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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第3章:再会、繋がる絆
  第68話「始動」

 
前書き
さて、大量のキャラをどう動かしていくか...。
(小説で一番きついのって、個人的にこういう所だと思う。)

何気に優輝の両親の名前が出てない...。という訳で↓
母親:優香(ゆうか) 父親:光輝(こうき) 

 






       =優輝side=





「...っ、ぁー...!」

 ベッドから起き上がり、大きく伸びをする。
 ...なんか、久しぶりな気がするな。しっかり休んだの。
 一応、昨日もしっかり休んだはずだけど。

「(霊力は...全快してるな。)リヒト、シャル。調子はどうだ?」

〈良好です。〉

〈同じく。〉

 二機の返事に僕は満足に頷く。
 さて、後は...。

「...っと、シュライン。ずっと僕のリンカーコアを癒しててくれたんだな。」

〈いえ、実質私という人格は優輝様方のように休んでいました。リンカーコアを治癒していたのは、ジュエルシードの効果です。...その、お礼を言われる事ではありません。〉

「そうなのか?...でも、だいぶ治ってるからな。それでもありがとう。」

 “だいぶ”と言っても、まだ五分の一未満だ。
 今日もずっと治してもらう事になるし、これでも十分かな。

「椿、起きてるか?」

「ええ。もちろんよ。」

 下のベッドで寝ていた椿に話しかける。
 ちなみに、僕らが寝ていたベッドは二段ベッドで、僕は上で寝ていた。

「霊力も回復しているわ。これなら...。」

「ああ。」

 とりあえず、起きたのなら軽い運動をしようかな。

「椿、僕はトレーニングルームに行くが...。」

「私も行くわ。軽く体を動かしましょ。」

 そうと決まれば、僕らは支度をしてトレーニングルームに向かった。









「...ふぅ。よし、体もほぐれたな。」

「...思ったより早い時間だったのね。」

 軽く体を動かした今の時間が、6時半。...確かに早いな。

「...今日あるであろう戦闘のため、体力は温存しておくか。」

「そうね。...そうとなれば、どうするの?」

「適当に歩き回ろう。誰か起きているかもしれないし。」

 汗を流すためのシャワーを浴びて着替えるついでに、そうする事に決める。
 ...そういえば、母さん達ってまだ来てないのかな?







「...あ。」

「あ。」

 シャワーを浴び、着替えを済ませた所で、廊下でばったりと母さん達に遭遇する。

「久しぶりね、優輝!」

「わぷっ...っと、久しぶり。母さん、父さん。」

 出会い頭に抱き締められながらも、僕はそう言った。

「結構早朝に来たと思ったのだけど、もう起きてたのね。」

「早起きだからね。母さんと父さんこそ、随分早い時間に来てるね。」

「ただ中途半端な時間にアースラに着いただけだ。」

 通りでこんな所でばったり会う訳だ。

「椿ちゃんも久しぶりね。」

「え、ええ。...随分と嬉しそうね...。」

「当然よ!久しぶりに会えたもの!」

 プリエールで再会してから、母さんは久しぶりに会う度にテンションが高い。
 椿もそのテンションは苦手のようだ。

「優香、今はそれどころじゃ...。」

「っと、そうだったわね...。...事態は深刻そうね。」

 父さんが母さんを止める事で、真剣な雰囲気になる。

「ジュエルシードか...。一応、俺たちにも関係はあるんだよな...。」

「助けてもらったプリエールに伝わる秘宝だものね...。」

 そういえば、二人はプリエールで再会するまでは生きてきた。
 だから、その世界に伝わるジュエルシードにも思う所はあるのだろう。

「....とりあえず、朝食を食べましょう。中途半端な時間に着いたから、お腹減ってるのよ...。」

「...仕方ないな、母さんは...。食堂、もう開いてたっけ?」

「一応ね。」

 そうと決まれば食堂へ行こう。
 ついでに、僕らも朝食を取ればいいな。







「...ところで、葵ちゃんは?」

「っ....。」

 朝食も食べ終わり、満腹の余韻に浸っていると、母さんがそう話を切り出す。

「...葵は...今はいない。」

「...事情は聞いたが、まさか...。」

 いくらか事情を聞いたのか、父さんが察したような表情をする。

「...生きてる。葵は生きてるわ...。」

「ああ。...少なくとも、僕らはそう思っている。」

「...そうか...。」

 洗脳されているか、殺されているか。
 結局、葵に関してはそのどちらかだと思われている。
 でも、それでも僕らは葵は生きていると信じている。...母さんと父さんの時のように。

