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Fate/kaleid night order

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第10節:騎士王再来

あの後、ライダーを倒した子ギルたちと合流し、剣崎さんのことを皆に紹介し、お互いのことを説明し完全に理解出来るまで1時間ほどかかった。
また、子ギルが言うには今の自分は一度受肉したはずなのになぜか解除されてしまっている、要は身体構造がサーヴァント本来のものに戻ってしまったとのことなので、遠坂契約した。
剣崎さんも同様だった。

そして、そこから今度はイリヤたちのことについても全て話し合い、理解した時には夕方になっていた。もっともこんな天候だと、夕方と言うのもなにかデジャヴを感じるが。



そして、今俺たちは衛宮邸の前に立っている。


「一部の奴はもう知ってると思うけど、ここは俺の実家だ。」


知らない奴のためにも改めて紹介をしておく。


「……開いてるか」


半壊した門を開け放つ俺。その奥では一部が半壊している武家屋敷が鎮座していた。


「……一応、こう言うべきだろうな、ただいま。」

「そうね。ただいま。」

「うん、ただいま。」

「じゃあ私も。ただいま。」

「私も。ただいま。」


俺、遠坂、イリヤ、美遊、クロはもう知っているが改めて「ただいま」を述べた。


「さ。他の皆も入ってくれ」

「おう」

「では、失礼する。」
「ああ、ありがとな。」
「失礼しまーす。」
「お、お邪魔します。」
「じ、邪魔するわ。」


軽快に応え、女性陣は少し抵抗を覚えながらもその門をくぐった。
士郎の家は築100年はあろうかという武家屋敷である。その大きさは語らずとも理解できるだろう。
その半分が崩れていようとも休める事に変わりはない。


「……こっちも崩れているのか」


俺としては切嗣との思い出が詰まった場所が壊れてしまっているのを見るのは心苦しい。
だが、今はそんな感傷に浸っていることはできない状況であることは重々承知している。だからこそ、屋敷の中を進む。

自身の部屋へとたどり着いた士郎は手早くボロボロの服から着慣れた服装へと着替えた。

そして、居間へと戻れば、各々が寛いでいた。

「あれ?キャスターと教授は?」
「ああ、あいつなら結界を張りに行ったぞ」
「そっか、ありがとう剣崎さん」

その後に彼は台所へと移動する。冷蔵庫を開き中に残る数少ない食料を腐食がないかを確認してから取り出し熟考する。


「ガスはあるか……水は井戸からのやつを沸かせばいいし」


井戸の方は定期的に使っていたので問題はないと思われる。
ガスもボンベの方を使っているので問題はなかった。

つまりは料理をするには少しアレではあるが、問題なかった。

そうと分かればすぐさま行動とばかりに士郎はせっせと動き始める。

「先輩……ちょっとだけよろしいですか?」
「ん、いいぞ?料理の片手間で悪いな」
「いえ、お気になさらずに。で、本題なのですが。これだけ大きなお家に、先輩はおひとりで住んでおられるのですか?」
「え、そうだけど。なんで?」


この場合のなんでは、なぜそう思ったのか。という意味合いである。
士郎はマシュに初見で見抜かれたことに驚きを隠せなかった。


「失礼ながら、先輩の靴をしまおうとした時に、どう考えても一人分の数しかなかったので」
「……そうだな、今でこそ大所帯だけど、それだって結局は食事の時だけだし。それに一時的に2人になったこともあったけど今は勿論そうじゃないしな。」


