平成ライダーの世界
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第二十八章
この静香だけでもキバのヒロインはかなり見事だと思うのですがこの作品は他にもヒロインがいます。しかも親子というポジションで、です。
それは麻生母娘のことです。まずは母親である麻生ゆりのことを書かせてもらいます。
過去の世界の素晴しき青空の会のメンバーでありその戦士でもあります。ストイックな印象を周囲に与え、また母をファンガイアに殺されています。彼女がストイックな戦士となり母を殺した相手であるルークを執拗に狙うことにも理由があります。平成ライダー、とりわけ井上敏樹脚本では多いタイプのキャラクターです。
確かにストイックで女性的な面は表面的には殆んどないのが彼女ですがその内面から見えるものを見出すことができる相手、音也には女性として見られ言い寄られることになります。当初は彼のそのあまりものいい加減に見える行動、あまりにも俺様な発言、そして破天荒な生き様に嫌悪感を見せます。これも当然といえば当然のことではあります。何しろ音也という人物はその内面を見せはしない道化を演じている人物です。しかもその道化を演じることを心から楽しみその演技もかなりのものです。彼の内面を知ることは非常に難しいことです。
ですがゆりは内面を見せないという自分のその生き方が反映したのでしょうか。音也の内面にあるものに次第に気付き惹かれるようになります。次狼はその彼女に子孫を産ませようとしますが次第に彼女の音也を想う気持ちを知り下がります。この辺りは次狼の人間性が見られる非常にいい場面だと思います。
この惹かれ合う二人は結局結ばれることがありませんでした。しかしそこでゆりが見せた女性的なもの、内面から醸し出されるものは立派でした。ルークとの過去世界でのイクサに変身したうえでの戦い、そして恵に残していったもの、彼女は素晴しい戦士でありましたがそれ以上に素晴しい女性であり母でありました。素晴しい女性は素晴しい母にもなれる、これは男性にも言えることですが彼女もまた然りでした。
続いては麻生恵に移らせてもらいます。彼女は母と違い自分の性格をかなり表に出しておりしかも活発な女性です。どちらかというと紅に対してはお姉さんでした。その為どうも説教臭い描写もありました。
彼女は現在の世界での素晴しき青空の会のメンバーであり基本的にはイクサとなって戦う名護のサポートに当たる位置にいました。
ですがその名護とは当初とにかく相性が悪かったです、その原因は主に名護の人間性にありました。とかく彼は付き合いにくい人間性でそのせいでとにかく衝突が絶えませんでした。ですがそれが致命的な失敗や破局には至りませんでした。名護が少なくともテレビ版では徹底的に道を踏み外さなかったことと恵自身が名護に背を向けたり徹底的に怒りを爆発させることがなかったからでしょう。
これが結果としていいことになってです、名護が過去の世界に行き紅の両親とそれぞれ会うことにより様々なことを知りました、若し名護が過去の世界に行かなかったならば彼はファイズの木場や草加の様に決定的な破局を迎えていたでしょう。
ですが二人に出会い大きく変わったうえで彼の時代に戻り紅がファンガイアとのハーフで知ることにもなりました、以前の彼ならこの時点で紅を即座に攻撃していたでしょう。
しかし彼は紅を大丈夫だと言い切り共闘を選びました、キバの主人公は実は三人いて紅と音也そして名護であると言われていますがこの時彼は完全にもう一人の主人公として紅の隣にいました。その名護の変貌は確実に恵との関係にも影響しました。
恵は仕事上でのパートナーとしてだけでなく私生活においてもパートナーとなり最終回では結婚しています、仮面ライダーダブルの照井竜もそうですが生涯の伴侶まで手に入れることが出来た仮面ライダーともなりました。恵は彼を選んだのです。
次に新旧のクイーンです、どちらも同じ種類のファンガイアでした。どちらも確かにファンガイアですがそれぞれ性格は違いました。
過去のクイーンは極めてクールで彼女もまた外見的に吸血鬼的な印象を視聴者に与えていたのではないでしょうか。演じておられていた加賀美由紀さんの外見と着こなしが余計にそうさせていたのでしょうがクールで超然的な感じはファンガイアと人間の違いすらも人間の姿を取りながらも表現していた感じがありました。
クイーンは紅と会っても最初は彼を相手にしていませんでした、やはり人間とファンガイアは完全に違うと意識していたからです。
ですが次第に音也のことを知り彼に惹かれその結果として紅が生まれます。そして人間とは何か、という平成仮面ライダーの問題に明確な答えを出すことにつながりました。
姿形が人間から変わることになろうとも心が人間であれば人間である、紅はその意味で完全に人間でした。その紅が生まれたのです。そのことを過去のクイーンは証明することになりました。ミステリアスでクールな印象を与えるだけでなく彼女はこうしたことも実現したのです。
過去のクイーンはそうしたあまりにも重大な遺産を残して表舞台から去りましたが死んでおらずその遺産を紅や現在のクイーンにも見せていました、残念ながら現在のクイーンは死んでしまいますが。
その現在のクイーンは初登場の時は園田真理を演じておられた芳賀優里亜さんだったこともあり視聴者の多くは思わなかったのではないでしょうか。僕も次第にあれっ、これは意外だと思いました。
ですが実際に彼女はクイーンでした、しかし元々人間世界で生活していてしかも性格自体が心優しく穏やかなものであったのでクイーンになるには明らかに無理がありました。冷徹に徹している様でそれがそぐわなかったです。
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