HUNTER×HUNTER 六つの食作法
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014話
「さぁ~いらっしゃいいらっしゃい!!条件競売が始まるよ~!!」
日も傾いて空が夕焼けに染め上がってきた頃、町の一角で上がった明るい声。人々が行き交っている道の途中に置かれた机と椅子、そこに座っているのはゴンとシャネル、その傍にはプレートの上に乗せた宝石をそれぞれ持っているキルアとクラピカ。
「競売品はこちら、300万相当のダイヤ!その店で買った鑑定書つきだぜ!落札条件は腕相撲、こちらの少年に勝った者に与えられるます!!参加費用は1万ジェニー!」
その近くで木の棒をマイクのようにしながら大会を盛り上げる実況者の如く熱演しているレオリオ。これはホテルの部屋に備え付けられていたパソコンで稼げる手段を調べていた際に発見した条件競売を実践している物。
「更ぁに~腕自慢にはこちらの青年!こちらの方は5万ジェニーとちょっとお高め!しかぁしその青年近くの方が持っている宝石はなぁんと1000万相当のダイヤ!!正に一攫千金!自信がある方は是非どうぞぉ!!ではオークション……スタァアアアトッッ!!!」
レオリオの声と共に1万ジェニーを掲げて参加表明する男たち、あからさまに小柄な少年であるゴンなら勝てると踏んでいるのだろう。シャネルの方も少数ながらも参加しようとしている者達もいる。体格的にシャネルの方が勝つのは困難と思われる、だが5万ジェニーで1000万の宝石が手に入るというならば十分参加は見込めるし、例え5万で負けても1万の方ならまだ勝てるかもと言う希望を抱いて参加する事もありえる。2重の資金稼ぎが可能になっている。
「兄ちゃん、悪いが1000万は俺が貰うぜ」
「へへっやってみな」
「5万ジェニー確認終了、では互い手を握って……用意、スタート!!」
「「ふぬぅ!!!」」
ゴンとシャネルも腕相撲へと入っていく、腕相撲のコツは相手にそれなりの手応えを味合わせる事。圧勝では相手の心を折って再度挑戦する事は難しくなる、だが惜しい所まで行けた、後ちょっとで勝てるという思いがあればリトライしたりゴンの方へ挑戦者が流れる事が多くなる。
「(でもこれだけで89億稼ごうとしたら88万9千勝……時間、間にあわねぇだろこれ)」
「(シャネルへの挑戦が5万、それだと17万8千勝……今日一日で500万行けば上々レベルだな)」
その後も途切れる事の無い挑戦者にゴンとシャネルは腕相撲を続けるのであった。絶え間なく続けているとすっかり夜も更けて暗くなってしまい街灯が腕相撲を明るく照らしているが未だ二人は負けずに続けていた。シャネルの方は挑戦する人数は減って来ているが代わりにこんな楽金を稼いで良いのかと疑問に思い冷や汗をかいているゴンに流れて行っていた。
「あー肩凝った……つうか好い加減疲れたわ」
「お疲れさまだシャネル、38連勝。190万だ今の所」
「ゴンの方はまだ続いてるな、もう151連勝だろ?」
「ああ、シャネルに負けてだいぶそちらに流れているな」
幾ら5万で1000万と言えどシャネルの見た目も影響してか良い加減挑戦するものは消えて来ていた、今は疲れて暇そうにしているフリをしつつもゴンの腕相撲を鑑賞していた。152戦目の相手はなんと初めての女、黒髪の眼鏡を掛けた少女だった。
「へぇ……割と若そうなだけど自信あんのかね」
「でなければやらないだろう(妙に見つめているな……もしかして黒髪眼鏡がいいのか……?)」
クラピカの心中はさておき、ゴンと少女が手を握りあった時ハッと顔を鋭くした。手を握り合った瞬間に感じる彼女の強さ、オーラの力強さに驚愕した。まるでシャネルと手合わせをして入るかのような感覚に近い。
「ようござんすか!?レディ、ゴォ~!!」
