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おたく☆まっしぐら 2016年の秋葉原

作者:本郷明
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メイドカフェにやってきた!

秋葉原でメイドカフェが出来たのは2000年代の話だ。電車男の時代が勃興していた時代と行ってもいいくらい。
本郷は一人メイドカフェへ入っていく。
秋葉原駅から少し歩いた場所。ビルの2階を借り切っていたスタンダードな店だ。
メイド全員「いらっしゃいませ! ご主人様!」
鷹揚にうなずき、本郷は席へ案内される。
メイドA「ご主人様、お飲み物はなにになさいますか!」
メイドB「お手拭ご用意しました」
メイドC「いい体してますね」
メイドD「ご飯はカレーですか!」
この日は客が少ないからか、本郷くんに集中した。
本郷「うるせぇ! 一人にまとめろ!」
少し多かったようだ。
本郷くんはコーヒーを頼み、メイドさんに混ぜ混ぜしてもらう。
???「旦那様、砂糖とミルクはいくつお入れしましょうか」
本郷「ひとつずつで……お前は」
そこにいたのはメイド服姿が様になっている望月 ちはるの姿であった。
他のメイドたちとは違い、少しシックなテイストであった。
ちはる「どうです? 自作コスもOKなんですよ」
笑みを浮かべる彼女の姿に本郷は更に驚く。
本郷「その服を自分で作ったのか!」
立ち上がり彼女の服を丹念に眺めていく。
ちはる「ほ、本郷さん!」
彼の目は鋭い。縫製の出来を眺め、それがプロ顔負けであると、
本郷「フリルも自作デザインだな、既製品とは違う」
ちはる「……セクハラですよぉ」
本郷「違う。俺は衣装の出来をみているのだ」
ちはる「褒められてるのか、セクハラされてるのかわからないよ」
本郷「胸はパットか?」
ちはる「ころすっ……!」
お盆を本郷に投げつけるが軽やかに避ける。
本郷「しかし、ジャパニメイトだけでなく働いてるんだな」
ちはる「そうそう意外と時給はいいから」
本郷「衣装代か?」
ちはる「ほんとかかるっていうか。自分で作ってるからまだ安いほうだけど」
コーヒーにミルクと砂糖をいれ、乱暴にかき混ぜる。
本郷「衣装のクオリティに比べて雑だな」
ちはる「うるさい。ちょっと仕事できるからっていい顔させないんだから」
本郷「オタクを極めた俺に商品知識で勝てるときがきたらな」
ちはる「ぐぬぬ」
悔しそうに服の裾を掴む彼女。本郷は不敵な笑みを浮かべた。
メイド長「望月さん! 離しこんでないで仕事仕事!」
ちはる「あ、はーい」
本郷「怒られたな」
ちはる「うるさい! それと……ありがと、衣装で分かってくれる人少ないから」
本郷「魂の違いを感じたんだ。それだけだ。いいものは褒める」
ちはる「やっぱ、感じわるい、べー!」
小走りに厨房へと消える望月。
本郷「照れてるのかあいつ……」
労働をする彼女の姿をみつめ、本郷はコーヒーを飲む。
メイドA「おかわりはどうですかご主人様」
本郷「そんなサービスあったか?」
メイドA「今つくりましたww」
メイドは丁寧にコーヒーを注ぐ。
メイドA「ちはるちゃんがあんなに感情をむき出しにして言うとこ初めてみたよ」
本郷「ほう、あれが基本ではないのか」
メイドA「どこか壁があるっていうか、まぁ、話せるんだけどね。お兄さんは特別なのかなと」
本郷「俺は何もしてない」
メイドA「そうだね、お兄さんイケメンだから」
牝の顔をして本郷の顔を覗き込む。胸元をあらわにし、確かな性アピールをする。
本郷「悪いな、三次元には興味がないんだ」
メイドA「ふふっ……今時にしては珍しいね」
ちはる「朝倉ぁ……」
彼女の名前は朝倉というようだ。
メイドA「ちはるが入れ込むから少し食べちゃいたくなったの」
ちはる「そんなんじゃないって! てか、いいかげんその癖やめなさいって」
メイドA「彼、イケメンだからね! じゃあ交代だね」
ちはる「はいはい、交代」
望月は退勤の用意を済ませているのだろう。自作のコスならではであった。
メイドA「はいはい、友人の未来の恋人を取るのは駄目だね」
朝倉は意地汚い笑みを浮かべて、仕事に戻っていく。
ちはる「あの人、誰彼構わず誘惑するから」
本郷「そういう奴なのは分かっていた」
ちはる「あなたはなびかないってのも分かってたけど、ほんと二次元に生きてるのね」
本郷「漢である俺をなびかせようなど、片腹痛いわ。二次元になってから来い」
オタクである本郷に三次元の性はあまり意味がないのだ。
ちはる「そうね……あなたはそういう人だったね」
望月は苦笑いするもどこか嬉しそうにしている。
ちはる「一緒に出ません? 私、これからジャパニメイトで仕事なんですよ」
彼女もまた仕事漬けであった。



 
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