マシュは目を伏せ、途切れ途切れに問いかける。


「……寂しく、ないのですか?」


その問いになんと答えるべきか、と悩んだ後、素直に答えてしまうことにした。


「……うん、そうじゃないと言えば嘘になる。けどさ、今はそれどころじゃないかな。」

「何故、でしょうか?」


料理を続けながら、士郎は遠くを見る様に想いを馳せる。
かつてのあの夜の事を。そして、かつて通り過ぎたあの戦いのことを。


「親父がな、夢を託してくれたんだよ。それに成ろうと必死になってた」

「夢、ですか……?」

「ああ……それに、前にマシュにも言ったある戦いでそれが辛いけど間違いじゃないってこともわかった。だから今の俺はそれを叶えることに迷いはない。」

「……どんな夢なんですか?差し支えなければ教えてください」


士郎は上目でこちらを見てくる少女に微笑み、自身の願いを紡ぐ。彼を救った男の夢を……


「正義の味方になる。それが借り物ではあるけど、それでも大事な、絶対後悔しない、俺の、夢なんだ…」


呆気にとられた様なマシュはその言葉の意味を少しずつ噛み砕いていってから、そして漸く心の底からの言葉を語った。


「……本当に、素敵な夢ですね」
「ありがとう。さて……出来た」
「お、いい匂いじゃねえか」


料理が出来上がると同時にキャスターが居間へと入ってきた。目敏く料理の匂いを嗅ぎつけるのは長年の経験のうちにはいるのだろうか。


「簡単なもので悪いけど、これでどうかな。」

「うわー!やっぱりお兄ちゃんのつくる料理はいつも美味しそうだね。」

「ハハ、ありがとな。」

「はい、これは…チャーハンですね。確かに美味しそうです!」

「チャーハンというより、材料少なかったし、冷凍しておいたお米を使った焼き飯だけどな、で、こっちは有り合わせでつくった味噌汁だ。」

「なんでもいいじゃねえか、美味そうなんだしよ。おい、ライダー、そこどいてくれ」

「ああ、ってそっちに座ればいいじゃないか。」

「ちっせえ事気にすんなや。おい坊主ぅ!まだかぁ?」

「できてるよ!けど、自分のくらい運んでくれ!たく……しょうがない、おいギル。お前も手伝え。」

「えーなんで僕なんですか?他にもたくさん人手がいるでしょうに。」

「お前が今まで一番暇そうにしてたからだよ。」

「それならそこのステッキもそうでしょう。」


子ギルがそう言ってルビーの方を見た時には、ルビーはイリヤの髪の中に潜り込んでいた。


「あいつが働いてないのは私も認めるけど、今は早く行きなさい。あんたもお腹はすいてるでしょ?」

「えーでもなぁ。」

「ゴチャゴチャ言ってると契約を解除するわよ。あんた、今はなんでか受肉が解除されちゃってるんでしょ。」

「ちぇっ、しょうがないなぁ。まったく、クロさんといい凛さんといい、こんな弱そうな僕をパシらせるなんてホントどんな神経してるんだか。」

「いやどこがなの⁈」

「イリヤの言う通りよ。それにね、この国には働かざるもの食うべからずっていうことわざがあるのよ。あんたも知ってるでしょ。ほら、わかったらとっとと士郎を手伝う!皆待ってるんだから。」

「はいはい解りましたよ。やればいいんでしょ、やれば。」


ギルはそう文句をこぼしながらも台所にやってきた。
なので俺は皿によそった焼き飯をマシュとギルに渡し、自身も運び役にはいる。剣崎さんと美遊も進んで手伝ってくれたので往復は一回で済んだ。
ふと、気がつくとオルガマリーさんが座敷に横になり眠りへと落ちてしまっている事に気がついた。


「所長、起きてください。少しでも胃を満たしておいた方がいいですよ」
「……うーん。トリシャ、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ起こさないで……」
「先輩、どうしましょう。所長が私を知らない人と認識してます。」
「それはただ寝ぼけてるだけじゃないか?」


