動かざること
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第一章
動かざること
最近タイでも恋愛結婚が多くなってきている。確かに同性愛が普通の国だがそれでも男女間の恋愛が一番多い。
マイチャン=アッカラーンもそれは同じだ、いつも勉強と陸上競技に精を出している明るい好青年である。
趣味は料理と食べること、明るい黒い瞳に長身ですらりとした身体は陸上競技をしている為だ。顔は細めで暗褐色の肌によく合っている顔だ。髪は黒く奇麗に短く刈っている。爽やかな外見でありファッションセンスもいい。
しかしだ、その彼に友人達は言うのだった。
「女の子は好きでも」
「それでもか?」
「もてないっていうのか?」
「そうなのか?」
「そうなんだよね」
笑いながら言うのだった。
「これがね」
「それ嘘だろ」
「御前もてるだろ」
「この前そっちの子に告白されてただろ」
「そっちの趣味のな」
所謂ニューハーフのだ、タイには結構いる。
「男にももてるんだからな」
「女の子にもだろ」
「それでそうした話がないとかな」
「嘘だろ」
「いやいや、本当だよ」
ここでも笑って言うマイチャンだった。
「僕そうした話には縁がないよ」
「本当にか?」
「御前もてないのか?」
「女の子に」
「そうなのか」
「そうだよ、そのニューハーフの子に告白された時もね」
彼はこのことは事実だと話した、実際にそうであるので友人達にも否定せずにそのうえで話したのである。
「断ったよ」
「そっちの趣味はないからか」
「だからか」
「それでか」
「こうした口調でね」
いつもの様にというのだ。
「悪いけれどって言ったよ」
「相手それで納得したか」
「それでか」
「そうなんだな」
「うん、納得してくれて」
実際にというのだ。
「それじゃあって言って帰ってくれたよ」
「まあ変な断り方したらな」
「後が怖いからな」
「こうした話って恨み持たれるとな」
「洒落にならないことになるからな」
「僕もそう聞いてるからね」
それ故にというのだ。
「気をつけたよ」
「それは何よりだな」
「そこは御前らしいな」
「まあとにかくそっちの趣味はない」
「ノーマルなんだな」
「そうだよ、このことは言っておくよ」
絶対にというのだ、マイチャンも。
「けれどね」
「女の子にはか」
「もてないか」
「そうなんだな」
「実際は」
「うん、そうした話はないよ」
はっきりとだ、マイチャンは言い切った。
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