「...ごめんなさい、こんな事聞いちゃって...。」

「謝る事ではないよ。」

 母さんが申し訳なさそうにするが、別にそう思う必要はない。
 ...葵は、絶対に生きているんだから...。

「....ねぇ、その...司ちゃんって子について、教えてもらえないかしら?」

「司さんについて?」

 おそらくクロノから司さんという存在については聞いたのだろうけど、どうして...?

「私たちは覚えていないどころか、知らないから...。」

「あ...そういえば、二人は司さんの事知らないんだったっけ...。」

 そう。両親と再会したのはプリエールで、司さんがいなくなったのもプリエール。
 ちょうどすれ違う形だったので、二人は一切司さんについて知らないのだ。

「...わかった。僕が知りうる限りの司さんの事、教えるよ。」

 必ず彼女を助けるためにも...ね。
 ...あ、もちろん転生に関わる事は省くよ?







「...なるほどね...。」

「優しい子なんだな...。」

「うん。...その代わり、自身を顧みないけどね...。」

 粗方説明し終わり、父さんがそんな感想を漏らす。

「...司さんは、報われるべきなんだ...。だから、絶対に助けないと...!」

「...その子の過去に一体何があったの?」

「...言えない。僕だけは知っているけど、司さんからすれば、他の人がその事情から説得しに行っても、説得力がない。拒絶されるだけだと思う。」

 応じてくれるとすれば、それこそ僕のように、司さんの前世を知っていないと...な。

「そう...。...辛い過去なのよね?」

「それこそ、自分がいなくなればいいって思うほどには...だろうね。」

「......。」

 僕の言葉を聞いて、母さんは考え込む。

「...その子の両親はどうしているんだ?」

「司さんの両親は魔法は知っているけど使えないからね...。魔導師としての行動を容認しているだけで、普通に暮らしているよ。...今は忘れているけど。」

「そうか。」

 同じ親として少し気になったのだろうか?