合図と共に一気に力を込めて互いに相手の手を握り潰さんとする勢いで握り締めて一気に相手の腕を倒しに掛かる。此処まで余裕を残し、相手には良い感じの優越感を浸らせていたゴンだが今回に限ってはそんな余裕など無かった。一瞬でも気を抜けば負ける、そう確信できる。
「んっ……んんっ……!!」
「ぐぅぅう……ぐうああああああ!!!」
必死に歯を食い縛り今出せる全力を発揮するゴン、本気の本気であった。あまりの力で机には罅が入り始めミシミシと音を立てていた。机が音を立てて崩壊しようとしていた時、ゴンは何とか相手の拳を机に付け勝利する事が出来た。
「ふぅ~………」
「有難う御座いました」
「あっこちらこそ」
周囲の見物人達は少女に良くやったなどの声を掛けて盛り上がっている。事実、今日一番ゴンが力を発揮した取り組みだったし傍から見てももっとも互角と言える物だった。しかし、凄まじい腕力だ。
「すっげえパワー……」
「ああ。とても少女と思えんな……」
「あの挑戦して良いですか」
クラピカと彼女に対する感想を言い合っている今度はこちら側に挑戦しにやってきた、クラピカは5万を受け取りつつ彼女を席へと案内する。シャネルも気を引き締めながら左手を差し出し、彼女もそれに従って左手を出してきた。
「良し準備は良いね、用意……スタート!!」
先程の事を見ていたからかシャネルは加減する気など一切無く本気でやる気だった、それに加え自分もゴンと同じように彼女と手を会わせた瞬間にオーラの強さを感じ取ったからだ。故に全力を出す事にした、だが
「ぐううううう!!うぉぉぉぉぉっ……!!!」
「んっ………!!んんんんんっっ!!!」
互いに一歩も譲らず互いに腕が殆ど動かないと言う状況が発生していた。その光景にクラピカは目を疑い、周囲の見物客もその光景に目を奪われていた。
「(この子、なんてパワーだ……!!!重機と腕相撲してる気分だぜ……!!!)ウオオオオオオッッ!!!!」
「んんっ……!!!!」
互いに更に力が篭っていく、それは机を掴んでいる右手にも現れており互いの右手は既に机の一部を握り潰す域にまで入っていた。一向に好転しない状況が1分ほど続いたが終りは唐突に訪れた、二人の力に机が耐え切れずに木っ端微塵に砕け散ってしまったのだ。
「なっやべっ!?」
「あっいけない」
粉々に砕け散ってしまった机を見つめる二人、それを拍手喝采で興奮を見せる見物客たち。だが行為は如何した物か……。
「如何しますかお嬢さん、これはこちらの机のチョイスミスとも言えます。挑戦金は返金しますが」
「多分鉄の机でやっても勝負付かなかっただろうし、もう行かなきゃ行けないみたいなんで。有難う御座いました」
一礼をして去って行く少女を見送るシャネルとクラピカ、だが彼の左手は小刻みに震えていた。彼女の握力と腕力で腕が痺れてしまっている、机が壊れてしまいこちらは操業停止したのはいいがこのまま続けていればかなり不味かったしれない。
「シャネル大丈夫か、今の本気だったんだろう」
「ああ。あの子マジで強いぜ、恐らく左手が利き手なんだろうな……さっきはゴンが右出したから右で応えたって所か……つうかマジで少女か、あの子」
「シャネルとほぼ互角とは……もしや強化系の念能力者か」
「可能性としては十分にあるな……ぉ~、俺もまだまだ鍛えねえとな」
この後ゴンは275連勝を記録した所で切り上げた。ゴンは275万、シャネルは195万、二人合わせて465万ジェニーを稼ぎ上げた事になり、総額約6500万ジェニーを有している事になるだが目標とする89億にはまだまだ遠く及ばない金額。
翌日も資金稼ぎは行われるのだが、そこで事件は起こるのであった………。
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