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ラブライブ! コネクション!!

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Track 3 STOMP:DASH!!
  活動報告15 みゅーじっく ・ すたーと! 2 『ファーストライブ』

 私達はお姉ちゃん達に憧れて、近づきたくてスクールアイドルになった。お姉ちゃん達を追いかけて頑張っている。
 だけど、それが『自分自身が本当にスクールアイドルになることを望んでいる』と言えるのか?
 それが『スクールアイドルを目指すだけの理由』になるのか?
 今の私なら、答えは NO だってハッキリと言える。
 だって、自分自身がスクールアイドルになりたいって思わなければ誰にも想いなんて伝わらないんだから!
 だって、自分自身がスクールアイドルが大好きだって思わなければ誰にも好きなんて思われないんだから!

 お姉ちゃん達だって、そうだったんだ。
 廃校を阻止する為に始めたスクールアイドル。だけど、もしも順風満帆(じゅんぷうまんぱん)に事が進んでいた状態で、廃校しないで済んでいたとしたら?
 お姉ちゃん達は、今でもスクールアイドルを続けていたのかな?
 自分の気持ちに気づかずに、目的を達成して終わっていたのかも知れない。

 つまりね? キッカケや目的は、あくまでもキッカケや目的に過ぎないんだ。
 だってスクールアイドルになるって言うのは、キッカケや目的が達成されたら気持ちが薄れるようなモノじゃないって思うから!
 スクールアイドルになるってことは『自分がやりたいから続けたいと願う意志』と『どんなことが起きても絶対にやり()げる決意』を、自分自身が気づくことが必要だったんだね?
 だけど、キッカケや目的が大きいとソコに集中してしまうから、肝心(かんじん)な部分が見えなくなっちゃうんだ。
 うん。私達も結局、お姉ちゃん達に近づくこと。私達だけのスクールアイドルを頑張ること。
 そんな目的に(とら)われすぎていたんだろう。
 確かに私達も、そしてお姉ちゃん達にも、スクールアイドルが好きだって気持ちは元々あったと思うよ? だから頑張れるんだろうし。
 始めるのはキッカケや目的でも良いんだと思う。
 でも、続けるのには好きだって想いが何よりも大事なんだよ。
 それも漠然(ばくぜん)と思っているんじゃなくて、自分自身の1番大事な想いとして心に刻み込むこと。だって――
 結局スクールアイドルは誰かの為(・・・・)にするものじゃない。
 自分がやりたいから、スクールアイドルが好きだからするものなんだ。
 そして自分自身が、その想いを深く刻み込んで、誰かの為に頑張るから誰かの心に伝わるんだと思う。
 私達の『スクールアイドルが好き』って気持ちが、楽しいって感じる想いが、誰かの心を動かすのだと思う。なんてね。
『自分がまず楽しめなくちゃ、ファンの人を楽しませることなんて出来ない!』
 これはきっと、お姉ちゃんがファーストライブで気づいた気持ちだったのだろう。今ならそう思える。

 自分の気持ちに向き合い、本当に望んで、続ける意志を心に刻む。
 だけど、それはファーストライブだけに限った話ではないんだよね。
 1つのライブを区切りに、新たに決意や想いを再確認して次へと進んでいく。
 そうして積み重ねていったから、今のお姉ちゃん達が存在するんだろうね。だから――
 そう言う再認識をすること。次へと繋いでいこうと願うこと。
 それが、ライブを開催する最大の目的(・・・・・)なんじゃないかなって思うのだった。

 私達は、こうしてお姉ちゃん――ううん。穂乃果さんのおかげで、本当の意味での『完敗からのスタート』を自分達の足で(・・・・・・)踏み出していたのだった。

♪♪♪

「――ッ!」

 まぁ? 今、日誌に書いていたことは家に帰ってから、お姉ちゃんに話を聞いて考えた部分なんだよね?
 だから、あの時は普通に自分の想いを再確認して頑張っていこうって感じていただけ。
 そして、気づかせてくれたお姉ちゃん達に感謝の気持ちで一杯になっていただけだった。

