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色を無くしたこの世界で

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ハジマリ編
  第1話 日常

「みなさーん! 三十分、休憩でーす!」

 休日の昼下がり。
 雷門中のグラウンドに響いたのはマネージャー『空野葵』の声だった。
 彼女の声を聞き、今まで練習をしていたサッカー部のメンバー達がゾロゾロとベンチに戻っていく。

「はぁーつかれたぁー!」

 そう叫びながら勢いよくグラウンドに倒れたのは、ここの選手でありキャプテンの『松風天馬』だ。

「でも楽しいねー」

 彼の隣に同じく寝転がったのは、水色のバンダナが特徴の小柄な少年、『西園信助』。 
 二人は入学式をキッカケに知り合い、今では互いに親友と呼び合う程仲良くなった。
 天馬はスゥ…と息を吸い込むと「はぁー」と大きく吐きだす。
 と、とても満足そうな顔になった。

「あー、天馬。幸せそうな顔してる!」

 信助は「よいしょ」と身を起こすと満足気な天馬の顔を見て笑う。
 そんな信助の言葉を聞いて「だってさ!」と大きめな声で天馬は答える。

「最近、ゆっくりサッカーをする時間も無かったから、なんか嬉しくなっちゃって! 俺って幸せ者だなぁ~!」
「フフッ、天馬は相変わらずだね」
「!」

 そう寝転がったままの天馬を覗きこんだのは、両手にドリンクを持ったウサギの様な髪型をした少年『フェイ・ルーン』だった。
 彼はクスッと笑うとしゃがみこみ、持っていたドリンクを信助と天馬に渡した。
 身を起こし、フェイにお礼を言った天馬は貰ったドリンクを一口飲み、「フェイだって」と言葉を続ける。

「少し会わない内にまた強くなってるじゃん!」

 天馬の言葉にフェイはふふんっと自信ありげな表情をして言う。

「ボクだって未来でSARU達と一緒にサッカーしてたからね。今なら天馬のスピードにだって負けないよ!」
「じゃあ、競争してみれば?」

 ちょこんっと立ち上がると、天馬とフェイの間に入って信助は言った。
 その言葉に天馬は目を輝かせると、「良いね!」とフェイの方を向く。
 天馬の反応にフェイも「良いよ」と快く賛成する。どうやらフェイもノリ気の様だ。
 フェイの言葉を聞き、天馬は勢い良く立ち上がると「じゃあさっそく」とすぐさま行動を起こそうとする。が。

「まった!」

 突然の制止の言葉に天馬の動きが止まる。
 なんだと後ろを向くと、呆れた様子の葵が天馬達の方に近づいて来るのが見えた。 
 葵は近づいてくるなり天馬に人指し指を立て、「今はダメ」と言い放った。
 葵の言葉に「なんで」と、さも不満げな声で天馬は尋ねる。

「今は休憩中よ! 競争なら休憩が終わってからにしなさい!」
「えー」

 天馬の言葉に葵は「でもじゃない!」と強気に返す。
 葵の迫力に負けたのか、天馬は「ぅ…」と喉まで出かかっていた言葉を飲み込むと、「はい…」と萎縮した声で呟いた。 
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