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ラブライブ! コネクション!!

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Next Season
Unseal Operation (グランドプロローグ)
  活動日誌- み・はミュージックの・み!

 
前書き
グランドプロローグになります。
……読みやすく文字数を減らした抜粋版になっております。
完全版は ラブライブ! コネクション!!! Neutral Season 
と言う作品にて、分割連載する予定でおります。

劇場版のラストシーンを使用した――
当作品のラストに当たるシーンだと思ってくれると嬉しいです。


 

 
――伝えよう、スクールアイドルの素晴らしさを! 
――届けよう、私達のこの想いを!!
――繋げよう、みんなで叶える物語を!!!




 高坂 穂乃果を始めとする国立音ノ木坂学院スクールアイドル μ's が、全国のスクールアイドル達に呼びかけ――
 第3回ラブライブ! ドーム大会の実現に向けて行われたスクールアイドルの祭典。
 華やかで大盛況のまま、彼女達の歓声と笑い声に包まれながら終わりを迎えた合同ライブ。
 あの日から数年――。
 穂乃果達、彼女達を包む周りの人々、そして全国のスクールアイドル達。
 そんな彼女達に光り輝く時間を与え続けながら、ゆっくりと月日は流れていったのである。

 音ノ木坂学院の正門から校舎の入り口へと通ずる道。
 今年もまた2年前と同様に、道の両脇に植えられた桜の木々からは――
 この春に学院を巣立っていった卒業生の想いを受け取り、代わりに託すかのように。祝福の花びらが、この学院へと歩み寄るすべての人達に降り注いでいる。
 幸せな桜色のフラワーシャワーで彩られた道を、今年も真新しい制服に身を包んだ新入生達が家族であろう人物と共に、期待に胸を膨らませて登校していた。
 そんな真新しい制服の波に紛れて、2年間寄り添い、共に歩んできた制服に身を包む1人の生徒――
 今日、最上級生となった高坂 雪穂は周りを眺めながら、自分の入学式の日のことを思い出して景色や想いを重ねていたのだった。

「…………」
 
 彼女はふと、新入生達の制服のリボンを眺めてから、自分のを見つめた。
 新入生達のリボンは水色。そして、自分は緑。
 周りから見れば何も感じないほどの普通のこと。だが、穂乃果達を見続けてきた彼女にとってはリボンの色もまた、彼女達の託していった想いなのだと感じていたのだった。

 音ノ木坂学院の制服のリボンの色。
 元々は、世代別ではなく学年別に色分けがされていた。
 1年生は水色。2年生は赤。3年生は緑と言うように、進級の際に新しい色のリボンへと変えていったのである。
 当然それは学院が決めていること。生徒も特に何も気にせず受け入れていた。そう、1人の生徒を除けば――。

♪♪♪

 そんな1人の生徒――絢瀬 絵里の想いを受け止めた穂乃果が、共に提示したリボンの行く末。学院の人達の賛同を得ることができ、晴れて雪穂が入学をした年度から制服のリボンは世代固定へと切り替わった。
 その世代固定のリボンも3度目の春を迎える。
 つまり当時の3年生だった絵里達のリボン――緑のリボンを引き継いだ雪穂達も3年生になったのだ。
 そう、学年固定と同じ色分けになっていると言うこと。
 だから、絵里達以前の卒業生には普通に見える光景なのかも知れない。
 しかし穂乃果達以降の生徒は知っている。 
 そして、穂乃果と絵里の妹である雪穂と亜里沙には姉達の――
 穂乃果と絵里の残した、さまざまな想いが詰まった『リボンの色分け』だと感じているのであろう。
 同時に、運営ですら変えていった姉達の影響力と絶大な人気による人望。
 学院に残していった威光と伝説の名前と功績。もう誰も残っていない現在――
 受け継いだ者として姉達の栄光を絶やさぬように、新たな光を照らし続けていけるように。
 花陽達の想いを託された新入生の水色のリボンを眺め、自分の絵里達から託された緑のリボンを見つめて決意を新たにしているのだった。

♪♪♪ 

「おーい?」
「――んぉ!」
「おはよぉ」
「……遅いよぉ?」
「えへへ……ごめぇん」

 彼女が周りを眺め、思い出に浸りながら校舎の入り口を目指して歩いていると、彼女の耳に聞きなれた声が聞こえてくる。
 その声に気づいた彼女は足を止めて、声のする方へと振り向く。
 すると雪穂同様、共に歩んできた制服に身を包んだ彼女の親友。絢瀬 亜里沙が彼女の方へと近づいてくるのだった。
 目の前に来た彼女に苦笑いを浮かべて声をかける雪穂。そんな彼女の言葉に苦笑いで返す亜里沙。
 2人はどちらからともなく、目の前を流れる真新しい制服の波に紛れて、校舎へと歩き出すのだった。