剣崎さんのツッコミに俺たちは笑いをこぼし、そのままオルガマリーさんを揺すり続ける。








〜〜数十分後〜〜



「ごちそうさま。やっぱ士郎の料理は美味しいわね。」
「ごちそうさま〜。うん、やっぱりどの世界でもお兄ちゃんの料理はあったかくて優しい味だね。」
「うん、食べているとお兄ちゃんの思いやりが伝わってくる。」
「そうそう。まさに、これぞ”お兄ちゃん”って感じよね。」
「そっか。ありがとな。」

「えっと、ごちそうさまでした、でいいのかしら。」
「そのはずです所長。大変美味しかったです先輩。」
「はい、お粗末様でした。」
「坊主、相変わらずお前の料理はうめぇな。お前料理人としても生きていけんじゃねぇの?」
「ああ。ジャンクフードばかりで長らく忘れていたが、こういうのも悪くはない。あの夫婦が出してくれたのと同じ、温もりを感じられる料理だ。」
「流石に褒めすぎですって。何も出ませんよ。」


皆の俺の料理への感想を聞きながら、一応皿を洗う為に水溜めの桶につけておく。

その時だった。


「ところで盾のお嬢ちゃんは宝具は使えるのか?」


キャスターの唐突な質問、それにその場の雰囲気が一気に沈む。


「あ?もしかして使えないのか?デミ・サーヴァントだかなんだかわからんが宝具が使えないってのはどうなんだ?」

「キャスター…それは本人が一番気にしてることなんだからあんまり口を出すなよ」


あの大きな盾をどう使うのか分からないがマシュはアレで敵を殴ったり、地面に突き刺したりして器用に戦っている。それはそれで良いのではないのか?


「そりゃ確かにマシュはまだ宝具は使えないみたいだけど、話を聞くに、そのデミ・サーヴァント化?を経験してからまだ一日も経ってないんだろ?だったらそんなに早く宝具が使えるようになるわけがないじゃないか。」


剣崎さんの弁は確かに正しい、しかし英霊のキャスターから、そして俺と遠坂から見ればそれは少し違う


「あ?そんなもん使えるに決まってるじゃねえか」

「え?」


キャスターの軽い言葉に戸惑うマシュ、それを俺たちは大人しく見守る

「英霊の宝具なんてのは霊格魂そのものに刻み込まれてんだよ。お前にどんな英霊の霊格魂が憑いてるかわからねえが宝具そのものが使えないなんてのはまずあり得ねぇ」

俺と遠坂の方を見て「なっ、坊主、嬢ちゃん?」なんて言ってくるのもだから何も言い返せない。

「お嬢ちゃんは宝具がそれなりに戦わないと発現できないと思ってるだろ?それは間違いなんだよ。ようは気合の問題だ」

「気合…ですか?」

「あぁ、大声を上げるとか…そんなことから始めてもいいと思うぜ?」

「そうなんですか?そ・う・な・ん・で・す・か!」

「うわわわっ⁈」

「ちょっと!何よいきなり⁈」

「ッ………⁈」


おおう、突然の大声。これはさすがに俺もこうするとは思わなかった


「お、おお……マジか、ものの例えだったんだが…流石にまじでやるとは思わなかったぜ。」


キャスター自身も驚いた顔をしている。だがそれよりも女性陣には結構響いたようだ


「士郎、アンタなんで驚いてないわけ⁈」

「うぅ……耳がキーンとする。お兄ちゃんとキャスターさんはなんでそんなに平気な顔してるの?」

「同感…お兄ちゃんはなんでなんともないの?」

「ホントにね。まったく、ケロリとしすぎよ。」


顔をしかめる女性陣…あはは。まぁ、慣れとしか言えないんだが


「いやほんと、いきなり大きな声出さないでよマシュ。今のは本気で鼓膜が破れるかと思ったわ。」

「そ、そうですか。本当にすみません。」


遠坂の発言にシュンと縮むマシュ、うん、なんか悪い気がしてきたな


「キャスター、わざとじゃなかったんだろうけど純粋なマシュをからかうのはやめてくれ。」

「? そうか?まあ、気を悪くさせちまったってんならすまねぇな。」


と、そこで急にキャスターが俺の肩を叩いた。


「なんだ?」

「おう、てなわけで急だがちょっち付き合え。そこの嬢ちゃんもな。」

「え、あ、はい!」


庭へと出て行くキャスターに続く為にマシュが霊体化させていたブーツを纏い、先に外に出た。
そして俺は靴を履く為に玄関へと回り、戸棚からマシュがしまってくれた靴を取り出して履く。

