百人一首
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65部分:第六十五首
第六十五首
第六十五首 相模
女心は変わりやすいと人はいう。
けれどそれを言う男心も変わりやすい。
それを今わかって嘆き悲しむばかり。
涙で袖が乾くことはない。ただただ泣き悲しむばかりになってしまっている。
愛を謡い貴女しかいないなどと言っていたあの人が。
今日は他の女の人を誘いその人の家で楽しんでいる。まるであの時の言葉が最初からなかったかのように。
男心は変わりやすい。あれ程誓ってくれた恋も今ではただの絵空事。過ぎ去ったことでしかなくなっている。
そのうえ世間ではこの恋のことを愚かな恋などと噂する。自分のことをあれこれと中傷しているのが聞こえる。もう諦めてしまえばいいとさえ言っている人がいる。
けれどこのままではいられない。あまりにも口惜しい。
諦めることなぞできるよしもない。自分にはこの恋だけしかないのだから。
だから今謡う。自分のこの気持ちを。あの浮気な人にもこの恋にも届くように。
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
こう謡いそのうえで届けたいと思う。それはあの人だけでなく自分を愚かなことを言う人達にも。愚かならそれでいい、けれど自分のその愚かな恋に向けた気持ちを知ってもらいたいから。だから今ここで謡った。この歌を。
第六十五首 完
2009・3・3
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