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サトシ「25歳」〜理想と現実の先にあるもの〜

作者:ドリ男
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236

カツラ:「そして夫婦は2人の赤ん坊に
同じ飯を食わせ、同じ床の間で眠り、
同じ愛情を注ぎ、大事に大事に育てました。
やがてこの2人の赤ん坊の話は
カントー中に広まり、とある日、
他所(よそ)の村から複数の村人が
夫婦の元にやってきました。
、、、そして、その中の若い男が
夫婦の前に顔を出し、頭を下げこう言いました。
我々の村は一月前(ひとつきまえ)に山火事が起こり、
山も村も皆焼けてしまい、畑は荒れ果て、
作物を育てられず困っているのです”と。
”それはそれは何と不運な、、。村の者は
皆どうしておられるのですか?”と、
夫婦が若い男に(たず)ねると、
若い男はこう言いました。
”村の者たちは(わら)を集め寝床を作り、
腹を空かせては川の水で腹を満たす日々で
あります。このままでは我々の村は
滅んでしまいます、、、。どうか、
どうかお助けを!”と助けをせがみました。
”それは大変な事だ!、、しかし、
我々はどうすれば?”夫婦が再び尋ねると、
若い男はこう言ったのです。
”我々の村に、貴方がたの”赤子”を迎え入れたい!
噂によれば、貴方がたの”赤子”の
片方は愛と優しさを、もう片方は知恵と勇気を
託されたとの事。、、もし、我々の村に
その子らを迎え入れる事が出来たのであれば、
我々は村も人も生きる事が出来る!
、、どうか、どうか!”
若い男は涙を流し、叫び、夫婦に頼みました。」




ヒカリ:「、、、っ」

ヒカリ(ダメよ!、、絶対に渡しちゃだめ!)



カツラ:「夫婦は言いました。
”この子らは我々が神様から授かった
大事な宝物。そなたがたのお気持ちは
心痛い程身に染みる思いですが、
如何なる理由であろうとこの子らを
渡す事は出来ません。
どうか、里にお帰り下さい。”
しかし、、、
”このままでは我々は生きてゆけません!
同じ命を持って産まれた者同士、
どうか、我々にご共助(きょうじょ)を!!”
若い男は引かず、夫婦にしがみつき、
必死で助けを求めました。
すると、話を聞いていた夫婦の村の長が、
こう言いました。
”ではこうしよう。夫婦よ、お主らの赤子の
どちらかをこの者達の里に預け、
(よわい)十五になった時は
再びこの村に返してもらう。
そして遠き里の者達よ、お主らは
この子らが十五になるまでに
村を作り直す。どうじゃろうか?”
長の話に若い男は”それは有難い”と喜びましたが、
夫婦はそれでも納得がいきませんでした。」



ヒカリ:「当たり前ですよ!自分の子を
他人に貸すだなんて!」



カツラ:「昔はそういう時代じゃったのかも
知れんの、、、。
、、、そして、この話し合いは一晩続き、
長と若い男の説得で、夫婦は
赤ん坊の片方を、若い男の里に預ける事に
なりました。」



ヒカリ:「そんなっ!」



カツラ:「若い男は、
知恵と勇気を託された赤ん坊を選び、
夫婦は名残惜しい中、一先(ひとま)ずの
別れを惜しみました。そしてその後、
残された”愛と優しさ”を託された赤ん坊は、
夫婦の昔でポケモンと戯れながら
すくすくと育ち、歳を重ねていく内に
人もポケモンも、草や花も、分け(へだ)て無く
慈しむ、心優しい立派な人に育ちました。
夫婦はその子の成長を見ては、幸せを感じつつも
”早く十五になって欲しい、十五になれば
帰ってくる”と、もう片方の子の
帰りを案じていました。」




ヒカリ:「複雑ですねぇ、、、」




カツラ:「問題はここからなんじゃ。
、、あっ、そろそろ終盤じゃぞ?」


 
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