「....要となるのは優輝なのね?」

「多分ね。」

「分かったわ。私たちも、全力でサポートするわ。」

 自惚れ抜きで、司さんに話が通じるのは司さんの前世を知る者としての僕のみだろう。
 他の人では前世は知らないし、どんな目に遭ったかも知らない。

「まぁ...まずは、目の前の事からだがな...。」

「そうだね....。」

 気持ちを切り替え、ジュエルシードの事に集中しようと思った。
 その瞬間...。

「っ...!アラート!?」

「まさか...!」

 突然食堂に鳴り響くアラート。
 これが鳴るという事は、当然緊急事態が発生したという事だ。

『皆!すぐに会議室に集まってくれ!!』

「了解!!」

 クロノから通信が入り、急いで向かう。





「何があったんだ!?」

 会議室に入ると同時に、僕はクロノにそう聞く。
 既に何人か来ており、同じように気にしていたようだ。

「....ジュエルシードが、一斉に発動した。」

「なっ...!?」

「詳しくは皆が集まり次第話す。」

 その一言だけでも、緊急性が理解できた。
 ...何個あるかは不明だが、地球上のジュエルシードが一斉に発動したんだ。
 その危険性は計り知れない。

「一つ一つがあのレベルだとすれば....っ、数によっては対処しきれるか...?」

「分からないわ...。...はやて達が間に合ってよかったわね。」

 一つだけでも椿の再現のように強い場合があるのだ。
 久遠のおかげで突破できたが、あれはなかなかに強敵だった。

「....集まったな。」

 少しすれば、全員が集まり、クロノが話し出す。

「これを見てくれ。海鳴市全域の大きな魔力反応を感知するレーダーだ。」

 映し出されるのは、海鳴市と隣接した海の一部を写す地図だった。
 所々に白いマーカーみたいなのがあるが...。

「そのマーカーは全てジュエルシードの反応だ。」

「っ....!」

 一斉に発動したとは言っていたが...五つか...。
 しかも、そのうち二つはどちらも海鳴臨海公園か...。片方は一際反応が大きい。

「これを見ればわかる通り、ジュエルシードが一斉に発動している。ジュエルシード自身が結界を張っているため、被害はまだないが、放置しておくわけにはいかない。」

「...つまり、これらを回収しに?」

 一遍に見つけた場合を想定して、複数のチームを作るように言っていたが...。
 まさか、ここでそれが役に立つとはな...。

「ああ。そうしてくれ。...ただし、偽物には気を付けろ。いや、それだけじゃない。ジュエルシードそのものも危険だ。しっかりチームを組んで、それから向かってくれ。」

 クロノはそう言ってチームを組ませ始める。
 さて、僕の場合は...。

「母さんと父さんと椿...妥当すぎる...。」

「連携を取り合う二人組を組み合わせたのね。...確かに妥当だわ。」

 こういうのは、メンバー同士の関係も重要だからな。
 そう考えると、家族である僕らはぴったりなんだが。
 それと、戦力から考えてもこの人数で十分だしな。

「さて、すぐに向かうぞ!エイミィ、アースラからのバックアップ、頼んだぞ。」

「了解!任せてよ!ね、アリシアちゃん!」

「皆、頑張ってね!」

 どうやらクロノも向かうようで、エイミィさんとアリシアが激励を送ってくる。
 戦闘できるメンバーで待機しているのは、プレシアさんだけだ。
 リンディさんもいるが、あの人は提督だし...。

「よし、行くぞ!」

 クロノの声を合図に、僕らは転送ポートからそれぞれの場所向かう。







   ―――....はずだった。







〈っ...!これは...!妨害です!!〉

「しまっ...!?」

 全員が転移するその瞬間、転移に対して何かの妨害を受ける。
 そのため、転移先の座標がずれてしまう。

「(まさか...!偽物の仕業...!?)」

 いきなりこんな事になるのは、どう考えても外的要因がある。
 それで思いつくとすれば、偽物だけだ。

「(読まれてた...!これだと、皆バラバラに転移される...!)」

 これではせっかくチームを組んだ意味がない。
 とにかく、臨機応変に対処しなくては...!

「椿!」

「っ!」

 咄嗟に最も近くにいた椿の手を握る。
 よし、これで少なくとも椿とは離れ離れにはならない...!

 ...そう思った瞬間、座標が狂った転移は完了した。









「っ....。椿!」

「....いるわ。」

 転移された先...人気のない路地裏にて、椿がいるか確認する。

「...してやられたわね。」

「ああ。...まさか、転移する瞬間を狙ってきたとは...。」

 そう考えると、ジュエルシードの一斉発動も偽物の仕業だろう。
 同じジュエルシードなら、位置ぐらいなら探し出せるかもしれないし。
 なお、シュラインはジュエルシードに人格を移しているだけなので例外だ。

