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Three Roses

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第十四話 同じ父を持ちその五

「実にな」
「異端と見れば容赦しないからですか」
「無実の者を魔女と言うことも多く酷い拷問は常だ」 
 太子は目を顰めさせ司教にこのことを言った。
「卿等は新教を抑えたいのはわかるが」
「劇薬ですか」
「あの者達はな」
「劇薬は含まぬことですか」
「人も国も同じだ、病は治るかも知れないが」
 だがそれでもとだ、太子は司教を見据えたまま言葉を続けた。
「より危険な厄介事となる」
「それ故に」
「帝国ではあの者達は遠ざけている」
「新教や異教を抑えるのにも使っていませんね」
「新教の者達はあれはあれで役に立つ」
 国、そして帝室であるロートリンゲン家にというのだ。
「置いていて適度に権利を与えてだ」
「上納されるものを収める」
「それでいいのだ、過度に抑えては逃げられるだけだ」
 国の外にというのだ。
「新教徒には職人や商人が多い、だからだ」
「その者達の力が国の力にもなるからこそ」
「異端審問なぞ使わないことだ」
「ご安心下さい、確かにあの者達は使いますが」
「制御はするか」
「我等はあくまで旧教の優位を確立してです」
 そのうえでとだ、司教も太子に話すのだった。
「そしてです」
「それを永遠のものとするか」
「そうです」
 このことを考えているだけだというのだ。
「まさに」
「それでか」
「はい、あの者達の勝手にはさせません」
「断じてだな」
「無実の者を火炙りにはさせません」
「だといいがな。あの者達の後ろには教皇もおられる」
 旧教の頂点に立つこの存在もというのだ。
「教皇、今の猊下もどうした方か卿も知っているだろう」
「はい」
 瞑目する様に目を閉じてからだった、司教は太子に答えた。
「歴代の猊下もそうでしたが」
「今の猊下もな」
「酒色を愛され蓄財にも余念がなく」
「権勢をことの他お好きだ」
「その為にですね」
「異端審問を使ってご自身の敵を滅ぼされることもされる:」
 そうした人物だというのだ、今の教皇も。
「だからだ」
「この国においてもですね」
「猊下はこの国を再び旧教の雌牛にせんとされている」
「そしてその為に」
「異端審問の者達を使う」
「彼等に権限を与え好きにさせる」
「ご自身の為にな」
 まさにだ、そうせんとしているというのだ。
「異端の者達を成敗すればな」
「教会を批判する者が異端ならば」
「ご自身の敵を消せるからだ」
「即ち審問官は猟犬ですか」
「いい猟犬だ」
 ただの猟犬ではなく、というのだ。
「自分達から動いてくれるな」
「だからですか」
「帝国では彼等の動きは制限している」
「それも強くですね」
「若し許せばだ」
「それが帝国の害となる」
「そうなるからだ」
 だからこそ、というのだ。
「それを避けているのだ」
「そうなのですか」
「卿等に言う」
 太子は司教に忠告した。
「あの者達は最初から用いるな」
「若し用いれば猊下が入られる」
「そうだ、教皇猊下がな」
「そしてこの国を、ですね」
「教会の雌牛とするだろう」
 教会が完全に支配下に置いている国々の様にというのだ。 
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