FGOで学園恋愛ゲーム
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二十三話:プールサイド
『わくわくざぶーん』女子高生のわくわくして、ざぶーんとしたい、という素直な意見から名づけられたプールである。
夏は普通のプールとして、冬は温水プールとして人気を博している。
『俺は俗にいう、ハーレム状況にいるのではないか?』
プールサイドに一人で立ちながら、ぐだ男は呟く。
今日はジャンヌ・オルタ、ブリュンヒルデ・清姫の美少女達とプールに来たのだ。
それも、男はぐだ男一人だけ。まさにハーレム状態である。
「羨ましいですね、お兄さん」
『誰もが憧れる状況にいるからね、俺は。ところで、ギル君はなんでいるのかな?』
「ぼくは、ここのオーナーですから」
聞きなれた声が足元から聞こえてきたので、返事をしながら視線を落とす。
金色の髪に、少女かと見間違えるほどの美貌。
ここ『わくわくざぶーん』のオーナー、ギル君こと子ギルである。
『そうなの?』
「はい。今日のお兄さんみたいに、面白そうなお客さんには、声をかけて回っているんです」
『例えばどんな人が?』
「そうですね、お兄さんと同じ状況の人があちらに」
子ギルが指さした方を見ると、そこには大勢の女性に取り囲まれる男がいた。
「あの、お言葉は嬉しいのですが、私にはお嬢様方をお相手する時間がないのです」
「はっはっはっ。いいじゃないか、ディルムッド。どうせ、それと知らずに、その魔貌でお嬢さん方を誘惑したのだろう? バチコーン! バチコーン! とね」
「いえ、決してそのようなことは……」
大勢の女性から、逆ナンをされるディルムッド。
それを笑いながら、おちょくるフィン。
男であれば嫉妬するような状況だが、ぐだ男は憐みの視線を向けることしかできなかった。
『モテすぎるのも辛いんだね……』
「お兄さんも、他人事じゃないと思いますよ?」
『よし、他にはどんな人がいるのかな?』
「そういう切り替えの早いところは、嫌いじゃないです。後は……そうですね、あそこの太ったお方なんて面白いですよ」
残酷な現実から目を逸らし、今度はパラソルの下で寝そべる太った男性を見る。
ピザをむしゃむしゃと食べ、コーラをぐびぐびと飲むDEBU。
何か起きたら、まずは奴を疑えと言われる男、ユリウス・カエサルその人である。
「ふー、実に良い。バカンスとはこうして怠惰を貪るものでなくてはな」
『うーん……実に堕落的な生活だ』
「確かに、あれはあれで愛でようがありますが、本当に面白いのはここからです」
完全に、リラックスモードに入っているカエサル。
しかし、その余暇を砕く者が現れる。
「ドーモ、カエサル=サン。サー=ガウェインです。借金の返済をお願いします」
軽くウェーブのかかった金髪に、鋭い青眼。
手には剣を携え、一部の隙もなく構える、太陽の騎士ガウェイン。
だが、プールなので律儀に海パン一丁である。
「うむ、わざわざこのような場所まで来るとは、いささか野暮ではないかね?」
「御託は良いのです。いいから払いなさい」
「そうは言われてもな。今ここで私が倒れれば、融資者である君達もただではすむまい」
最強の借金取りに対して、得意の弁論を始めるカエサル。
彼には国家予算並みの借金をしながらも『自分が倒れれば、負債を負うのはお前だぞ。だから、もっと私に金を貸して出世させるのだ』と言って、さらに資金を提供させたという逸話がある。
それほどに、彼の弁論と戦略は優れたものであるのだ。
しかしながら、太陽の騎士の行動は非常にシンプルなものであった。
「午前の光よ、借金を返したまえ!」
容赦なく聖剣を振りかざし、カエサルに襲い掛かる。
カエサルは舌打ちをしながら避けるが、その表情から余裕は消えていた。
