ガンダムビルドファイターズ ~剣聖の煌めき~
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燃え上がれガンプラ! 後編
ビームサーベルを収納し、左手を地面に着けて体勢を立て直す。
「もう一度! 」
すぐにνガンダムへと接近し、ガーベラストレートを構えて何度も攻撃をする。
「まだ速くなるか……!いい……実にいいぞ! 」
ガーベラストレートとガンユニットの大剣がぶつかり合い、お互い大きく弾いて後退する。
「ミヤモト君、気づいているか!?今、君は心からガンプラを楽しんでいる!それは誰かに押し付けられたものではなく、君の中から湧き出てるものだ!
ガンプラは楽しい…………ならばっ!ガンプラを始める理由は、それだけでも充分だっ!!他の誰かに制限される必要はないっ! 」
「っ!? 」
カワグチさんは、まるで事情を見透かしたかのような事を言ってきた。モニターでカワグチさんを見ると、髪をオールバックにし、真剣で、それでいて楽しそうな顔をしている。
「大事なのは、君がどうしたいのかだっ!制限されるというのなら、そのためにどうするべきかだっ!」
νガンダムは先程とは桁違いの速度を出し、アストレイレッドフレーム フライトユニットの四方八方駆け回る。
「っ!!?」
左手にビームサーベルを構え、辛うじて見えるνガンダムの攻撃に備える。
「あえて言おう!ガンプラは遊び………しかし!遊びだからこそ人は楽しみ、好きになれる!好きだからこそ本気になれる!
私は、君の中の本気を垣間見た!ならば…………」
νガンダムは更に速度を増し、機体からはサイコフレームの輝きが圧縮される。νガンダム周囲に紅の粒子が散り始め、一瞬にしてνガンダムの姿を見失った。その速度は、剣道で培ってきた反射神経と動体視力を凌駕するものだった。
「消えたっ!? 」
周囲を見回すと、突如νガンダムが目の前に現れる。咄嗟にビームサーベルを振るうも、そこにνガンダムの姿はなかった。
視界に少しだけ移ったνガンダムを追うと、後ろへと回り込まれていた。
「っ! 」
ガーベラストレートを後ろに斬り払うも、やはりνガンダムの姿は無かった。
「次は…………私の本気を……受け取りたまえっ!! 」
声が聞こえた方へ振り返ると、νガンダムが大剣を突き出して高速で接近していた。
「間に合わっ……! 」
「燃え上がれ……燃え上がれ……燃え上がれ…………ガンプラァァァァァっ!!! 」
回避行動も防御も間に合わず、大剣は胴体へと突き刺さる。それと同時に、バトル終了のアナウンスが鳴った。
『BATTLE ENDED』
ーーー--
「ありがとう。いいバトルだった」
カワグチさんは髪を元に戻し、サングラスを額に掛けて右手を差し出してきた。僕も右手を差し出し、握手を交わす。
「僕の方こそ、ありがとうございました!それで、一つ聞きたいんですけどいいですか? 」
「なんだ? 」
「さっきの話…………僕、始められない理由について言いましたっけ? 」
「いや、言ってない。が、私も昔似たような事があってな。その時の私と同じ表情をしていたのでな」
「そうだったんですか……」
「それに、君はバトル前には始めない、と言っていたが、今は始められないと言い換えてる。つまり、やりたいのだろう?ガンプラを」
「…………けど、お父さんが許してくれるかどうか」
「ふむ……よければ、詳しい話を聞かせてもらえないだろうか? 」
「………はい」
「カワグチさん!次俺とバトルしよ! 」
っと、コノエ君がバトルシステムの所へと駆け寄ってきた。
「ああ。もちろんいいとも。ミヤモト君。すまないが後ででもいいだろうか? 」
「あっ、大丈夫です! 」
カワグチさんとコノエ君がバトルを開始し、僕はバトルシステムのある部屋の外から見る。
「大事なのは、僕がどうしたいのか…………制限されるというのなら、そのためにどうするべきか………か……」
先程言われた言葉を思い返し、待っている間にその事について考える事にした。
ガンプラバトルなどという遊びをやることに意味はない。そんな暇があるなら、道場を継ぐために稽古をこなし、部活動の大会を勝ち進め。
昨日お父さんに言われた言葉が頭に過る。確かに、ガンプラは遊びかもしれない。やっていても、意味があるかどうかなんて僕には分からない。
けど…………それでも楽しかった。剣道をやっていても、あんなにワクワクするような事はそんなに無かった。
昨日の男の人達や、コノエ君や、カワグチさんとのバトルは、全てが楽しかった。負けた時だって、また戦いたい。今度は勝ちたいと思った。
もう一度…………ガンプラバトルがしたいと思った。
なら、僕はどうするべきなんだろう……?