 そんな私は、講堂の外が騒がしくなってきたことに気づく。
 そうなんだ。私は自分達のライブ時間から、だいぶ時間が経過していたことに気づいた。
 つまり、お姉ちゃん達のライブ時間が迫っていたんだよ。だから、声の持ち主は当然お姉ちゃん達のライブを見に来た生徒達なんだよね?
 ――まぁ、今更言っても仕方ないのは理解しているんだし、私が提案したんだから何も言えないんだろうけど?
 お姉ちゃん達――今日(・・)ライブするのって間違っているんじゃない?
 いや、ライブをするのは良いと思うよ? でもさ、今日はマズイんじゃないかな?
 だって、今日は部活説明会の日なんだから!
 私達のライブは部活説明会の方が優先されるから問題ないんだろうけど?
 今のお姉ちゃん達の人気を考えると、どうしてもライブが優先されちゃうんだろうし。
 つまり、肝心な部活説明会そっちのけでライブに集まるってことなんだから!
 生徒会役員としては、どうなのよ? って考えたんだよね。
 とは言え、お姉ちゃんだけならともかく! 
 海未さんがソコを考えいないなんて、思ってはいないんだけどね?
 少し気になったからお姉ちゃんに聞いたんだけど案の定、海未さんがキチンと考えていたらしい。
 どうやら今年の部活説明会は、日を改めて実施されるんだって。
 今日は部活説明会の日時を書いたチラシを配るだけみたい。
 だから気になる部活のチラシを(もら)うだけだから、別にそんなに時間はかからないんだって。

 でも、その話を聞いて――
 日を改めるってことは自分の気持ちに向き合える時間があるってこと。
 ちゃんと自分のやりたい部活を選んで、説明会に参加ができるってこと。
 つまり、お姉ちゃん達のファーストライブや私達のファーストライブと同じなのだろう。
 自分達の経験からと、自分達のライブへ来てくれる人達への考慮(こうりょ)なのかな。
 時間に(しば)られることなく、自分自身の気持ちと向き合えるように。
 そう、自分の本当にやりたいことを選べるように。
 と言うよりも、そもそも入部届に込められた意味がそうだったんだよね?
 うん。目的に囚われていた為に、私達は入部届の意味にも気づけていなかったんだ。
 今更な話なんだろうけど、私はそんなことを思い出して心の中で苦笑いを浮かべるのだった。

♪♪♪

 そんな風に心の中で苦笑いを浮かべながら入り口の方を眺めていると、沢山の生徒が講堂へと入ってくるのが見えた。
 それは、もう! 全校集会でもあるのかなって、錯覚するくらいに!!
 まぁ、お姉ちゃん達のライブなんだから当たり前なんだろうけどね?
 そんなことを思っていたら、先頭に海未さん、ことりさん、花陽さん、凛さん、真姫さんの姿を見つけた。しかも全員まだ制服のままだし。まぁ、お姉ちゃんもなんだけどね?
 だけど、ライブの主役がお客さんと一緒に入ってくるって!?
 一瞬驚いたんだけど、学院のライブなんだし、部活説明会の一環だからなんだろうなって苦笑いを浮かべて心の中で思いなおしていた。
 親しみやすいって部分もお姉ちゃん達の魅力だろうから。なんてね。

 海未さん達は階段を下りて近づいてきた。後ろを歩いていた生徒達も、前の方から席へと移動している。
 だけど前の方にいる絵里さん達、ツバサさん達に気づくと歓喜の声を上げていたのだった。
 まぁ、有名人ですからね? 気持ちはわかりますよ?
 でも、まだ私達ってステージ上にいるんだけどね? まぁ、仕方ないんだろうけど。
 そんなことを苦笑いの表情で見ていた私達に気づいた数名が、笑顔で手を振ってくれていた。
 私達も笑顔で会釈(えしゃく)を返す。
 すると、他の人も前に倣え状態で、私達に手を振ってくれるのだった。