「エイミィさん!」

 すぐさまアースラと通信を取ろうとする。
 ...が、ノイズしか聞こえず、通信ができそうになかった。

「リヒト...またか?」

〈...厳密には違いますね。妨害には変わりありませんが、それは転移の付随効果です。アースラの方から解決してくれるでしょう。〉

「そうか...。」

 ならば、今取れる手段は...。

「リヒト、シャル。辺り一帯をサーチ。ジュエルシード及び誰かいたらそっちへ向かう。」

〈わかりました。〉

 魔力結晶をリヒトに押し当て、その魔力で探知魔法を使う。
 リンカーコアが少し回復した今なら、魔力結晶と術式を誘起させる事ぐらいはできる。

「...どうするつもり?」

「とにかく、誰かいれば合流。ジュエルシードも放置できないから、発見したらせめて結界ぐらいは張っておくつもりだ。」

「...そうね。」

 今取れる最善手はそれぐらいだ。
 後は、偽物がどう動くかだが...。

「...既に相手の思惑の時点で、考えるだけ無駄か...。」

 思いつく事のほとんどが偽物の想定内だろう。
 余程の事がない限り、しばらくは掌の上だ。

「(僕自身が僕の手を読むとしたら...まぁ、“全て乗り越えてくる”が結論だろうなぁ...。間接的な方法じゃ、効果は少ないだろうし。)」

 自惚れのようだが、実際そんな気しかしない。
 ...とはいえ、直接的な戦闘力は偽物の方が上だ。おそらく、そこで僕を仕留める気だ。

〈....見つけました!ジュエルシードの反応と...これは、奏様です!それと、遠くにユーノ様もいます!〉

「よし、まずは奏の方だ!二人とジュエルシードの反応の距離は?」

〈奏様が大体200mほどかと。それと、ジュエルシードの方が近いです。ユーノ様は奏様からさらに300mほど離れています。〉

「そうか...。」

 なら、合流する前に結界を張っておくか。

「行くぞ、椿。」

「ええ。」

 とりあえず、近くにいる面子でジュエルシードを封印するようにしていくか。
 ...くそ、僕としたことが、油断してしまうなんて...。











       =out side=







   ―――一方、優輝達が転移された頃、他の皆は...。







「っ....!」

「....これは....。」

 優香と光輝はすぐに辺りを見渡し、状況を確認する。
 周りには木々。どうやら、人気のない林に転移したようだ。

「...転移の寸前、優輝のデバイスが言ってたな...。」

「妨害...。そう言う事ね。」

 転移の座標が狂わされたのだと、二人は悟る。

「まず、ここがどこだか把握しないと...。」

「見た所林...少し歩けば外だな。」

 とりあえずという事で、二人は林を抜ける。

「....公園か?」

「...そのようね。...それと...。」

 優香は海の上の方を見る。そこには黒服の少年...クロノがいた。

「無事ですか!?」

「何とかね...。そちらは?」

「僕は平気です。...ただ、全員バラバラに転移されたようです。」

 降りてきたクロノがそういう。
 先ほど海の上に浮かんでいたのは、辺りを探索するためだったのだろう。

「....まずいな。ここには二つも結界がある...。」

「一応、結界を張っておいたので周囲に被害は出ません。...とりあえず、他に誰かいないか探しましょう。」

 三人はすぐに手分けして他に誰かいないか探す。

「っ、あれは...。」

「む....。」

 沖の方にいる人物をクロノが見つける。

「...ザフィーラか。」

「クロノか。主たちは見たか?」

「いや、僕らも飛ばされてきたばかりだ。」

 見つけた人物、ザフィーラを連れてもう一度公園へ戻る。

「...周囲にはザフィーラと...。」

「私しかいなかったようですね...。」

 公園へ戻ると、優香がリニスを連れていた。

「これ以上、ジュエルシードを放置する訳にもいかないわ。」

「しかし...二つ結界がある以上、人数が...。」

「そこが問題よね...。」

 優香とクロノが悩む。
 どちらも放置できないが、一遍に取り掛かれる人数でもない。
 バックアップも今はない状態なため、援護も期待できない。
 だからこそ、どう行動するべきか悩んでいた。

「....私がここに残りましょう。その間に、皆さんで片方の回収を。」

「...いいのか?」

 リニスがそう進言し、クロノが聞き返す。

「耐え凌ぐくらいならできるでしょう。」

「優輝の偽物相手は?」

「...私を舐めないでください。」

 しっかりと覚悟を決めているリニスを見て、クロノは渋々その案を了承する。
 何気にこれが最善策なのだ。
 できるだけ短時間で片方を封印できれば、その後もう片方にも取り掛かれる。
 また、ジュエルシードは結界を展開してこそいるものの、それ以上の動きはまだ見せていないため、しばらくは放置していても大丈夫なのだ。
 だから、リニスが見張りとして残り、クロノ達が片方ずつ封印した方が良い。