動きやすい様につま先を地面でトントンと突き、鍵を閉めていた扉から外へと出た。

そして庭へと続く細道を進んでいると、不意に爆発音が俺の鼓膜を振るわせた。


「っ!今のはまさか敵襲か⁉︎だとしたらマシュの身が危ない!急がないと!」


そして庭に辿り着いた俺が見た光景は俺の予想を裏切るものだった。


俺が見たもの。それは、杖から炎を放つキャスターと、それを必至に回避しようとしているマシュの姿だった。

キャスターの炎は前に出たマシュの盾によりかき消される。
マシュは盾で炎と石を弾きつつ反撃の機会を伺っているようだが、もともと疲労困憊だったため難しそうだった。
マシュは信じられない、と言った風にキャスターを見、問いかける。

「キャスターさん!? さっきから何をしているんですか!?」

「何って特訓だ特訓。ちと荒療治だがな。おい嬢ちゃん、お前が宝具を使えねえこと、それは明日の戦いにおいて致命的な弱点となっちまう。てなわけで……俺は今から本気でそこにいるお前のマスターに、宝具でなくちゃ絶対相殺できない一撃をかます!死なせたくねえなら、決死の覚悟を抱いてかかって来やがれ!」


「そ、そんな、無茶苦茶な!!」
「それが出来なきゃ坊主が死ぬだけだ!明日にはもう決戦なんだぞ、わかってんのか!」
「そ、それは……」


 ……キャスターは本気だ。かつて経験したから言えるが、こいつはやると言ったらやるタイプだ。
 キャスターがこうやって本格的に荒々しいやり方を行使しなくちゃいけないくらい切羽詰まった状況になってしまっているのだろう。


「な、何それメチャクチャじゃない!」


隣を見ると、俺と同じようにさっきの爆音を聞きつけたのかイリヤたちが既に転身(プリズムトランス)した姿でキャスターとマシュの特訓を唖然といった感じで見つめていた。


投影、開始(トレース・オン)。」


俺もマシュを守るため再び剣の丘からあの花冠を取り出す…


「体は、剣で出来ている。」


そこまで言った時、俺を制するように遠坂の手が目の前に出される


「遠坂!?」
「見てなさい、士郎。あの子は確実に宝具を展開できる、こういう時の女は本当に強いんだから。」
「だけど……」
「それにね。見てる以外で士郎が今出来ることがあるとして、それは誰でもないあなた自身が一番解ってるはずよ?」


その問いを投げかけられたことで、俺はある考えに至る。


「! ……そうだな。俺が出来ることなんて決まってる。ありがとな遠坂!」
「ふふ。解ればいいのよ。ほら、早く行ってあげなさい。」
「ああ!」





-sideイリヤ-




私はキャスターさんとマシュさんの特訓をびっくりしながら見ていた。


(な、なにそれむちゃくちゃすぎだよ!こんなの見てられない!)


