓席にエスコートした。
光輝も隣の席に座った。

ラクス
「素敵なコンサートでした。コウキさんのアレンジも素敵です。」

光輝
「それは良かった。準備したかいがありました。」

マリュー
「ここまでする必要があるの?」

光輝
「歌は文化です。文化は心を豊かにします。
音楽・料理・芸術など文化を忘れたら人間はただ生きているだけの機械と成り果てます。」

側で聞いていたラクスとキラも頷いている。

Sideout



コンサートが終わるとラクス達は貴賓室に案内された。



Side ムウ・ラ・フラガ

トゥアハー・デ・ダナンでの片付けが終わり、
アークエンジェルの格納庫で光輝は観客席の片付けをしていた。

フラガ
「何してくれやがる。」

光輝
「只のコンサートだよ。」

フラガ
「そんこと聞いてない。」

光輝
「いや助かったなぁ。
デブリベルトじゃなっかたら、あんなに簡単にステージ作れねえもんな。
周りにいっぱい落ちているし、今回のステージは戦艦の外装を使ったから世界一丈夫だ。
今度、フェイズシフト装甲で作ってみるか、実体弾も通さない。」

フラガ
「そんなもん作るな。」

光輝
「いやだって周りにいっぱい良い材料落ちているから、チョット拾い過ぎたもん。
これはアークエンジェルの護衛より、儲かった。
ああそうか、ムー歌いたいのか?
今回のステージはアイテムボックスに入れてあるから、知っている曲なら演奏できるぞ。」

フラガ
「誰が歌うか?」

光輝
「お前、音痴?
学習システムで勉強すれば音痴も治るぞ。」

フラガ
「もういい。」

光輝
「飛べない豚はただの豚だ。」

フラガ
「豚は飛べんぞ!」

光輝
「くじら石を知っているか?ジョージ・グレンが発見した物だ。
実物を解析していなが、羽らしき物があるだろう?
宇宙をくまなく探せば飛べる豚もいるかもしれないだろ。
それに無重力で豚を飼育したら足が進化して羽になるかも知れない。
言いたい事は文化を育む事が出来るのは人間だけだ。」

フラガ
「早くそれを言え回りくどい。」

光輝
「只のストレス発散だ。」

フラガ
「俺を使うな。」

光輝
「それじゃ、だれか適材な者を紹介してくれ。」

フラガ
「お前の後ろにいる。」

光輝は振り返るとマードック曹長と目が合った。

マードック
「えっ俺?」

光輝
「替えの効かない整備士はだめだ。」

フラガ
「替えの効かないパイロットならいいのかよ?」

光輝
「月までなら問題ない。
お前が死ぬと護衛代金が減る、だから私の状態をベストにして置きたい。
まあこの艦では実戦者が少ない。
君はパイロットよりこの艦の精神的支柱だ。
それぐらいは認めている。
それに整備兵に取っても整備する機体が必要だ。
ストライクやバルキリーはほとんど私がメンテナンスしているからな。」

フラガ
「腑に落ちないが…。」

Sideout



Side キラ・ヤマト

キラ
「僕も同行するんですか?」

光輝
「核の恐ろしさを実感して欲しい。」

トゥアハー・デ・ダナンの格納庫では、1機のシャトルにラクス達を乗せて待機していた。
キラと光輝が最後に乗り込んだ。
シャトルはバルキリーの護衛の元、一路ユニウス7に向かった。
ユニウス7には綺麗なモニュメントが置かれていた。
モニュメントには
C.E.70年2月14日、
24万3721名の民間人がここに眠る。
それに哀悼の分が記されており、
最後に寄贈『ミスリル』と書かれていた。

追悼セレモニーが始まる。
バルキリーから一人のパイロットが飛び出し、献花台に白い造花の花束が置かれる。
バルキリーからダミーのミサイルが上空に発射される。
噴煙が消えると一拍おいてそこには幻想的な光が瞬いて、『安らかにお眠り下さい。』と文字が浮かび上がった。
光輝の魔法を使った演出である事はミスリル隊員しか分からない。
光輝が代表して喋り始めた。

光輝
「人類は何も歴史を学んでいない。
ここに24万3721名の英霊が眠っています。
一人一人に大切な家族が居たのです。
大切な友達や恋人も居たのでしょう。
残された者の悲しみがここにいると伝わって来ます。
ミスリルを代表して哀悼を述べます。
まず、偶然に救出でき、この席に同席して頂いた、ラクス・クライン嬢にお礼を申し上げます。
ありがとうございます。」

ラクス
「プラントに生きる一人の人間として、ここにいない同胞の代わりにお礼を申し上げます。」

光輝
「民間人への虐殺やテロ行為は国際法でも許されない犯罪です。
過去の歴史でも繰り返されて来ました。
憎しみは憎しみの連鎖しか生まないのです。
人類は技術を高め宇宙にも進出する事が出来ました。
それなのに歴史の教訓を本当の意味で理解しているでしょうか?
歴史は只の学問ではありません。
人間は間違いやミスを行うのです。
歴史はそんな人類の過ちを繰り返さない為の学問です。
人は一人では出来る事に限りがあります。
その為に人類は進化して集団を作りました。
そして言葉や文字、文化を築き上げたのです。
残念ながら人類は権力や腐敗なども作ってしまったのです。
私は人類の負の遺産を解決できない人類は、本当の意味での進化とは言えないと断言します。
近代の戦争はどちらがどちらを支配する戦争です。
人類が作った素晴らしい物があります。
それは歩み寄りです。譲歩とは違います。
ここでは結論をあえて述べません。
人類の新たな扉は皆さん一人一人が考えて、協調してこそ乗り越えられると信じています。
最後に皆さんにモニュメントに書かれた言葉を送ります。
…。
…。
…。」


光輝はモニュメント刻まれた文章を読み上げて話を閉めた。
ラクスも追悼の言葉を送り、鎮魂歌の代わりにアカペラで1曲歌った。
この曲は『愛・おぼえていますか』である。
以降、追悼慰霊の映像とラクスの歌はプラントだけでなく、地球上にも広がった。
地球上にミスリル心派が出来たのは別な話である。
因みに作詞・作曲者にプロトカルチャーと書かれいたのは余談である。

Sideout

 
 

 
後書き
エンディングをここで終わらせたかったので、話を区切ります。
次話ではプラントやアスランが出る予定です。 
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