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天使のエンブレム

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第三章

「戦死とか嫌だしな」
「じゃあここは天使を描きましょう」
「後は神頼みだ」
 こう言ってだ、その機首にだった。
 全員で天使、奇麗な女のそれを描いた。その天使を見てだった。
 キートンは搭乗員達にだ、こう言ったのだった。
「この天使がな」
「俺達を守ってくれるんですね」
「ナチスの攻撃から」
「あと急な事故にも」
「ああ、全部な」
 それこそというのだ。
「守ってくれるからな」
「神様の守護ですか」
「それが備わったんですね」
「じゃあもうこれで」
「安心出来ますね」
「そうだ、何とかなる」
 こう言うのだった。
「これでな」
「よし、それじゃあですね」
「俺達全員でアメリカに帰れますね」
「神様がついたから」
「これで」
「全員でアメリカに帰るんだ、いいな」
 キートンはブルー達に強い声で言った、そしてだった。
 何度も出撃したがその都度全員無事だった、それでだった。
 キートンは夜に自機の搭乗員達と一緒に飲みつつだ、こう言った。
「エンブレム描いてよかったな」
「はい、そうですね」
「あの天使の守護で、ですよね」
「俺達無事に帰られてますね」
「それも全員」
「激しい被弾も事故もない」
 そのどちらもというのだ。
「まさにこれこそだな」
「天使の守護ですね」
「それですよね」
「そうだな、もう戦局は決まった」
 今度はそちらの話をした、ビールを飲みつつ。
「パットン将軍はライン川を渡った」
「遂にですね」
「あの川渡ったらもう、ですよね」
「後は一直線」
「それで進めますね」
「いけるな、ソ連軍はベルリンを目指してる」
 東からは彼等だというのだ。
「だからもうな」
「俺達もですね」
「生きて帰れますね」
「長い間死ぬ思いしてきましたけれど」
「いよいよドイツ軍も終わりですね」
「アジアじゃまだ戦争やってますけれど」
「こっちは終わりですね」
 ブルーをはじめとした搭乗員達も笑顔で言う。
「最近ドイツ軍機は目に見えて減ってきてますし」
「高射砲も弱くなってますね」
「じゃあ後は」
「終戦まで、ですね」
「まずいけるな」
 笑顔で言ったキートンだった。
「最後まで」
「アメリカに帰って」
「それで、ですね」
「後は祖国で平和に暮らせますね」
「勝ったうえで」
「そうだ、勝って生きて祖国に帰る」
 キートンはここであえてこの三つを言った。
「最高だろ」
「ですね、じゃああと少しですね」
「危険な思いするだけですね」
「とはいっても戦闘機も高射砲もいない」
「随分楽になっていますしね」
「やっぱりあれだな」 
 ここでだ、キートンは搭乗員達にこんなことを言った。 
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