ーーー--
「待たせてすまない」
「いえ、大丈夫です! 」
コノエ君とのバトルが終了してからしばらくあと。コノエ君が帰るのを見送り、早速本題に入る。
事情を説明中・・・・・
「成る程。そういうことか」
話を聞いたカワグチさんは、手を顎にかけて何かを考える。
「僕の知っている限りじゃ、お父さんは昔から娯楽は将棋とかをそういうのしかやってなかったから、こういう感じの娯楽に意味は無いって思ってると思うんです」
「堅物の父親か…………そして道場を継いで欲しいと願っている、か」
「考えてみたんですけど、どうすればいいのか分からなくて………」
「ふむ…………ならば、こういうのはどうだろうか?」
カワグチさんに助言を貰い、言われた言葉に納得し、僕は家に走って戻った。
「ふっ………これが若さか。それにしても、似たような境遇というものは皮肉なものだ。ミヤモト君を見ていると、昔の自分と重ねてしまう」
自身の愛機でもある、νガンダムの改造機…………νガンダムヴレイブを見る。
「さて、後は君次第だ。ミヤモト君よ」
ーーー--
「お父さん!いる!? 」
家の中へと入り、靴を脱いで居間へと向かう。そして扉を勢いよく開けると、座禅で座っているお父さんがいた。
「どうした?そんなに慌てて、何かあったのか? 」
「お父さん…………話があるんだけど、いい? 」
「…………なんだ? 」
「僕…………ガンプラバトルを始めるよ」
「…………昨日言った事を忘れたか?
ガンプラバトルなどという遊びをやることに意味は無い。そんな暇があるなら、道場を継ぐために稽古をこなし、部活動の大会を勝ち進め…………そう言ったはずだ」
お父さんの言葉に、カワグチさんが言っていた事を振り返る。
『意味が無い、か………………それは、やってみてから見極めても遅くはない。学べるもの、得られるもの、意味があるかどうかは、君自信が確かめればいい』
「うん…………けど、意味が無い訳じゃないと思う。きっと何か意味が、学べるもの、得られるものがあると思う。剣道だけじゃ、分からないものが。
それが何なのか知りたい。だから、僕はガンプラバトルを始めるよ」
「…………遊びをやって、学べるもの、得れるものとはなんだ?それは将来なんのためになる? 」
「今はまだ分からないよ。けど、分からないからこそ、やってみたいんだ。ガンプラバトルを」
「…………それで時間を無駄にして、どうする? 」
「無駄なんかじゃない。きっと、無駄なんかじゃないと思う」
「…………確信の無い答えばかりだな。それで、私がいいと言うと思うのか? 」
確かに、確信となる答えは無い。けど、だからこそ確かめてみたいんだ。
「正直、あまり思ってないよ。けど、やらなきゃ何も分からない。やらなきゃ確かめることも出来ない。だから、僕はガンプラバトルをやるよ。そして、いつかお父さんが納得するような答えを伝えるよ」
「………………いいだろう」
「!じゃあ───」
「ただし、一年だ。一年の間に、その答えを見いだして見せろ。そして部活動も稽古も疎かにしないことだ。これが一年間出す条件だ」
「──っ!? 」
つまり、一年が過ぎたら何か条件を付け加えるってこと?
「そして、一年後に結果を見せてみろ。剣道も……ガンプラバトルも…………その後はその結果による」
それだけ言い残し、お父さんは立ち上がって居間から出ていった。
「ありがとうねお父さん! 」
お父さんは振り返らず、そのまま歩いていった。
一年間…………その間に答えを見つけて、結果も出して、剣道も疎かにしないで大会でも結果を出して…………あれ?これって結構大変な事なんじゃないかな?
「…………な、なんとかなるよね、うん! 」
そうと決まれば、まずは部活動の大会!今はまだ予選だけど、明日(月曜日だけど祝日)は決勝戦!
そして、ガンプラバトルの大会!…………これは、探してから考えよう!
こうして、ミヤモト ユウのガンプラバトルは始まった。それと同時刻。ある場所にて…………。
『BATTLE ENDED』
「くっ…………! 」
「ふんっ…………この程度か」
ガンプラを持ち、その場を去ろうとする。
「ま、待て!いきなり乱入してきやがって、テメェなにもんだ!? 」
「答える義務はないな。せいぜいくだらない事をしないようにするんだな」
「テメェ! 」
殴りかかろうと近づいてきた男に対し、近くに落ちていた木の枝を拾い一閃する。
「ぐっ……! 」
木の枝を喉元へと突き立て、男は尻餅をつく。
「さて、じゃあもう行くからな」
木の枝を喉元から引き、ヒラヒラとさせながら立ち去っていった。
後書き
さて、ミヤモト ユウのガンプラバトルが、今始まりました!そして、分かる方は分かる、あの方も出ました!正直、あの方の言い回しと、父親の考えを考えるのがとても大変でした!私…………頑張ったアルよ。
これでようやく、思う存分ガンプラバトルが書ける…………寝不足が解消されるかは分かりませんけどね(笑)
では、次回更新は来月です!
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