私は飛び出そうとした。
だが、見覚えある手がそれを遮る。


「クロ⁈いきなり何するの!」


そう、もう一人の私。私の双子の妹、クロエがそこにいた。


「落ち着いてよく見なさいイリヤ、あの光景を。何か思い出さない?」

「何を言ってーーーあっ⁈も、もしかして⁈」


そう、それはかつてある並行世界で私が身をもって経験したある出来事に酷似していた。


「そ。今のマシュはあの時のあなたのようなものよ。
誰かを助けたい。誰かの力になりたい。けど弱音をたくさん吐きたくなるほどに戦う覚悟が半端だから力をフルに出しきれない。
そう、うじうじイリヤだったころのあなたにね。」

「う、うじうじは余計だよ!でもそっか、だから……!だけど、だとしても私は……」

「マシュさんを助けたい、でしょ?」

「うん、そう…ってミユ⁈」


今度は私の大親友、ミユが私を驚かせてくれた。


「ゴメン、驚かせちゃった?」

「あ、うん、ちょっとだけ。でも、なんでミユは私が言おうとしたことがわかったの?」

「それは……私はイリヤの友達だから。
それに、マシュさんがあのころの私にも似てるように見えたから。きっと誰かの支えを、助けを必要としてるという点で。」

「ミユ……」


あの頃、あの世界でまた一人ぼっちにされていた美遊だからこそ語れるそれらの言葉は私の心にとても重く響いた。


「だから、行ってあげて。私はあの時イリヤが助けに来てくれて本当に、本当に嬉しかった。クロもつまるところ、それが言いたかったんでしょ?」


「ええそうよ。まーったく、ミユに言いたいこと全部持ってかれちゃったわ。ほらイリヤ、ぼさっとしてないでとっとと行ってきなさい!」

「ミユ、クロ……うん、わかった。私行ってくる!」


私はそう行ってマシュさんのもとへ飛び立った。





-side士郎-


俺はマシュのもとに駆け寄る。と、その時イリヤもやってきた。

「イリヤも考えてることは同じみたいだな。」

「うん!」


お互いに笑い合う。確認はそれだけで十分だった。
次の瞬間、俺たちはマシュの方を向き、俺は彼女の右肩に、イリヤは左肩に、それぞれ手をおき、余った方の手で彼女の背中を支える。


「俺とイリヤがお前を支える…だからマシュ!キャスターにすごいものを見せてやろう!」

「そうだよ!マシュさんなら絶対やれる。マシュさんの誰かを護りたいって願いは本物だってお兄ちゃんも私も知ってるから!

「先輩、イリヤさん……はいっ!!」


 そうだ。俺たちに今出来る事は、マシュの覚悟を支えてあげることだけだ。
 更に熱さが上がっていく……キャスターは宝具を放つ気だ。


「ん、坊主だけじゃなくイリヤ?嬢ちゃんも増えたのか。まあ構わねえが。そんじゃあ行くぜ……嬢ちゃん!!」


キャスターはゆっくりと呪文を紡ぎ出す。


「我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社――――
焼き尽くせ、木々の巨人……

焼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』!!」


 炎の巨人が顕現する。
 距離が近いからか、それとも熱量が高すぎるのか、どちらに―――どっちもにしてもチリチリと炎で肌を焼かれるような熱気が伝わって来て、今にも皮膚が燃えそうだ。

そして、炎の巨人の一撃が頭上より振り落とされた。 
マシュの盾は炎の巨人の一撃を受け止める。


「ぐ、ううぅぅぅぅぅぅ……」

「おいおいどうしたァ!!嬢ちゃん、さっきからずっと押し負けてんぞ!!そんなひ弱なんじゃてめぇの大事なセンパイとトモダチが全身丸ごと黒焦げになっちまうぞ!!」

「っ……!ぅぅぅううううああああああああああァァァァァぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


マシュは全身に残る力を全て振り絞ってまるでこの身が千切れんとでも言わんばかりに堪え続ける。


(守らないと・・・!使わないと、皆、皆、燃えてしまう———偽物でもいい、今だけでもいい。私が使わないとみんな・・・)

