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ラブライブ! コネクション!!

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Track 1 両手を広げて
  活動日誌1 スタート・ダッシュ! 2

「……実はね?」
「うん……」
「お姉ちゃんには黙っていたんだけど……」
「…………」
「……来る前に、お母さんにお饅頭を夕食の後に食べたいってお願いしていたんだ」
「……はい?」
「だから……」
「……なーんだ。それなら、そうだって言っといてよー? 本当は来たくなかったとか言われたら、どうしようかと……」
「いや、私が来たいって言ったんだし……」
「そうなんだけどさー? ……あー、なんかお腹すいてきちゃった! ……ほら、雪穂? 早く帰るよ?」
「――って、ちょっと待ってよー!」

 ほらね? お姉ちゃんはお饅頭が嫌いな訳じゃないでしょ?
 しかも、私を心配するあまりに自分の願望も何処かに消えちゃってるみたいだし――本当に、お姉ちゃんはお姉ちゃんだよね? 
 と言うか、勝手に自己完結したと思ったら、またもや私にお構いなしで突っ走って行っちゃうし。
 私は慌てて後を追いかけるのだった。

♪♪♪

 私は神社の坂の階段道を、お姉ちゃんの背中を追いかけながら下っている。
 その時に見上げた夕焼け。
 私はあと何回、こんな光景を目にすることが出来るのだろう。
 まぁ? まだ、始まったばかりなんだけどね?
 それでも――
 今日見上げた目の前に広がる夕焼けは今日だけの夕焼け。明日には、この夕焼けは見ることはない。それは当たり前の話。
 そう、当たり前の話だったことも今までの私には気づけていなかった。
 明日も明後日も。それこそ1年後の卒業式ですら同じ今日の夕焼けだと思っていた。
 でも違う。明日には明日の、明後日には明後日の。 
 1年後の卒業式の日には、1年後の卒業式の日の夕焼けを見るんだ。
 そんな当たり前のことすら気づけなかった私に、気づかせてくれたお姉ちゃんの背中。
 決して大きくはない――と言うよりも、私と大して変わらないほどの小さな背中。
 そんなお姉ちゃんの背中が、今日は大きく見えている。
 
 これが1年間をやりきった背中。夢を叶えた背中。
 スクールアイドル μ's を1年間引っ張り続けてきた背中。
 そして――
 これから、私と亜里沙が追い続ける背中なんだ。
 まぁ? いつか、お姉ちゃんの横顔を見てやるんだけどね?
 当然、亜里沙と一緒に両側から、ね?
 
 私は希望と言うか、野望を抱きながら小さいけど大きな背中を見つめているのだった。

♪♪♪
 
 今の光景は、はっきり言って偶然の出来事なんだと思う。
 だけど偶然ならば尚更(なおさら)、この出来事はこの先の私(・・・・・)にとって重要な意味を持つことになるだろう。そう、偶然とは奇跡を生み出す原石なのだから。
 それはお姉ちゃんが教えてくれたこと。
 だから私はこの偶然のくれた奇跡の原石である欠片を大切にしなくてはいけない。
 奇跡の欠片。今日お姉ちゃんがくれた私へのお祝い。
 今日一緒に走ることができたこと。夕焼けの意味に気づけたこと。
 そして――
 夕焼けに染まるお姉ちゃんの背中をこれからも追い続けて、いつか隣に並べる自分になる!
 そんな決意を改めて感じさせてくれた私にとっての――スタート・ダッシュの瞬間を。

 私は脳内で響くスクールアイドル μ's のあの曲に心を(おど)らせていた。 
 あの曲は確実にお姉ちゃん達のスタート・ダッシュになっていたんだと思っている。
 もちろん私達のスタート・ダッシュは当分先の話だろうし、あの曲は私達の曲ではないのもわかっている。
 だけど今だけ――
 まだお姉ちゃんの妹の雪穂として、聞いていても、良いよね?
 そんな思いを胸に脳内であの曲を。
 そして目の前の――夕焼けの中、前を走るお姉ちゃんの背中を目に焼き付けて走り続けていたのだった。


♪♪♪♪♪

 追加報告。

 ちなみに、帰宅した私達を迎えてくれた入学祝いの料理。
 もちろん美味しかったし、お姉ちゃんも結構食べていたのに。
 どうやら、料理に関しては心ここにあらず! な、ご様子だった。
 まぁ、それでも、相手はお姉ちゃんだからね?
 しっかり食べていたんで、普段通りかな?

