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チャドリ

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第三章

「不真面目だからな、俺は」
「それは仕方のない奴だ」
「しかしジンも信じているしな」
「この話もだな」
「ああ、そうだろ。だからな」
「夜の十二時にこの通りにはだ」
「近寄らない様にするさ、もういつもそうした時間はな」
 それこそというのだ。
「寝てるしな」
「夜はしっかり寝ているか」
「それで次の日の仕事に精を出してるんだよ」
「それ自体はいいことだ」
 マスルールもこのことはよしとした。
「働くことはアッラーへの信仰でもある」
「そうだな」
「頑張って働いて金を儲けてだ」
「いい家を買ってかみさんを貰って」
「生きることだ」
「そうするな。しかしチャドリを着たグーラの団体さんか」 
 彼女達についてはだ、イマルはこう言った。
「出会ったら本当に大変そうだな」
「貪り食われるに決まっている」
「そうだな、あいつ等が食うのは墓場の死体だけじゃない」
「生きている人間もだ」
 他ならぬ今話をしている彼等もなのだ。
「襲って食う、だからだ」
「夜にはここに出ないことだな」
「明日に備えて寝ろ」
「そうしていくさ、これからもな」
 仕事中心にしていている生活についてはこう言う、だが。
 ある日イマルはそのマスルールが夕方に来てそこから話してだ、マスルールの方からイマルに言って来た。
「御前さんかみさんを探してるな」
「いつも言ってるだろ」
 笑ってだ、イマルはマスルールに返した。
「欲しくて仕方がないさ」
「それなら一人いい人を知ってるが」
「へえ、そうなのか」
「あんたより年上の後家さんだがな」
「後家さんがどうしたんだ」
 こうも返したイマルだった。
「それを誰が気にするんだ」
「ムハンマドもだからな」
「後家さんと結婚してるぞ」
 資産家の後家が一番目の妻だった、生真面目な彼はこの妻をまず大事にした。
「それで何で気にするんだ」
「最近年上だのそういうのを気にする奴がたまにいる」
「たまにだろ、俺は違うさ」
「そうした人でもだな」
「問題ないさ」
 それこそ、という返事だった。
「それも全くな」
「ならいいがな」
「じゃあその人紹介してくれるか?」
「今すぐでいいか?」
 マスルールはイマルにすぐにと告げた。
「そうしていいか?」
「おい、早いな」
「思い付いたからここに来てな」
「俺に話してくれたか」
「ああ、あんたもう売りものは」
「今日は西瓜を売ってたけれどな」
 見れば彼も座っている敷きものの上には何もない、実に奇麗なものだ。
「今さっきだよ」
「全部売れたか」
「今日は売れたぜ、だからこれで帰ろうと思っていたらな」
「俺が来たんだな」
「そうだよ、けれどな」
「そうした話ならだな」
「乗るさ」 
 笑ってだ、マスルールに答えた。
「是非な」
「そうこないとな、それじゃあな」
「ああ、今からだな」
「その後家さんの家に行くぞ」
「後家さんどんな人だい?」
「歳は二十八、子供はなしだ」
 マスルールはまずはこの二つのことから話した。 
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