ドリトル先生の名監督
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第八幕その十一
ここで、です。先生にこうした声がかかってきました。
「それなら焼酎はどうかしら」
「焼酎だね」
「先生そちらも飲むでしょ」
「好きだよ、けれど」
ここでこう言った先生でした。
「その声は」
「そう、私よ」
見ればです、皆が歩いている道の右手の壁の上にです。お静さんが猫又のその姿でいます。くつろいで寝転がっています。
「暫くぶりね」
「この前会わなかったかな」
「私としてはなのよ」
お静さんの感覚としてはというのです。
「そうなのよ」
「だからなんだ」
「こう言ったのよ」
「そうなんだね」
「それでね」
お静さんは先生にあらためて言いました。
「どうかしら、焼酎」
「それもいいね」
「そうでしょ、じゃあね」
「うん、今夜はだね」
「焼酎ならね」
お静さんは猫のお顔を綻ばせて言います、何処かチェシャ猫を思わせます。
「今うちのお店にいいのが入ってるわよ」
「商売だね」
「お家のね」
まさにそれだというのです。
「それで言ったけれど」
「そうだったんだ」
「そう、お家のことを考えないと」
商売、それのことをです。
「やっぱりね」
「駄目だね、確かに」
「ご主人達にはお世話になってるし」
代々の、です。
「それで先生にも声をかけたのよ」
「成程ね」
「それで焼酎がね」
お静さんは先生にさらに言います。
「安いわよ、それにね」
「美味しいんだね」
「うちのお酒はただ安いだけじゃないのよ」
「美味しいんだね」
「そう、飲みやすくてね」
「その焼酎をだね」
「お薦めしてるのよ」
お家の商売としてもです。
「どうかしら、それで」
「そうだね、丁度お家には焼酎もないし」
先生はお静さんのその言葉を聞いて言いました。
「それならね」
「来てくれるのね」
「うん、そうさせてもらうよ」
こう言ったのでした。
「是非ね」
「それじゃあね」
「今から酒屋さんに行くよ」
「焼酎買ってね」
「是非ね」
「昔はうちのお店も日本酒ばかりだったわ」
売っているお酒はというのです。
「本当に昔はね」
「それがだね」
「今では色々なお酒があるわ」
「焼酎もあればビールもあって」
「洋酒も一杯あるわ」
ウイスキーやワインといったものもというのです。
「お酒も変わったわ」
「売っているそれも」
「昔は日本酒を置いてればそれが飛ぶ様に売れたけれど」
「それが今ではだね」
「そうもいかなくなったわ、日本酒もあるけれど」
あるにはあってもというのです。
「それだけが売れる時代じゃないのよ」
「それに酒屋さんだけで売ってる訳じゃないしね」
「スーパーやコンビニでも売ってるから」
「酒屋さんも大変だね」
「そういうことなの、じゃあね」
「うん、行かせてもらうよ」
「毎度あり」
お静さんは猫の姿のままにこりと笑いました、そうした商売のこともお話しながらです、先生達はお酒も楽しむのでした。
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