 そんな感じで、お待ちかねのデザート!
 と、思いきや!? 出てきたのが、お饅頭1個!!
 あっ、2人の真ん中に1個だけ出されたって話だからね?
 あの時のお姉ちゃんの一喜一憂(いっきいちゆう)には笑いが止まらなかったなー?
 
 別に、お母さんの意地悪じゃないんだよ? 私がそうしてほしい(・・・・・・・)ってお願いしたんだから。
 そもそも夕食後なんだしさ? いっぱい食べるつもりもなかったから。
 あと、ね? 私が1個にして欲しかった理由――

「…………」
「……雪穂?」
「……はい、お姉ちゃん」
「…………。うん、ありがと」
「「…………」」

 私は(うら)めしそうにお饅頭を眺めるお姉ちゃんを横目に、お饅頭を手に取った。
 そして1個のお饅頭を半分に割ると、片方をお姉ちゃんに差し出したのだった。
 お姉ちゃんは差し出されたお饅頭と私の顔を交互に見比べると、優しい微笑みを浮かべてお礼を告げながら受け取った。
 2人はどちらともなく無言でお饅頭を食べ始める。

 そう、私が1個にして欲しかった理由。
 お姉ちゃんと半分こにしたかったから。
 高坂家に生まれたこと――お祖母ちゃんやお母さん。
 そして、お姉ちゃんと同じ校舎で学べること――そのことに感謝すること。

 更にお姉ちゃんの妹であること――いつまでも私はお姉ちゃんの妹なんだと再確認すること。
 
 だから、穂むらのお饅頭を2人で共有したかったのだ。

 なんだろう?
 いつも食べなれているはずなのに。
 今日のお饅頭の味は、いつもより――ほんのり甘くて、優しくて。
 暖かい感じがして、とても美味しかったのだった。

♪♪♪♪♪

 追加報告その2。

 と言うより、ことりさんへの報告。
 今日、亜里沙と帰りにファストフードに立ち寄った際。
 あっ、入部届けを書いたり今後の話をしていただけですよ?

 その時に隣に座っていた中年の男性数名が μ's の話で盛り上がっていたんですけど?
 その中の1人が――

「……いや、ことりちゃんのアノ曲の歌いだしパートの! ~飛ぶ の()の歌い方が良いんだよ! アレ聞いた瞬間にファンになったからね!! と言うか、アレなかったらココまでハマッていなかった気もするしさ……とにかく、良いんだよっ!?」

 と、熱弁をふるっていました。
 正直な話、見るからに危ない人に見えたので気をつけた方が良いと思ったので報告しておきます。
 まぁ、私的にはファンなんだろうとは思いますけど?
 ちょっとマニアックすぎて何が良いのかが理解できないので、用心しておくことをお奨めしておきます。 
 

 
後書き
Comments ことり

なんか、海未ちゃんが――
「私には荷が重いようなので、あとは任せます」
って言っていたから、任されました! なんて。

でも、雪穂ちゃん……難しい言葉を知っているんだね?
あがり……かまち? 海未ちゃんに教えてもらったんだけど、良くわかんなかった。
玄関の靴を履くのに座る場所? その段差のこと? それで良いのかな?

お饅頭。 たぶん、お饅頭が美味しかったのはあるんだけど……穂乃果ちゃんと食べたことが美味しく感じられたんじゃないかな?
私も穂乃果ちゃんと食べると美味しく感じるし。

活動報告その2。 ……だめだよ、雪穂ちゃん? ファンの人を悪く言うのは?
……でも、確かに危ない人なのかも知れないから気をつけるね? ありがとう。
 
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