「良い? まずは1年生に私達の活動の内容を伝える。もし興味を持ってくれたら、今度はライブに来てもらう」
「だぁいじょうぶ……任せて!」
「本当かなぁ……」

 新入生達の波から離れ、校舎に入り自分達の教室へと歩いていた雪穂と亜里沙。
 彼女達は先輩達が託していった『アイドル研究部』を明日へと繋げる為。新入部員の勧誘を兼ねた説明会の為に話し合っていた。
 そう、彼女達はアイドル研究部の現在の部長と副部長。
 入学式である本日の放課後より始まる、部活説明と言う責務が彼女達の小さな肩に課せられている。
 色々な想いを感じている彼女達。言葉尻こそ普段通りの会話であるが、真面目に話し合いながら教室へと向かう雪穂と亜里沙なのであった。

♪♪♪

「新入生の皆さん、入学おめでとうございます。今日から皆さんは、この音ノ木坂学院の一員です。これから始まる学院生活を是非とも楽しく、充実したものにして欲しいと願っております」

 此処は学院の体育館。室内では今年度の入学式が厳かに執り行われている。
 新入生への祝辞を述べながら壇上に立つ音ノ木坂学院理事長――南女史は、壇上から見下ろす光景を眺めて、ふと数年前のことを思い浮かべていた。
 そう、廃校の危機に瀕していた学院。それを救った9人の女神達のことを――。
 
 その彼女達が託していった、希望に満ち溢れた目の前の光景を目にした南女史は心の中で、役目を終えた9人の女神達への変わらぬ感謝と、彼女達の意志を受け継いだ生徒達を全力で守る決意。そして巣立っていった卒業生達、今目の前に座る生徒達へ――
 いつまでも国立音ノ木坂学院を愛し、大好きだと言ってもらえるような学院であり続ける。
 改めて、より良い学院生活を送れるように導いていく――そう邁進する決意をしながら祝辞を述べるのであった。

♪♪♪

 入学式より数時間後――。
 放課後となり、各部の新入生勧誘レセプションは初日を迎えようとしていた。 
 そんな中、アイドル研究部の部室でも――
 沢山の新入生が見守る中、雪穂と亜里沙による説明会が始まろうとしていたのだった。

 部室を埋め尽くすほどの新入生たちが羨望の眼差しを向ける先。
 向かい合って立っている雪穂と亜里沙。そう、2人だけが説明会に臨んでいた。
 とは言え、部員が2人だけだから2人で臨んでいる訳ではない。
 残りの部員――2年生は隣の教室にて待機をしていた。
 説明会後の歓迎レセプション。隣の教室へ移動しての歓談を行う為に。
 これも雪穂達――アイドル研究部員が先輩達から受け継がれてきた『歓迎の意』なのだろう。

 事前に部員達が買い集めてクーラーボックスで冷やしてある紙パックのジュースと、お菓子を並べ――
 先輩達や自分達のライブの衣装を展示して、活動日誌の一部をコピーして閲覧できるようにしてある。
 そして、姉達や自分達のライブの動画を流したりもしている。
 そんな新入生達の緊張をほぐしながら、自然と部員達との色々な会話をする場として設けられたのだった。
 説明とはあくまでも一方通行なもの。
 ただ憧れているだけでは――聞いて理解していても本当の意味で理解したとは言えない。
 もちろん質疑応答は設けてある。しかし、これもまた会話のように理解できるまで聞けるものではない。
 それならばと、会話と言う言葉のキャッチボールを経て理解を深めていってほしい。
『自分はスクールアイドルが好き』と言う想いを胸に刻んでほしい。
 そう言う気持ちで入部して頑張っていってほしい。
 数年前に開催されたスクールアイドル達の合同ライブ。結成前とは言え参加させてもらった雪穂と亜里沙。
 彼女達の開いた歓迎レセプションは、合同ライブから学んだことなのだろう。