 その間、海未さん達は絵里さん達と立ち話をしていた――って、何で!?
 いやいや、お姉ちゃん達これからライブなんだよね? しかも、制服のままじゃん!
 もう、お客さんも半分以上入っている状態なのに。
 ――なんて思っていたんだけど、それ以前に私達がステージにいるのも不自然な話だろうって気がついた。
 だって、私達のライブはとっくに終わっているんだもん。お姉ちゃん達のライブが迫っているんだからね?

 私だけじゃなくて亜里沙と涼風も今気づいたみたい。私達は同じような苦笑いの表情で目配せすると、ステージを下りようと舞台袖へと歩き出したのだった。すると――

「……あー! たいへんだー!」
「――えっ!?」

 突然背後から、あからさまに棒読みだってわかる口調でお姉ちゃんが声を上げる。
 私達が驚いて足を止め、お姉ちゃんの方を見つめると、今度は海未さんが――

「わたしたち、まだ制服のままでしたー」
「あー、ほんとうだー! どうしようー! いしょうチェックしないとだしー」

 同じように棒読みで声を上げる。その言葉に、ことりさんが言葉を繋げる。
 唖然と見つめる私達を余所(よそ)に――

「打ち合わせもあるのにー! もう、おきゃくさん半分いじょう入場しているよー」
「ダンスもチェックしないと、いけないニャー! まだライブは、はじめられないニャー!」

 花陽さんと凛さんが言葉を繋げていた。と言うより、なんで全員棒読みなの?
 そもそも、わかっていて話し込んでいたんじゃないの!?
 そんな感じで、正直言っている意味が理解できないでいた私達に苦笑いを浮かべながら――

「……まぁ、これは誰かに前座(・・)でもしてステージを温めておいてもらわないとダメね?」

 真姫さんが、そんなことを言い切るのだった。
 まぁ、ライブが開始できないんだから、誰かに前座をしてもらうのが妥当なんだろう。
 いや、普通に待っていてもらうだけでも良いんじゃない?
 そもそも、お姉ちゃん達は今まで1度だってそんなことをしたことはない。
 それに、突然前座なんて言っても誰もいないんじゃ?
 私はそこで、あることに気づいた。そう、適任者(てきにんしゃ)がいることを!
 えっ、その為に呼んだの? そんなサプライズ??

「…………」
「…………」

 私は咄嗟(とっさ)羨望(せんぼう)眼差(まなざ)しで絵里さん達を見つめる。
 そう、絵里さん達にしろツバサさん達にしろ彼女達以上の適任者なんていないじゃん!
 だから、お姉ちゃん達は芝居をしたんだろうと思っていたのだけど。
 絵里さんは私の眼差しに気づくと苦笑いを浮かべて「生憎(あいにく)だけれど、私達ではないわよ?」と言いたげに首を横に振るのだった。
 まぁ、冷静に考えれば? 先輩後輩を禁止しているとは言え、絵里さん達は卒業生。お姉ちゃん達よりも目上(・・)なんだ。
 目上の人を前座にするなんてお姉ちゃん達が考える訳はないだろう。
 更にツバサさん達は完全なお客さんであり現役のアイドルなんだから、どう考えても頼まないと思う。
 でも、そうなると誰が務まるの? 他に誰もいないじゃん!
 そんな風に自分達のライブでもないのに、何故かパニックに(おちい)りかけていた私の耳に――

「そんな訳だから、雪穂と亜里沙ちゃんと涼風ちゃん? 私達の前座をお願いできるかな?」

 ごく自然に紡がれたお姉ちゃんの言葉が聞こえてきたのだった。

♪♪♪

「…………」

 私はお姉ちゃんの言葉を聞いて、すぐに言っていることが理解できた。
 そうか、そう言うことだったんだね?
 お姉ちゃん達は最初から私達を、お姉ちゃん達と一緒のステージに立たせる(・・・・・・・・・・・・)つもりだったのだ。
 