「暴力か。ああ、実に、実に、合理的だ! 弁舌で勝てぬ相手ならば、有無も言わさずに斬りかかれば良い。私でもそうする。いかにペンは剣よりも強しと言えど、ペンを握る手を斬り落とされれば、どうすることもできぬからな!」
「さあ、ローマよ。我が王の威光の前に、財布を差し出すのです! あのルキウスのように!」
「適材適所ではないな。一騎当千の騎士を相手にするには、私ではいささか荷が重い」
一片の曇りも苦渋も無く、取り立てに来る太陽の騎士に、カエサルは高速で思考を行う。
得意の弁論は封じられ、筋の通った言い訳も聞く耳を持たない。
ならば、残された道は1つ。
「―――逃げるに限る」
三十六計逃げるに如かず。
形勢が不利であれば、後ろを振り向くことなく逃げるべきである。
しかし、太陽の騎士がそれを認めるはずもない。
「この剣は太陽の映し身。かつ負債を回収するもの……エクスカリバー―――」
借金を背負うものを確実に捕まえるために、聖剣の力を開放する。
それでいいのかと問いたくなるが、王のためならば泥を被るのも覚悟の上だ。
太陽の力の一端を今まさに、解き放つ―――
「はいはい。他のお客さんの迷惑になるので外でやってくださいね」
だが、二人の体は黄金の鎖によって絡めとられてしまう。
肌の露出の多い服で拘束と書けば、青少年の喜びそうな展開だが現実は酷いものである。
ガウェインはまだ、お姉様方が喜びそうな姿だが、カエサルに関しては目も当てられない。
ローマ人全ての、夫であり妻であると言われた男も、こうなれば形無しである。
「この二人、どうしましょうか?」
『ダストシュートから、外に出せばいいんじゃない?』
「それもそうですね、では」
反論も反抗も許さぬように、素早く二人を排除する子ギル。
公共の福祉に反する人間には、罰が与えられるものだ。
『悪は去った』
「はい。これで穏やかな休日が戻ってきますね。それでは僕はここで」
『じゃあね』
「ええ、お兄さんはしっかりとお姉さん方を褒めてあげてくださいね」
子ギルの言葉に、首を傾げるぐだ男だったが、すぐに理由は判明する。
「旦那様、お待たせしました」
振り向くと、そこには恥じらい気味に立つ清姫がいた。
身に纏うのは、少し表面積が少なく感じる水色のビキニ。
着やせするタイプなのか、予想よりも大きなバストが強調され、色気を放つ。
『可愛いね、清姫にぴったりだ』
「まあ、ありがとうございます。この日のために何か月も前から準備してきたかいがありました」
にこやかな会話であるために、ぐだ男は気づかない。
彼自身は清姫と会ってからまだ、一か月程度しか経っていないという事実に。
『あれ、後の二人は? まだ着替えているの?』
「いえ、一緒に更衣室から出てきたはずなのですが―――」
「あー! ちょっと匿いなさい、ぐだ男!!」
ジャンヌ・オルタの声に視線を向けるが、あっという間に、背後に回られ盾にされる。
何事かと戸惑うぐだ男だったが、原因はすぐに判明する。
「お姉様、日焼け止めクリームを塗らないとダメですよ。だから、今すぐに私がお姉様の肌にしっとり、ねっとりと」
息を荒げ、頬を紅潮させたブリュンヒルデが現れる。
彼女の水着は大胆な白のモノキニ。前からはワンピースに見え、後ろからはビキニに見えるものだ。
彼女の完成された肉体と合わさり、まさに戦乙女といった、神秘的な美しさを醸し出す。
もっともセリフで台無しであるのだが。
「表現が嫌らしいのよ! 大体、室内プールなんだからそんなに焼けないわよ!」
「……最近は紫外線の浴びすぎで、皮膚がんになることもあるんですよ?」
「そ、そんなの、偶にでしょ?」
ブリュンヒルデの言葉に不安になり、尻すぼみになるジャンヌ・オルタ。
実際問題、白すぎるといっても過言でない彼女の肌は、日差しに弱い。
そうした事情があるので、彼女はブリュンヒルデの申し出を突っぱねきることができないのだ。
『別に、ブリュンヒルデ以外に、塗ってもらうんならいいんじゃない?』
