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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十八話 幹部候補生学校その九

「ちょっと高いな、と思うがな」
「千二百億ですからね」
「やっぱり高いですよね」
「それは否定出来ませんね」
「アメリカ軍と比べてもですから」
「そこは政治家さんにメール送るか」
 コーチもこうした考えになっていた。
「ここはな」
「はい、それじゃあ」
「それならですね」
「今はカレーを食べましょう」
「残さずに」
「そうだ、税金だからな」
 国民、つまり僕達のお金から出ているからだというのだ。
「残すなよ」
「はい、わかりました」
「それならです」
「おかわりをしても残しません」
「絶対に」
「禅宗のお寺と同じだぞ」
 不意にだ、コーチは宗教のことも話に出した。
「残すなよ」
「あっ、そういえばそうでしたね」 
 佐々木さんはコーチのお話を聞いてこう返した。
「お布施も受けますからね」
「実はうちの学園禅宗のお坊さんの資格も得ることが出来まして」
 コーチは佐々木さんに八条大学、僕達高等部の上の学園であるそこの話もした。この大学には宗教学部があるけれど普通の大学とは違う。
 仏教はかなりの数の宗派の僧侶の資格、それに神道の神主さんの資格に天理教の教会長さんの資格にだ。キリスト教の神父さんや牧師さんの資格も取れるのだ。
 それでだ、禅宗もなのだ。曹洞宗も臨済宗もだ。
「そこでそう言われてます」
「お布施を受けますし」
「はい、食べものは残さない」
「絶対にですね」
「例えどんなものでも」
 質、量共にどんな状況でもだ。
「残したらいけないんですよ」
「それがお寺ですね」
「特に禅宗は厳しいですね」
「そこは自衛隊以上ですね」
「イギリス料理もですか」
 イギリスからの留学生、僕達と同じ二年生のチャーリー=ロドネイ君の質問だった。
「それでも全部ですか」
「そうだ、全部だ」
「地獄ですね、それは」
 ロドネイ君はコーチの返事に笑って返した。
「僕は遠慮したいです」
「自国民なのにそう言うか」
「自国民だから言います」
 見事な返しだった、聞いていてそう思った。
「日本の料理と比べるとです」
「全然違うからか」
「こんなに美味しくないですよ」 
 カレーを食べながらの返事だった。
「というかこれがイギリス海軍のメニューを元にしたものですか」
「そうだぞ」
「イギリスにこんな美味しいものないですから」
「それでか」
「はい、ですからもうイギリス料理が出たら」
 それこそというのだ。
「僕残します」
「それがお寺だと出来ないぞ」
「難儀なお話ですね」
「ただそれあれだろ」
 コーチはロドネイ君に聞き返した、ここでのそれはというと。
「そっちの教会もだろ」
「宗教者ですからね」
「残せないな」
「はい、やっぱりそうです」
「宗教家は贅沢したら駄目だな」
「そうですよね、やっぱり」
「まあそれが普通だ」
 例外の人はいるにしてもだ、何処かのカルト宗教だと実際にお金や贅沢に溺れている人がいるから怖いものだ。
「そっちでもな」
「そうですよね」
「だから御前牧師さんになってもな」
「国教会のですね」
「イギリス料理でもな」
「残せないですね」
「ああ、どれだけまずいものが山みたいに出てもな」
 それでもというのだ。
「残したら駄目なんだよ」
「宗教家も大変ですね」
「例えば素人さんが洗剤で洗ったお米で炊いた御飯もな」
 聞いているだけで地獄だと思った、僕は。そんなものを食べるとなると。 
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