「では、その方針で行こうか。」

「準備はできている。いつでも行けるぞ。」

 そういって、外をリニスに任せ、クロノ達は一つの結界へ突入した。









「...え、えええええ!?」

 海鳴市に隣接した海の沖の方で、少女の驚きの声が響く。

「れ、レイジングハート!どうなってるの!?」

〈...Perhaps, it has been interference.(おそらく、妨害されました。)

 少女...なのはは状況を把握するため、愛機であるレイジングハートに聞く。
 そして、返答を聞き、何があったのかを察する。

「他の皆がいないって事は...私だけか皆バラバラ?」

 今自分一人しかいない事に気づき、とりあえず動こうとする。

「...どの道、誰かを見つけないと...。」

 辺りに誰かいないか、飛び立とうとした所で...。

「なのは!」

「っ...!...フェイトちゃん!」

 別の場所からフェイトが飛んでくる。

「良かった...バラバラに転移されたから、はぐれちゃって...。」

「うん。私も同じなの...。...他の皆は?」

「見てない...かな。」

 他の皆がどこにいるかわからない現状に、二人は落ち込む。

「...探してみよう。」

「うん。」

 一応、警戒して手分けはせずに誰かいないかを探す。

「....なのは、あっち...。」

「あれは...。」

 少し移動した所で、遠目に誰かを発見する。

「...ん?なのはとフェイトじゃねーか!」

「無事だったか。」

「シグナム!」

「ヴィータちゃん!」

 そこにいたのは、同じく飛ばされていたシグナムとヴィータだった。

「その様子だと、そちらもバラバラに飛ばされたようだな。」

「...という事は...。」

「今はあたしとシグナムしかいねー。あたしだって、シグナムに咄嗟に掴まれなければ離れ離れになっちまってたぐらいだ。」

 “それに...”と続けてヴィータはある方向を見る。

「...こいつを放置する訳にもいかねーだろ?」

「結界...!?という事は...!」

「ジュエルシードだ。...ついさっき発見した。」

 沖に浮かぶ空間の歪み...結界の穴を見ながらシグナムが言う。

「本来であれば、アースラからのバックアップを受けつつ、どう動くか決めるべきだが...。」

「今は繋がらねー。つまり、あたしらだけで何とかしろって事だ。」

 そう言ってから、なのはとフェイトを見る二人。

「偽物の事もある。誰か一人は置いていかねばならない。」

「誰かを...。」

 どうしようかと、互いの顔を見て悩むなのはとフェイト。
 報告にて、ジュエルシードが強化されていると聞かされている事もあり、どちらの人員も少なくする事はできない状況だ。無理もない。

