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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第八十五話 浴衣その十二

「それじゃあね」
「その曲ね」
「じゃあ今から歌いましょう」
「それじゃあね」
 こうしてだった、二人は皆が飲んでいるその大部屋の前に行ってそこで二人でももクロの曲を歌いだした。
 その曲を聴いているとだ、バスケ部の皆が言った。
「あの二人歌上手いな」
「そうだよな」
「かなりな」
「合唱部でもいけないか?」
「歌劇部でもいけるだろ」
「二人共な」
 それこそとだ、皆言う。
 そしてだ、僕にもこんなことを言った。
「大家のところってあんないい歌歌う娘いるんだな」
「二人共歌手出来るぞ」
「そこまで上手だぞ、あの二人」
「かなりだぞ」
「そうなんだよね、二人共ね」
 それこそとだ、僕も皆に答えた。
「歌上手なんだよね、しかも」
「しかも?」
「しかもかよ」
「二人以外にもなんだ」
 八条荘のことをだ、僕は皆に話した。
「うちのアパート歌上手な娘多いんだよ」
「へえ、そうなのか」
「あの娘達だけじゃないんだな」
「友奈さんも相当だし」
 この娘の上手さは二人に負けていない。
「留美さんや裕子さんも上手だよ」
「ああ、今井裕子さんだろ」
「あの人はもう有名だろ」
「今は静かに飲んでるけれどな」
「あの人だってな」
 見れば裕子さんは静かに飲んでいる、物静かだけれどよく見ると飲んでいる量も食べている量もかなりのものだ。
「歌上手だな」
「それで大学から推薦受けるんだろ?」
「八条大学からな」
「あそこの芸術科から」
「うん、早百合さんと一緒でね」
 この人と同じだ、そういえば。
「そうなるんだ」
「推薦か」
「というか向こうからスカウトが来たって感じだな」
「うちの大学に来てくれて」
「そうな」
「うん、実際にね」
 僕は皆に答えた。
「お二人は大学からね」
「スカウトきたんだな」
「あんまりにも上手だから」
「それで」
「そうなんだよね、教えるのも上手だし」
 このことも二人友だ。
「将来先生にもなれるだろうね」
「ああ、教えるのも上手だとな」
「余計にいいよな」
「引退しても人に教えられるからな」
「だからな」
「何か引退してもね」
 それでもだ。
「それからもあるから」
「教えることが上手だとな」
「その分いいってことか」
「ただ才能があるだけじゃなくて」
「そっちもあるといいか」
「そうみたいだね、ベートーベンもね」
 この人は何でも音楽の先生をしていたことがあるらしい、僕は皆にそのことも話した。ふと思い出してだ。
「教える才能なくて苦労したらしいし」
「ああ、ベートーベンはな」
「確かに教えるの下手そうだな」
「世渡り下手だったらしいしな」
「それも絶望的にな」
「いい人かっていうとね」
 僕はベートーベンについてさらに話した。
「尊大で気難しくて頑迷で癇癪持ちだったらしいから」
「それじゃあ付き合いにくそうだな」
「ゲーテとも下らない理由で大喧嘩したらしいしな」
「他にも敵一杯いたらしいしな」
「教える才能なかったんだな」
「うん、だからね」
 そのこともあってだ、ベートーベンは。 
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