「「マシュ(さん)。」」

「「頼む(お願い)!!」」

「っ……………!」


俺たちの叫びを聞いたその瞬間だった。
マシュは盾を正面に突き立てるようにして構え、


「はあああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ———!!!!!!!」


裂帛した叫びとともに宝具を発動させた。
 キンッ、と言う音と共にマシュの盾から巨大な魔方陣とともにこれもまた巨大な光の結界が展開され、炎の巨人の一撃をなんとか押し返し、そのまま巨人を吹き飛ばした。巨人はそのまま消滅し、キャスターは首をコキリ、と鳴らしながらマシュを褒める。


「―――ヒュウ。まさかマスターもろとも無傷とはね。出来たじゃねぇか、嬢ちゃん」
「え、もしかして私、宝具を発動できたんですか………?」
「ああ喜びな……いや違うか。褒めてやれよ坊主。嬢ちゃんは間違いなく、文句なしに一級のサーヴァントだ」

(と、いう事はアレは……!!)

「マシュ!!やったな!!宝具展開できたじゃないか!!」
「うん!おめでとうマシュさん!!」
「フォウ、フォーーーウ!!」
「あれ?居たのフォウ君?」
「フォウ!?」


 イリヤと、ずっと居た!!と言いたげなフォウと共にマシュを褒める。
 カルデアから見ているロマンも驚いたようだ。


『マシュはそれほど精神的に強くなかったはずのに……まさか、こんなに早く宝具を開放できるとは!!』
「いやDr.ロマン。それはアレだ、嬢ちゃんを見誤ってたんだよ。嬢ちゃんは守る側の人間だ」
「未熟でも仮初でも贋作でもなんでもいいから守りたい。多分そういった願いがきっかけで宝具展開に繋がったんじゃねえか?」


 それは鳥に飛び方ではなく泳ぎ方を教えるような物……らしい。確か、ペンギンって……「フォウ!!(それは気にするな)」あっ、はい。

「……まっ、それでも真名をものにするには至らなかったようだな?」
「ああ……」


そう。簡単に説明するが、宝具というのはその英霊が生前に築き上げた伝説の象徴。その宝具には真名―――つまり真の名が存在する。それを魔力と共に開放することによりその宝具の力を十全に使う、というのがメインであり、他にも永続的に一定の効果を発揮させる常時発動型がある。


「まあでも、宝具を使えるようになったこと自体はいいことじゃない。」

気づけば、遠坂とクロとオルガマリーさんがこっちに来ていた。

「そうね。クロの言う通りだし、ここは記念に仮の名前をつけてあげたらいいんじゃないかしら。ね、マリー。」
「ええ確かにそうね。それじゃあちょっと待ってて、うーん何かいいアイデアはないものかしら……?」


オルガマリーさんはそのまましばらく首を右に左に捻り続けたのち、何か閃いたらしくポンッ!と手を打った。


「そうね、宝具の擬似的な展開だから・・・”仮想宝具 擬似展開/人理の礎(ロード・カルデアス)”なんてどうかしら?キリエライトにぴったりだと思うのだけど?」
「ロード・カルデアス……良い名です!ありがとうございます所長!!」
直角90度で最敬礼をしたマシュに対して、どうだ凄いだろうとばかりにえっへんと踏ん反り返るオルガマリーさん。それに苦笑する俺と遠坂とイリヤとクロとサーヴァント二人。




その時だった。



『これは………!みんな、よく聞いてくれ。君たちのかなり近くに魔力反応が発生しているだが…妙なんだ。魔力値が一定していない。上昇したり低下したりを繰り返している。いったいこれは何だろう?』
「疑問はあとよ。ロマ二。その場所はいったいどこ?もしかしてこの屋敷の中なの?」
『あ、はい。そうですね所長。もっと詳しく言うと所長たちの視界に収まるところですかね、これは。』


その瞬間、俺は頭に稲妻が走ったかのように閃いた。
そして、おそるおそるDr.ロマンに確認をとる。


「ドクター、それってもしかして土蔵から発生してるんじゃないですか……?」
「あ、確かにそうだ!君の言うとおりだ。ありがとう士郎君……ってあれ⁈どこに行くんだい士郎くーん!」


