呪いの言葉
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第一章
呪いの言葉
歌劇のリゴレットを見てだ、ベルナデッテ=ガナッシはまだ子供であるが共に観た母のカーチャにこう言った。
「呪いってあるの?」
「ええ、確かにね」
カーチャも否定せずに言う。
「あるわね」
「そうなのね」
「ええ、リゴレットは言われたわね」
カーチャはベルナデッテ、自分と同じ縮れた金髪を後ろで束ね濃い茶色のはっきとした瞳、面長で高い鼻を持っている大きな紅の唇を持ったその顔を見ながらだ。こう言った。
「呪いの言葉を」
「人を嘲笑ってね」
「そしてその言葉通りになったわね」
「ええ」
娘の不幸に怒る老貴族を嘲笑いその老貴族に呪詛の言葉をかけられる。そしてその言葉通りにリゴレットは娘を失ってしまうのだ。
その結末まで観てだ、ベルナデッテは言いカーチャもその彼女に教えているのだ。
「ああしてね」
「自業自得っていうの?」
ベルナデッテはその母そっくりの顔を当人に向けつつ問うた。
「あれは」
「そうね、あまりにも可哀想だったけれど」
「娘さんがああなって」
「けれどね」
「それでもなのね」
「自業自得といえばね」
まさにというのだ。
「そうなるわね」
「やっぱりそうなのね」
「そう、人を嘲笑ってね」
「その言葉を返されたら」
「そうなるの」
リゴレットの様にというのだ。
「報いを受けるのよ」
「笑った報いを受けるのね」
「そう、だからいいわね」
ここでだ、カーチャは娘に強い顔と声で言った。
「ベルナデッテもね」
「人を嘲笑ったらいけないのね」
「そう、さもないとね」
「リゴレットみたいになるのね」
「なりたくないわよね」
娘を穢された老伯爵を嘲笑いその老伯爵に呪いの言葉を浴びせられてだ、自身も娘を穢されそして挙句は娘を殺されたリゴレットの様にだ。
「絶対に」
「うん、あんな目に遭うのだったら」
ベルナデッテも言った。
「私絶対にね」
「そう、だからね」
「うん、私そんなことしないから」
人を嘲笑することはとだ、ベルナデッテは母に答えた。
「絶対に」
「そうしてね、何があってもね」
「人を嘲笑ったりしない」
「そうしてね」
「ええ、わかったわ」
ベルナデッテはまた母に約束した、彼女が幼い頃のことだ。
ベルナデッテはその幼い頃のことを暫くは覚えていた、しかし。
成長するにつれこのことを忘れていった、そして。
大人になり就職してだ、すっかり奇麗になった時にだ。彼女は職場の同僚の一人であるフローリア=フリットリとことあるごとに衝突していた。
フローリアは黒い髪に瞳を持っていてだ、如何にも気の強そうな顔立ちをしていて実際にかなり気が強い。
仕事でもプライベートでも自分を曲げずに考えを言い押し通そうとする、それでベルナデッテともいつも衝突していた。
それでだ、ベルナデッテはいつも他の同僚達にこう言っていた。
「あの娘どうにかならないかしら」
「気が強いわね」
「何かとね」
「自分曲げないていうか」
「我が強くて」
「仕事でも何でも」
他の同僚達も言うのだった。
「とにかく困るわね」
「上司でも誰でも言うし」
自分の考えをだ。
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