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HUNTER×HUNTER 六つの食作法

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008話

ついに開始されようとされる最終試験。ホテルの一室で発表された最終試験内容はトーナメント形式の一対一の戦い、武器OK、反則なし、相手に参ったと言わせれば勝ちという単純明快ルール。が合格者を出す決まりがかなり変則的な物となっている。ネテロは一勝すれば試験には合格と語った、いうなればこのトーナメントは負け上がりトーナメント。本来はチャンピオンが着くはずの頂点には敗者となると言う事になる。

そしてトーナメントの組み合わせはこれまでの試験内容の成績によって振り分けられていた。成績が良い人間ほど多くのチャンス、最大6回のチャンスが与えられ一番少ない者にも2回のチャンスが与えられる。成績が良い者からハンゾー、シャネル、ゴン、ポックル、キルア、ギタラクル、ボドロ、クラピカ、ヒソカ、レオリオとなっている。だがその決め方に異議を唱えたものがいた、キルアだ。

「身体能力値、精神能力値、そして印象値から成績を決められておる。最初の二つは言うまでもあるまい?そして印象値は前の二つでは測れない何かじゃ、言うなればハンターの素質みたいなもんじゃな」
「……(シャネルは兎も角、ゴンに俺が負けるってのか……?)」

最低基準の一部を聞かされたキルアだがその表情は硬く納得いかなさそうな物、身体能力や精神的にも明らかに自分が勝っているという自身がある。それでも自分はゴンよりも下の成績にされている、あまり納得出来ぬままキルアは引き下がった。

「ではこれより第一試合を開始します。ハンゾー対シャネル、前へ」

名を呼ばれた二人はゆっくりと前へと出た、シャネルはゴンから頑張れと言われレオリオからは気合入れていけ、キルアはまあ頑張れよ、クラピカは心配などしていないからなと激励の言葉を受け取り笑顔で返答しつつハンゾーと向かい合った。

「立会人をつとめさせていただきますマスタと申します。よろしく」
「おうよろしく頼むぜ」
「よぉ久しぶり、俺をつけてた奴だろ?よろしく頼むぜ」

挨拶を済ませると二人は向き合った、そしてマスタが開始の合図をすると一気にその場の空気が変わっていく。先程までの空気から一転、凍りついた大地の冷たい空気のような肌寒さを感じる。

「お前、つえぇな(こいつは……殺す気でいかねえとこっちが狩られるな)」
「お前もな(さてと……どうやって攻めるかな)」

互いに強さを解る、故に互いに動かなかった。下手に動けば先手を打たれる、それを承知しているがシャネルはそこまで辛抱強くは無い。必要とあれば待つがこの場でそれほど待っていられない。

「……」
「………来ないなら、俺からいくぞ……?」

組んでいた腕を解きだらんと自然に腕を下げるシャネルにハンゾーは全身に力をこめる、いつどんな角度から攻撃が来たとしても対応が出来る体勢になる。

「―――剃!!」
「―――なっ……ちぃ!!」

瞬間的に姿を消したシャネルに一瞬だけ驚愕するが瞬時に思考を切り替えるハンゾー、凄まじい加速だがわずかに残像が見えた。そこから逆算し感じ取った攻撃は首へと手刀、姿勢を低くしながら身体を回し丸くなるようにし攻撃を回避する。

「指銃!!」
「おらぁ!!」

回避されても即座に引かれる腕、放たれる銃弾に匹敵する指の一突き。だが忍者も負けてもいない、回転し丸まった勢いを使い二の腕へと回し蹴りを加え指銃の軌道を反らせた。頬を掠った指銃は皮膚を削り血を滲ませる。鋭い蹴りを受けた二の腕、軽く腕が痺れそうになる。

「剃」
「いてっ……ったくなんて速さだ……」

床に倒れこんだハンゾー、身体を起こせば先程まで腕が届く距離にまでいたシャネルは大きく距離を取りつつ様子を伺うようにこちらを見ていた。蹴られた腕の痺れを取るかのように手を握ったり開いたりを繰り返していた。

「やるなハンゾー、初見で剃にまともに反応出来たのは初めてだぞ」
「俺の故郷だと更に無音でやる技法もあるんでね、それで何とか対処出来た」

自慢げに語るハンゾー、事実剃には驚いたが対処出来ない訳ではない。最初こそ驚かせれたが次は完全に対処出来るだろう、だがそれ以上に相手との実力差に苦虫を噛み潰していた。普通の決闘とは違い相手に参ったと言わせるしか勝敗が決定しないこのルールではどうやってシャネルからそんなことを言わせて良いのか解らない。

「(他の六式も試すか?否、嵐脚は他の奴の迷惑になるし砕だとこの部屋自体ぶっ壊しかねないからなぁ)」
「(ったく冗談じゃねえなこれ、こりゃ勝てそうにねえな……)」
「ハンゾー、まだやるか?」
「はぁ~ん……ぶっちゃけやめてぇな」

ハンゾーの口から出たあっさりと自分の負けを認めるとも取れる発言。寧ろ彼にとってこの場で戦い続けることは全く上策ではないしここで負けてもまだチャンスはある。自分と相手の力量をしっかりと理解している武人の発言、だが正直ここで素直に宣言したくない自分も居ると言いたげな思いも込められていた。

「正直俺が勝つ可能性なんて0に近い、それならここは負けて次の望みを託すのが正しいって所だろ」
「正論だな、このまま続けるとなると俺は確実にお前を殺しちまうからな」
「ぞっとしねぇなあ……まあいい、俺は次に望みを託すぜ。『参った』」

そのままハンゾーは黙って自分の負けを認めた、意固地になって戦っても消耗して後で負けて失格者になる可能性が高い。しっかりと弁える事も知っている良い人物だとシャネルは思う。

ハンター試験第一合格者:シャネル 
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