「それよ! それ! 別にあんたじゃないとダメなんて理由はないんだから」
ぐだ男の提案により、パッと顔を明るくするジャンヌ・オルタ。
ブリュンヒルデの方は悔しそうな顔をするが、事実のため何も言い返せない。
「じゃあ、ぐだ男。あんたが塗りなさい」
『え! 俺でいいの!?』
「…あッ! 違う、違う! 今のは、う―――」
まさか、自分が指名されるとは思わず、裏返った声を上げるぐだ男。
ジャンヌ・オルタの方も無意識で言っていたのか、今になり相手が異性だということに気づき、慌てて否定しようとするが。
「嘘……ですか?」
この世から噓を無くすと言って、はばからない清姫に止められてしまう。
「う、嘘じゃないわよ! 別に…」
「では、間違いですか?」
「私が間違いなんてするわけないでしょ!」
普段から馬が合わない性格のために、売り言葉に買い言葉とばかりの会話を繰り広げる。
だが、嘘をつくこともできず、素直に間違いを認めることができないとなると。
「つまり、旦那様に日焼け止めを塗って頂くということで間違いありませんね」
「う…っ。そ、そうよ。別に構わないわよ……変なとこに触れないなら」
初めに言ってしまったように、ぐだ男に塗ってもらうしかなくなる。
何故こうなってしまったのかと、後悔からプルプルと震えるジャンヌ・オルタを横目に、ぐだ男は清姫に耳打ちをする。
『でも、良かったの、清姫。俺、男だよ?』
「はい。確かに旦那様が他の方に触れるのは、少し、すこーし、複雑な思いですが……」
『ですが?』
「この世からまた一つ嘘が消えましたので。次に旦那様に、塗ってもらうことで我慢いたします」
己の信念を貫き通して見せた清姫は、朗らかに笑って見せる。
しっかりと自分の利益を確保しながら。
「そんなところで話してないで、さ、さっさと、終わらせなさいよ!」
『分かった。じゃあ、背中向けて。前は自分で塗れるでしょ?』
「当たり前でしょ。ほら、早くしなさい」
緊張しているのか、声を震わしながら促すジャンヌ・オルタ。
ぐだ男の方も緊張から、乾いた唾を飲み込み、ゆっくりと彼女の体に手を伸ばす。
「…っ!」
『あ、ごめん。痛かった?』
「べ、別に、何でもないわよ。とっとと終わらせなさい」
ビクッと体を震わせながら、彼女は零れそうになる声を抑える。
ぐだ男の方も、予想の何倍も柔らかく、触れれば簡単に傷つけてしまいそうな肌に戸惑う。
お互いに恥ずかしくて仕方がなくなるが、他の二人に見られているので必死に耐える。
「…つぅ…! ……んッ」
『本当に大丈夫…?』
「へ、平気だって言ってるでしょ…っ」
顔を赤くして、こちらを睨みつけてくるジャンヌ・オルタ。
その姿に、ぐだ男は思わず、自分が彼女を汚しているような錯覚を覚えてしまう。
しかし、すぐに頭を振って邪念を振り払い、作業を終える。
『はい、終わったよ』
「はぁ…はぁ…やっと終わった……変な気分になっちゃったじゃない」
『なんか言った?』
「な、何でもないわよ! とにかく、あんたのせいよ!!」
若干涙目になりながら、ぐだ男にあたるジャンヌ・オルタ。
ぐだ男の方は理由は分からないが、取りあえず頭を下げる。
だが、それだけでは彼女の気持ちは収まらなかった。
「とにかく動いて忘れましょう! 25mプールで競争ね! 負けたらアイスおごりなさいよ!!」
『ジャンヌ・オルタが負けたら?』
「フン。女性に奢ってもらうような甲斐性なしなの、あんた?」
『ずるい……』
「うるさいわね。いいから行くわよ! ほら、あんた達もよ」
そして四人は、ジャンヌ・オルタを先頭にして、レジャーを満喫していくのだった。
「あー……疲れた」
『今日はよく遊んだ……』
流れるプールにて、浮き輪に乗って流されて行くジャンヌ・オルタとぐだ男。
そろそろ日も沈みかけており、客の数もまばらになってきている。
因みに清姫とブリュンヒルデは、最後にウォータースライダーに乗ってくると言って、ここにはいない。
