聖闘士星矢 黄金の若き戦士達
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347部分:第四十七話 北の大地その五
第四十七話 北の大地その五
「その気配はな。殺意が高ければ高い程だ」
「成程。流石は黄金聖闘士です」
「我々は意識しなければ感じ取ることがないというのに」
「褒める必要はないが」
「いえ、事実です」
「バベルの言う通りです」
しかし彼等はそれを世辞ではないと返すのだった。そしてそれはその通りだった。
「セブンセンシズからですか。それは」
「おのずと感じ取れるのは」
「それもあるがやはり自然と感じ取れるのだ」
だからだというのだった。
「辺りに何かがいればな」
「では今は何もいないというのですね」
「狂闘士達は」
「今は来ない」
カミュは断言さえした。
「今はだ。しかし彼等は必ず来る」
「まあそうでしょうね」
「絶対に来るでしょうね。そりゃ」
「間違いなく」
青銅の者達はそれはわかっているのだった。来ない筈がないとさえ思っていた。
「さて、それが何時かですけれど」
「とりあえず何時来てもいいように心構えはしていますんで」
「そうしているといい。それではだ」
「ええ。身体を冷やさないように」
「これを時々飲んで、ですね」
彼等はカミュに応えながら懐から何かを取り出してきた。それは。
「このウォッカ飲んであったまって」
「そういうことですね」
「そうだ。そして時々橇を止める」
カミュはこうも言った。
「橇を止める。いいな」
「何でですか?」
「また冷えるからですか?」
「冷えたらそれで凍傷になる恐れがある」
カミュは何処までもそうしたことを警戒していた。ロシアの寒さの中では当然として考えられることだった。
「聖闘士はそこまでならないがそれでもだ」
「いざという時に冷え切っていたら身体を満足に動かせない」
「そういうことですか」
「常に満足に戦える状態にしておく」
ここでもカミュの言葉は冷静沈着なものだった。
「そういうことだ」
「ですね。それじゃあ」
「慎重に気をつけてですね」
「コムはさらに北だ」
今度はその頭の中に地図を置いているカミュだった。
「それだけに寒くなる。視界にも注意が必要だ」
「おっとっと」
「これを忘れたらいけませんね」
皆それぞれサングラスやゴーグルをかけた。カミュもである。
「雪の光で目をやられますからね」
「これも気をつけないと」
「雪と氷は最も恐ろしいものの一つだ」
カミュは己が使うものについても言った。
「それも忘れるな」
「狂闘士の前に自然が相手ですか」
「随分と厄介な場所なことで」
「厄介でもそれでも進むしかない」
その言葉は絶対の響きがあるものだった。
「それでもだ」
「そこに狂闘士がいるなら」
「そういうことですか」
「何かがあるようだ」
こうも言い加えたカミュだった。
「ここにもな」
「ここにもっていいますと」
「これまでの戦いにも何かがあったんですか?」
「はっきりと断定はできないが」
こう前置きはするのだった。
「だがそれでも。何かあるのは間違いない」
「そういえば何か狂闘士の連中はいつも俺達を誘い出すようにして戦いを挑んできますね」
「そうやって」
「今回も何か」
「だからだ。何かある」
そこから言うのだった。
「おそらくはな。しかしそれにあえて入る」
カミュは前を見据えて言った。
「いいな。それで」
「ええ。飛び込んでやりましょう」
「そのうえで散々に破ってやりましょう」
青銅の者達は明るい笑顔で話すのだった。
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