僕は生き残りのドラゴンに嘘をついた
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第0話 ドラゴン、隠された穴から出てくる
少年は〝それ〟を見ると、悲鳴をあげ、その場所で尻餅をついてしまった。
「な……なんで……」
かすれる声で辛うじて言葉を絞り出す、亜麻色の髪の少年――ソラト。
十五歳を迎え、ギルド登録を済ませたばかりの初級冒険者だった。
『山頂近くに生えている薬草を採取』
初めて受けた、その依頼。初級者用の簡単な仕事のはずだった。
ギルドからも「今はもう安全な山なので、一人でも大丈夫」と言われていた。
しかし……山頂近くの急斜面の下。
少し地面が揺れたと思ったら、溜まっていた瓦礫が突然崩れ、斜面に大きな横穴が現れた。
そして、そこから姿を見せたのは――
かなりの前傾姿勢にもかかわらず、少年の二倍以上はあろうかという背丈。
逆三角形の額と、厚みのある顎を持つ頭。やや長いが力強さのある首。鱗に覆われたスマートな体。
畳まれている翼。その先端にある鉤爪。そして、長く伸びる尾。
ドラゴンだった。
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