『結局、競争は俺の勝ちだったね』
「ノーカンよ、ノーカン。途中でバタフライするレオニダスを見て、吹き出したから負けたのよ」
苦々しげに、言い訳をするジャンヌ・オルタ。
確かに、レース中に偶然、日課のトレーニングをしていたレオニダスと会ったのは仕方がない。
まるで、トビウオのように、水面から飛び上がりながら泳ぐ姿を見て、吹き出すなという方が無理だろう。
『笑いながらでも、勝てるぐらいに肺活量をつければいいだけ』
「どんな脳筋的発想よ、それ」
『レオニダスさんは言っていたよ。10倍の敵に勝つには1人で10人分戦えばいいだけだって』
「間違ってるでしょ、それ! 計算はあってるけど何かが間違ってるわよ!!」
疲れている体に鞭を打ち、ツッコミを入れるが、スパルタ式数学に間違いはない。
重装備をしなければ敵の攻撃が防げない。軽装でなければ素早い機動ができない。
そんな時にどんな計算すればよいか、答えは単純だ。
重装備をしたまま、素早く機動できる筋肉をつければいいだけだ。
『ジャンヌ・オルタだって、最高に頭の良い方法とか言って、スターを集めてバスターで殴るってやってるじゃん』
「私のと一緒にしないでくれる! 私のはインテリ戦法よ!」
その後も、二人して水面に浮かびながら言い争う。
もっとも、ぐだ男の方には言い争っている気はないのだが。
『ねえ、ジャンヌ・オルタ』
「はあ? なによ、まだ文句でもあるの」
そんな中、ふと思い出したようにぐだ男がつぶやく。
ジャンヌ・オルタの脳内を混乱に陥れる言葉を。
『ジャンヌ・オルタの水着が一番ドキドキした』
それまでの流れを断ち切り、突如として落とされた爆弾発言。
一瞬、ジャンヌ・オルタは何を言われたか分からずにポカンとするが、次の瞬間には顔を真っ赤にする。
「な、な、なな何言ってんのよ!? 頭でも打ったわけ!?」
『いや、水着を褒めてなかったから。今更だけど言いたくなった。すごく、綺麗だよ』
「はあ!? お世辞なんていらないわよ。私が綺麗とかあるわけないでしょ!」
混乱して、とにかく今の言葉を否定させようとしているジャンヌ・オルタに、ぐだ男は真剣な声で返す。
『そんなことない。黒のビキニが凄く似合ってるし、小さ目に入った柄も女の子らしいよ』
「う…う、うるさいわね。水着ばっか見てんじゃないわよ、変態!」
『どっちかというと、ジャンヌ・オルタばっかり見てた』
「だ、だから、気持ち悪いこと言ってんじゃないわよ…!」
喜べばいいのか、怒ればいいのか、決めかねてバシャバシャと水をかけてくるジャンヌ・オルタ。
そんな彼女に、ぐだ男は満面の笑顔でとどめを刺す。
『そういう素直じゃないところも、可愛いよ』
放たれた可愛いという言葉に、ゆでだこのように赤くなるジャンヌ・オルタ。
そして、恥ずかしさから目に涙をためて、ブルブルと震えながら小さく口を開く。
「……殺す」
『え?』
「あんたを殺して私も死んでやる!!」
恥ずかしさが殺意に変わり、容赦なくぐだ男をプールの底に沈めようとする。
具体的には、頭部に打撃を加えて意識を奪うという方法で。
『ちょっ! こんなとこで無理心中はダメでしょ!』
「うるさい! うるさい! うるさい! いいから黙って死になさい!!」
顔を真っ赤にしたジャンヌ・オルタとぐだ男のリアル鬼ごっこは、清姫達が帰ってくるまで続くのだった。
後書き
士郎「イリヤの水着に一番ドキドキした」
メドゥーサや我が王などのキレイどころよりもロリで姉なイリヤを選んだ主人公。
なお、無銘になると「かわいい子なら、誰でも好きだよ」と発言する模様。
さて、気づけば十月も半ば。
せっかくなんで夏休みはあと一話ぐらいで切って二学期に入ろうかなと思います。
体育祭に文化祭とイベントがありますからね。
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