♪♪♪

 雪穂と亜里沙の実際に経験した合同ライブを踏まえて、実施になった歓迎レセプション。
 楽しんでもらおう。少しでも興味を持ってもらおう。入部したいと思ってもらいたい。きっと後輩達もそんな気持ちでいてくれているのだろう。
 裏方をやらせて、ごめんね? ありがとう。
 扉の向こうで一生懸命セッティングをしたり、飾りつけやチェックをしている後輩達を想像して、雪穂は心の中で謝罪と感謝をしていた。
 そんな後輩達の為。立場は違えども学院の為に頑張っている親友の為――
 雪穂と亜里沙は自分達の責務を全うする為に、新入生へと説明を始めるのだった。

 まずは軽く自己紹介を済ませて、活動内容――在籍人数や活動場所。活動時間や練習内容。
 そしてメインとなるライブやイベントへの参加などの話を簡潔に説明する。
 終始、希望と羨望の眼差しで見つめてくる新入生を眺めながら、心の中で苦笑いを浮かべる雪穂だった。
 確かに憧れて部室を訪ねてきたとは言え、今までの内容は言ってみれば事務的な内容だった。
 自分の意志があるにせよ面白い話でも興味が湧くような話でもないはず。
 まだ自分が中学3年生だった頃。学院存続の為だと絵里のオープンキャンパスでの演説の練習に付き合ったことがある。
 しかし、あまりにも興味が湧かなかったからなのか、雪穂はその場で居眠りをしてしまうのだった。
 そんなことを思い出して、今年の新入生はやる気があるのだと感じていたのだった。
 それは部活の為、先輩の為、親友や後輩の為。きちんと説明する必要があるからと考えた内容とは言え――
 自分自身が興味が湧かない説明だったからなのかも知れないのだが。

 そして数名程度の質疑応答を設けたあと、話はスクールアイドル――主に μ's の話題へと流れていった。
 すると新入生の口から感嘆の声が漏れ始めて、更に瞳を輝かせて真剣に聞こうとする表情へと変化していく。
 それを見た雪穂は「やっぱりね?」と言いたげな表情で亜里沙に目配せした。
 そんな雪穂に同じような表情で返す亜里沙。
 当然こうなることは予想していた。だから最後に活動内容を話しても頭に入らないだろうからと、最初に持ってきたのだった。
 新入生の表情に比例するかのように。期待に応えるかのように。
 先ほどの説明とは打って変わって、穂乃果達の軌跡を熱く語る雪穂と亜里沙。
 しかしそれは単純に、自分達の大好きな μ's の話をするファンとしての2人の姿なのであった。

 自分達が入学する前。穂乃果が μ's を結成してから今まで――。
 彼女達を1番近くで見続けてきたファンの語る内容に、新入生達は心が踊り、胸をときめかせ――
 時には笑い声が漏れ、すすり泣く声すら聞こえるほどに、聞く者の心を揺れ動かしていたのだった。

「……フーッ。……スクールアイドル μ's ――それは、この音ノ木坂学院で生まれました」
「学校を廃校から救い……大会で優勝するまでに……」
「私達はその想いを受け継いで、今まで活動してきました……」

 彼女達の話は終盤に差し掛かり、まとめの部分へと到達する。
 一呼吸をしてクールダウンを済ませた雪穂と亜里沙は冷静な表情を取り戻し、改めて説明を始めた。
 見ている新入生も先輩達の優しく落ち着いた声色に、活動内容を説明されていた時のような、表情を落ち着いたものへと戻して話を聞いている。

「 μ's を中心とした、スクールアイドルの力によって、ラブライブ! はドーム大会が開かれるまでなり――」
「今年もまた、ドーム目指して、予選が開始されることになったのです」

 雪穂と亜里沙は、此処にはいない親友。隣の部屋に待機している後輩達へと想いを馳せ――
 輝かしい大空へと巣立っていった先輩達へ。
 産声をあげて眩しい青空を仰ぎ見ている新入生達へ。
 そして受け継いできた想いを、今度は託す立場になる自分達へ――。
 託された想いを胸に刻み込むように、言葉を紡いでいたのだった。

「「――そして……」」

 彼女達は一瞬だけ、顔を見合わせて微笑みを交わすと、前を向いて声を揃えて言葉を紡ぐ。
 
「「 μ's の最後のライブは――」」

 この言葉を放った瞬間、彼女達は心の中で吹き出し笑いの感情に苛まれる。
 最後のライブ――確かに表現的には間違いではない。
 しかし、彼女達は知っている。自分達の言葉にした『最後のライブ』が『ファンの知る最後』のライブであることを――。
 とは言え、自分も知らない穂乃果達の『本当の意味での最後のライブ』の話などできる訳もない。
 周りも――ファンや学院のほとんどの生徒達も知らないのだから、最後のライブと言っても問題はない。
 だけど自分達は知っているから、心の中で付け加えた「みんなが知ってる物語の」と言う言葉に吹き出し笑いの感情を覚えていたのだろう。