「そんな互いの危険性を増やす真似をしなくてもいいんだよ。四人で突っ込んで、ソッコーで倒す。...で、偽物が襲ってくる前に結界外に出ちまえばこっちのもんだ。」

「...はぁ、ヴィータ、そんな単純なら...。」

「そうだね!それがいいかも!」

 シグナムがヴィータの言葉に文句を言おうとしたら、なのはが思いっきり賛同してしまい、思わずシグナムは頭を抱える羽目になる。

「筋は通っている。...が、同時にリスクを高める事になるぞ?」

「んなもん、こんな状況になった時点で変わらねーだろ。」

「...それもそうか...。」

 それならば是が非でも結果を吉と出すべきだと、シグナムは納得する。

「ならば、早々に封印してしまおう。」

「うん。...所で、ここのジュエルシードは一体誰を...。」

「誰でもいいんだよ。叩き潰しちまえば変わらねぇ。」

 フェイトの疑問をヴィータが一蹴し、四人は結界へと入っていった。











「わっ!?っとと....!」

 街中のビルの屋上に、アルフは驚きながらも着地する。

「...なんだいここは?フェイトは....いない!?」

 辺りを見回し、主であるフェイトがいない事に気づく。

「っ...あたし一人だけかい!?くそっ、なんでこんな事に...!」

 遅れながらも自分一人だけなのを把握し、どうしようか慌てるアルフ。

「...誰か、近くにいないのかい?」

 完全に孤立した状態なため、近くに誰かいないか探すアルフ。
 ....と、そこへ...。

『無事!?他に誰かいない?』

「っ...!『シャマルかい!?...残念だけど、誰もいないよ。』」

 遠くからアルフを見つけたシャマルの念話が飛んでくる。
 それにアルフは答え、とりあえず合流する事にする。

「...転移を妨害されて、そのまま皆バラバラになったのね...。」

「あたしとシャマルが近くにいたのは偶然かい?」

「多分そうね。」

 合流し、今の事態を解析する二人。

「こんな事をするのは...。」

「偽物...。」

「ええ。...こんな回りくどい手口を使うだなんて...。」

 その場にはいない偽物に対して、シャマルは溜め息を吐く。
 まるで嫌がらせのような妨害なのだ。呆れるのも仕方がない。

「それに....これを見て。」

「っ、これは...!」

「...近くにジュエルシードの結界を見つけたわ。」

 シャマルが示すのは、クラールヴィントによるサーチャーの映像。
 そこには、ジュエルシードが展開する結界があった。

「...あたし達二人で行くしかないのかい?」

「そうなるわね。...幸い、私が後衛、貴女が前衛でバランスはいいわ。偽物への警戒が手薄になるけど、ジュエルシードを放置する事もできないし...。」

 二人だけというのが不安であるが、二人は結界の場所へと向かった。

「....待って、誰か近くにいるわ。」

「誰だい?」

「.....えっと、あまり...いえ、全く頼れそうにないわね...。」

 歯切れを悪くしながらいうシャマルに、アルフは訝しむ。

「...一体、誰なんだい?」

「....王牙君よ。」

「.........。」

 その一言で、アルフは納得した。

「...確かに、頼れない...いや、頼りたくないね。」

「でも、さすがに実戦でそんな我儘は言ってられないわ。バラバラになっている今、少しでも戦力を上げないと...。」

 嫌々ながらも、二人は近くにいる王牙と合流しにいった。











「うーん...皆見つからへんなぁ...。」

「やはりバラバラに飛ばされたのでしょう...。」

 臨海公園の住宅街側の上空を、はやてとリインフォースが飛ぶ。
 はやての傍にいたリインフォースが、咄嗟にはやてを掴んだ事で、二人は離れ離れにならずに済んだのだ。

「そうやったとしたら、どうして合流しようか...。」

「ジュエルシードの反応があった場所は、ここからだと臨海公園が近いです。もし、合流するつもりであれば、そこに集まる可能性が高いかと。」

「そっか!ジュエルシードの場所に行けば、誰かいるかもしれんもんな!ナイスやリインフォース!」

 そういうや否や、はやては臨海公園に向かって飛ぼうとする。

「待ってください。...誰か、来ます。」

「え?...あれは...。」

 公園とは反対方向から、誰かが来るのを二人は見つける。
 しばらく待つと、やってきたのは...。

「神夜君!」

「はやてとリインフォースか。」

「そちらは誰もいないのか?」

 織崎だった。
 リインフォースは他にもいないのか聞くが、織崎は首を振る。

「...早い所、奏を見つけないとな...。」

「これやと、せっかく組んだチームが意味ないもんなぁ...。」

 元々組んでいたチームの内、奏だけがその場にいないので、三人は奏を探そうとする。

「...やはり、ジュエルシードの場所に行った方が...。」

「...それもそうだな。なら、今から行こうか。」

「せやね。」

 すぐに行動に移し、三人は臨海公園へと向かった。















 
 

 
後書き
チーム分けは一部以外適当です。
一応、それなりに連携・バランスはいいかと。
まぁ、妨害を受けてバラバラになったので関係ないですけどね。

ここからそれぞれの視点での戦いを展開していきます。
ちなみに優輝達は一番最後になるのでしばらく出番ないかも...。 
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