 海未さん達が他の生徒と一緒に講堂へ入ってきた理由。来るのが早いと、私達が生徒達の入ってくる前にステージを下りちゃう可能性があるから。
 半分以上の席が()まるまで話し込んでいた理由。時間に余裕があれば準備が間に合うと思われるだろうから。
 そして芝居だってわかるようなやり取りをした理由。私達が自然にお姉ちゃん達の前座を出来るように、一緒のステージに立てるように、私達を立てて(・・・)くれたのだろう。

 そう、私達はお姉ちゃん達とのライブの時間をずらした。私達だけのライブをする為に。
 それに関して、全員が了承して応援してくれていた。でも――
 現実を知っているから。辛い結末でファーストライブを終わらせたくないから――ううん、違うね?
 同じアイドル研究部の仲間として同じステージに立ちたいって、そう思ってくれたんだろうね。
 それでも、私達のことを尊重してくれた。そして、今も。
 アイドル研究部の先輩なんだから、命令することもできるはず。自分達の前座をやりなさいって。
 後輩としては命令されれば、否応(いやおう)なく前座をすることになるだろう。
 でも、お姉ちゃん達は命令(・・)ではなくお願い(・・・)をしてきた。
 それは、私達が自分達だけのスクールアイドルを目指しているのを知っているから。
 後輩としてではなく、同じスクールアイドルの仲間として私達を見てくれているからなのだろう。
 だから、命令ではなく――あくまでも『自分達が間に合わないから、それまでの間の前座をお願いしても良い?』と言う風に、自分達の落ち度として私達に頼っているように、私達を立てた『お願い』にしたんだろう。

 まぁ、これだけ大勢の生徒の前でお願いされて断れる訳もないんだけど? 
 ましてや、お姉ちゃん達のファンを前にして!
 それこそ私達の今後の活動に左右されかねないんだしさ? なんてね。

 それに、お姉ちゃんの瞳が。ううん、みんなの瞳が――
『純粋に、ひたむきに、自分の進むべき道だけを見据みすえて。それだけの為に自分のすることは正しいと、間違っていないと、我がままだろうと押し通す瞳』をしていたんだから、私達が断れる訳はないんだよ!
 だって、その瞳の見据える先には必ず明るいミライが待っているんだから! なんてね。

 と言うよりも、私は初めから断るつもりなんてなかったんだよ?
 だって、私達は気づいたんだから! 自分の想いに。
 私達はスクールアイドルが好きだから活動しているんだ。好きだから歌って踊っているんだ。
 前座のステージは私達が頑張って勝ち得たことじゃない。あくまでも、お姉ちゃん達が与えてくれたことだけど。
 私達の『もっともっと歌って踊りたい』って気持ちの前では些細(ささい)なことなんだから!
 そう、これも立派な『偶然と言う名の奇跡の欠片』であり『チャンスの前髪』なんだと思う。
 だったら私達は与えられた奇跡の欠片を、チャンスの前髪を握り締めるだけなんだ!

「「「……ありがとうございます! 精一杯、頑張ります!」」」

 そう感じた私達は、お互いを見つめて微笑みを交わすと、お姉ちゃん達に向き合い感謝を述べて、前座を受ける意志を伝える。
 私達の表情と言葉を受けたお姉ちゃん達は安堵(あんど)の笑みを浮かべていた。
 やってくれると信じていたかも知れないけど、体力的な面とか精神的な面とか。
 やる気だけでは通用しない部分の心配があったのかもね? 私達にとっては初めてのライブを終えたばかりなんだし。
 だけど、私達が意志を伝えたことで一安心したんだろう。
 お姉ちゃん達は私達を笑顔で見つめると、何も言わずにステージの袖へと歩き出したのだった。
 
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