 ここで一呼吸を挟み、彼女達は満面の笑みを浮かべながら――

「隣の部室に移動して、歓談をしながらでも話をしたいと思います」
「飲み物やお菓子もありますし、ライブ映像や衣装。先輩達の残していった活動日誌の一部も閲覧できますから、楽しんでいってください」
「もちろん私達への質問も受け付けますので、気軽に声をかけてもらえると嬉しいです、これで説明会を終了します……お疲れ様でした」
「お疲れ様でした」
「――お疲れ様でした。……それでは、中の方へどうぞ?」

 隣の部室への誘導を兼ねて説明会の終了を伝えたのだった。
 雪穂と亜里沙の労いの言葉と共に隣の部屋へと繋がる扉が開かれ、後輩達が労いの声をかけながら新入生達を中へと誘導する。その言葉に列になって中へと進む新入生達。
 彼女達の表情が晴れやかで、楽しそうで、充実しているように見える。
 隣の部屋へと進んでいく、そんな彼女達の姿を後ろから眺めていた雪穂は、軽く安堵のため息をついていた。
 すると彼女の肩を優しく叩く、小さな拳の感触を覚える。
 振り向くと、亜里沙が優しい微笑みを浮かべながら、部長の責務を労うように、軽く肩を叩いてくれていた。
 雪穂は亜里沙の優しさに感謝を含ませた笑顔を送り、自分もまた、副部長の責務を労い彼女の肩を優しく叩いてあげる。
 2人はどちらからともなく手を止めて微笑みを交わすと、軽くハイタッチをするのだった。
 そして亜里沙は雪穂に笑みを溢して頷くと、先に隣の部屋へと歩き出していた。

 雪穂は全員が隣の部屋へと入ったことを確認すると、ふと研究部の部室を一瞥する。
 姉達の思い出、自分達の思い出、後輩達の思い出。
 そんな全ての思い出と、色々な想い。そう言った目に見えないものを沢山詰め込んで見守ってきた部室。
 自分達はこれから――受け止めた先輩達から託された想いを、新しい子達へと託していくのだ。
 そう、あの扉の向こうには自分の知らない新しい未来が待っている。それは楽しみでもあり、緊張や不安でもある。
 まるで彼女には、ライブ直前のステージ袖に立つような気分。そんな風に感じていたのだろう。
 でも逃げない。お客さんは待っているのだから。自分で1歩を踏み出さなければ何も始まらないのだから。
 そう決意をして雪穂が歩みを進めようとした瞬間――
 彼女の背中を優しく押し出す、暖かな風が吹くのだった。
 それはきっと巣立っていった先輩達が背中を押してくれた優しい手。
 そう解釈した彼女は無意識に強張っていた肩の力が抜け、嬉しそうに微笑んだ。
 そんな包み込んでくれる暖かで柔らかな風を感じながら、新しい未来の始まりを迎えるであろう――
 新たな『みんなで叶える物語』の1ページ目を綴るべく、眩しい光の方へと歩き出すのであった。

♪♪♪
 
 ――こうして始まる、国立音ノ木坂学院アイドル研究部の新たな物語。
 しかし雪穂達『託す側』の生徒達も、最初から託すことを自覚できていた訳ではない。
 穂乃果を始めとする先輩達と共に歩み、先輩達からの『託された想い』をしっかりと受け止め、自分達で考え、考え、悩んで考えて――。
 自分達の信念を作り上げて成長してきたからこそ、後輩達へと想いを託すことができるのである。

 この物語は――時を巻戻すこと、雪穂達の入学式。まだ彼女達がスクールアイドルを始める前まで遡る。
 入学当初の雪穂達が穂乃果達と同じ時を刻み、様々な出会いや経験をして、沢山の想いに触れ。
 色々なことを自分達で考え、答えを導き出して進んでいき――
 後輩へ自分達の想いを託していけるようになるまでの成長物語。
 そんな彼女達のスクールアイドル活動を、彼女達の活動日誌で読み進める――
 穂乃果達の新しい『みんなで叶える物語』であり、雪穂達の『みんなで夢みる歌作り』なのである。
 
  
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