俺はDr.ロマンの答えを聞いた瞬間、土蔵に直進していた。
そして辿り着き、扉を横に引いて中、特に右端を覗くとそこには俺の予想に違わないある魔法陣が展開されていた。


「ああ間違いない……アレは…!あ、でも……」


遅れてやってきた遠坂とキャスターもそれを見て目を見開く。


「おい嬢ちゃん、この紋様、この術式は間違いなくサーヴァント召喚のそれじゃねえか!」
「ええ、文句なしにそのとおりよ!しかも、ここに展開されていること、そして今も士郎が近づく度に魔力値が私にもわかるくらい高まっているあること、この2つの条件から導き出される答えは…………ドクター!」


遠坂は自身の予想を確実にするためDr.ロマンに声をかける。


「ん?何だい?」

「たしか、マスターが望む英霊を呼び出したい場合は、聖晶石3個とその英霊に関する触媒、例えば聖遺物が有ればいいのよね?」

「ああ、そうだけど……って、もしかして
この魔力反応はサーヴァントのものなのかい⁈」

「ええそうよ!しかもその正体も特定済みよ!」

「ほんとかい⁈じゃあ早く召喚してくれ!味方は一人でも多いほうがいい!」

「ええ勿論よ!士郎!」


そこでようやく遠坂は、先ほどからずっと呆然としていた俺に声をかける。


「何だ遠坂?」
「それが何かはわかってるんでしょ?」
「ああ勿論だ。サーヴァント召喚の術式だろ。だけどあいつはもうこの時代に敵として存在してる。来てくれる可能性はかなり低いだろ?」
「何言ってんの。それはこの特異点におけるセイバーでしょ?しかもキャスターの話だと完全なサーヴァントだったっていうじゃない?」
「ああ、あのセイバーは半分生きてるとかじゃなく間違いなく座から来てたぜ。坊主。」

「……だけどそれだけじゃ。そこの術式でくるのがあいつとは限らない。それに俺たちは第五次の時に俺たちの無茶のためにあいつに、仕方ないとはいえ自分の願いを諦めさせちまった。そんな俺に今更あいつを呼ぶ資格はないんじゃないだろうか?」


すると遠坂は俺の胸ぐらを掴み、


「あーもう!じれったいわね!アンタはあの子にまた会いたくないの⁈」

「そんなの決まってるだろ!俺はあの時からずっとあいつと再会したいって思ってる!遠坂と今のマシュとイリヤと美遊とクロと同じくらい、俺はあいつのことが好きだったんだ!誰になんと言われたってこの思いを変えるつもりなんかない!」

「でしょ?私もそうよ。だから、こっちから呼んであげましょうよ! 彼女の自らの王としての存在そのものが間違っていた。だからアーチャーの言ってた通りその事実そのものを抹消する。歴史を変えることが罪ですって? 知ったこっちゃないわ!間違ってる物は間違ってるのよ。なら、その間違った物が存在するという現実そのものが間違いで、間違ってる以上、それは罪で、間違いはただ正されなきゃダメ!」

「でも遠坂、それは……」

「ええ、本当に、どうしようもなく破滅的よ。
だけど、完璧だった王―――いいえ、完璧であろうとした王、か。アルトリアはきっと、今もずっと考えてる。その願いは、その在り方は正しいのかと。仲間が散ったカムランの丘で、その痛哭の中で考えているはずよ。」

「なら―――
私たちも、一緒に考えましょうよ。あの時、聖杯がまき散らそうとする悲劇を起こさないために共に死力を尽くした仲間として。共に戦い、苦しみ、そして本当は何が一番良いのかを、考えてみましょう。
 願いが叶わないっていう彼女にとっては戦う理由が無いだろう戦いに彼女を巻き込もうとする厚顔、もし仮にそれを笑う誰かがいたとしても、そんなやつは笑わせておけばいいのよ!」


躊躇う俺に対し、そう、力強く言い切った。


(…………俺は、何を迷ってたんだろう。そうだ、遠坂のいうそれこそ、俺が今のあいつにしてやれる唯一無二のことじゃないか!)


