カシュック=オユヌ
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第二章
「アッラーは必ずそのとても素晴らしい方を紹介してくれるでしょう」
「僕がアッラーにお願いをすればだね」
「アッラーは偉大です」
この世で最も、です。
「ですから」
「それじゃあ僕はアッラーにお願いするよ」
「これまで通り普通のことを続けられたうえで」
「そうするね」
スルタンはアリババの言葉に頷きました、そしていつもアッラーにどうかとても素晴らしい女の人、奥さんにすべきその人に会わせて下さいとお願いしました。
お願いを二週間程続けながら政治も行います、この日は宮殿での政治の後で。
お昼御飯を食べてから領地の見回りにお忍びで出掛けました、そうしていつも領地が治まっているのかを確かめているのです。
スルタンは商人に変装して弟さんの一人に留守を任せてアリババを連れて宮殿を出ました。そしてこっそりとです。
領地を見て回ります、領地の状況はといいますと。
「いい感じですね」
「そうだね」
スルタンはアリババの言葉に頷きました。
「街も村も奇麗でね」
「皆明るく仕事に励んでいます」
「ならず者や盗賊の話もないし」
「商売も繁盛していて」
「今は問題ないね」
「何よりです」
「全くだよ」
明るい笑顔で応えたスルタンでした、領地の皆が幸せに暮らしていてこのことを心から喜んでいます、そして。
ある村に来た時でした、村は丁度結婚式が行われていました。若くて奇麗なお嫁さんがとてもハンサムなご主人と一緒に皆から祝福されています。
その結婚式を見てです、スルタンはにこやかに笑って言いました。
「うん、とてもいいね」
「はい、若い二人の門出ですね」
アリババも言います、この人もまだ若いですが。
「何度見てもいいです」
「そうだね、そういえばアリババも去年モルジアナと結婚して」
「家でも幸せです」
「何よりだね、そして今は」
「あちらの二人がですね」
「人生の門出を迎えているね」
「とても幸せに」
こうお話しながらです、二人で結婚式を見ていると。
村の娘さん達が両手に二本ずつ木のスプーンを持ってカスタネットみたいに打ち合わせてそのうえで踊っています。その服はといいますと。
黒地で縁や袖のところに金糸で刺繍が入れられている丈の短いチョッキを着てです。
その下は赤い黄色の糸の刺繍が入った丈の長い服と黄色の後ろがくるぶしまである生地の薄い服です。下はシャルワールというとてもゆったりとしたズボン、黄色のそれをオレンジの脛まで覆っているスカートの下に穿いています。靴は黒です。
頭には円筒形の赤いトルコ帽を被っていてその上にさらにヤズマというオヤという可愛らしい縁飾りのあるスカーフを被って頭を完全に覆っています。この華やかな服を着た娘さん達がです。
明るく踊って結婚を祝福しています、スルタンはその娘さん達も観ていましたが。
その中にです、鳶色の目と髪の一際背が高く明るい顔立ちの女の子を見付けました。スルタンはその女の子を観てです。
スルタンは着ていた上着を思わず肩から落としそうになりました、それで慌てて着なおしてです。
そしてです、アリババにこっそりと囁きました。
「あの背の高い娘のことをね」
「あの娘さんをですか」
「ちょっと調べてくれるかな」
「若しや」
「うん、顔と外見はね」
この二つはというのです。
「とても気に入ったから」
「だからですね」
「性格もよかったら」
それならというのです。
「是非にね」
「わかりました、それでは」
「どの村かはわかってるから」
スルタンは治める領内の全ての街や村、川や湖等の名前や場所、至る道等まで全て頭に入れています。そうでなくてはいい政治が出来ないからです。
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