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歌集「春雪花」

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 秋の田の

  風吹きにける

   侘しさに

 刈たる稲穂の

    重きことかな



 夏もいずこかへと姿を消し…秋は静かに深まってゆく…。

 刈り入れの終えた田は寂しい冬が来ることを実感させ…そこへ風の吹き抜ける光景は、ただ侘しいばかり…。

 彼には会えない…きっと、会いたいとも思ってはいまい…。

 膨れ上がる彼への想いは、刈り取られた稲穂の様に…私に重くのし掛かる…。


 一生に一度の大きな我が儘…神は決して許しては下さらないだろう…。



 声聞こゆ

  思へて返る

    秋の夜の

 月のなかりき

   闇ぞふりける



 彼の声が聞こえた…ような気がした…。

 ありえないことと頭では理解していても心は期待してしまい…そっと振り返り、落胆して自分を恥じる…。

 そこは…ただ暗闇が全てを覆うだけの世界…。

 まるで次から次へと闇が落ちてくるように…絶え間無い雨が降り注ぐだけ…。



 
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