「ああそうだな。あいつのためにも俺がくよくよしちゃいけないよな。よし、やろう!」


そしてそれに対し、俺もそう力強く返す。


「ええそうよ、その意気よ士郎!
そのための条件も完全に揃ってる。士郎の胸の輝きがその証拠よ!」

「そ、そうか!たしかにこれなら!」

「そうよ、さあ早く魔法陣の上に聖晶石を3個、
ちょうど正三角形の形になるように配置して!」

「ああ了解だ!」


俺は決意と興奮を胸に、遠坂に言われた通りに魔法陣に聖晶石を3個配置する。


「できたぞ!」
「じゃああれを詠唱するのよ、わかってるわね?」
「ああ勿論だ!」


俺は召喚のための詠唱を開始する。


決意とともに俺は言う。
 手をかざす。
 そして唱える。
 唄うように。
 祈るように。
 再会の狼煙は高く上げられた―――。


「―――素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ―――」


 ぼう、と陣に光が燈った。


        

 風が、吹き荒れていた。
 巻き上がる烈風。渦を巻き、指向性を持った大気は刃となって土蔵に吹き荒れる。


「す・・・・・・すごい・・・・・・ッ!」


 眩いばかりのエーテルの発光と吹き飛ばされそうになる魔力の烈風に、たまらず私は身を屈め、組んだ両腕で顔を覆う。
 しかし――――決して、決して眼を閉じることは無い。力強い魔力の輝きに視界を焼かれながらも、私はその両の眼を開き、煌く陣と、まっすぐに伸びた士郎(アイツ)の背を見つめる。


「――――――告げる!」


 其れは誓約。其れは誓いの詞。
 常勝の王を、星の内部にて生み出されし人の希望の収束体であり最強の幻想(ラスト・ファンタズム)である最強の聖剣の使い手の御座より呼び出すための宣誓の詞。


「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!
 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!」


 狂ったような力の奔流。常人であれば卒倒しかねない。土蔵どころか衛宮邸そのものを破壊しかねないような暴力的な力。しかし当然だ。今から呼び出すは無窮の王。理想の王、そして神代と幻想の最後に立った王。彼のキング・アーサーに他ならない。これほどの反応はむしろ自然と言えよう。

 力は収束する。ある一点に。その王の到来に―――。
 最後の一説を全霊で以て謳い上げる。




「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」




 力は、形を成す―――。

 ふわふわと漂う魔力の残留。漂う砂埃。


「問おう―――――――――‐」


 だがそれらも、強大な神秘の具現を前に霧散する。


「うわぁ・・・・・・」


 思わず、知らず知らずの内に、少年達はため息を漏らす。
 知っていても――――いや、言っているからこそこの神秘は信じがたいのだ。清廉にして圧倒的。人域では無い、神域の神秘の具現が、少年達の目の前に現れる。



月光をそのまま体現したような、金の髪。
 エメラルドにも負けない零れる様な、翠緑の瞳。
 蒼で彩られたドレスとミニスカートと、白銀の甲冑。

そして両腕を包む、薔薇のように赤く、無機的なフォルムをした籠手。


 彼方より来たりし者がまっすぐに士郎と凛を見て―――――――――少し、微笑んで




「───――─貴方が、私のマスターか」



 契約の言葉を、涼やかに謳い上げた。
 


「―――お久し振りです。シロウ、リン。再び現世に召喚され貴方達の剣として、盾として戦えること、この上無く光栄な事だ」


「―――セイバー」

 ここに―――役者は揃った。三人はこうして再び出会い、この戦いを戦い抜くことを改めて決意する。 
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