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おぢばにおかえり

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第三十四話 あちこちでその五

「おぢばからも出られるわ」
「そうなんですね、じゃあその時は」
「その時はっていうと?」
「案内しますよ」 
 こんなことを言ってきました。
「奈良も八木も橿原も」
「案内って」
「ですから僕が」
「そんなのいいわよ」
 何かやけににこにことした発言にです、私は首を傾げさせつつです。阿波野君に問い返しました。
「別に」
「いいんですか」
「ええ、私だけで行くか」
 若しくはです。
「友達と行くから」
「奈良知ってる人います?橿原とか」
「自宅生の娘いるわよ」
「いや、そこは同じ大教会の」
「阿波野君と?」
「はい、どうですか?」
「何でそうなるのよ」
 自分でもわかる位ジト目になって横にいる阿波野君を見て聞き返しました。何かこの子と一緒にいると色々な表情になります。
「訳わからないことばかり言って」
「あれっ、嫌ですか?」
「嫌って言われると」
 それは不思議とです。
「そうじゃないけれど」
「じゃあいいですよね」
「全く、仕方ないわね」
 自然とこの言葉が出ました。
「案内してね」
「その時はですね」
「ええ、それじゃあね」
「いやあ、先輩と一緒に行けるなんて」
 物凄く嬉しそうに言います。
「最高ですね」
「何で最高かわからないけれどそこまで言うのなら」
 また阿波野君に言いました。
「いいわ」
「はい、じゃあ今から詰所に行って」
「私に言うことあるから」
「それからひのきしんに行こうと」
「ううん、だったらね」
 何かひのきしんと言われてです、私の方もです。
 最近といいますか考えてみたら教会本部の回廊ひのきしんをすることがあまりなかったのでこう阿波野君に言いました。
「私も付き合うわ」
「一緒に回廊ひのきしんしますか?」
「そうしようかしら」
「膝当て持ってます?」
 阿波野君は私の言葉を受けてすぐに聞いてきました。
「あれ絶対に必要ですよね」
「ないとね」
 回廊ひのきしんは膝を着いて雑巾がけみたいにするからです。
「膝痛いわね」
「よかったら貸しますけれど」
「二つ持ってるの」
「はい、スペアで」
「それはまた用意がいいわね」
 感心しました、今聞いたことにはかなり。
「まあ持ってはいるけれど」
「寮に置いてますよね」
「そうなのよ」
 東寮の自分達のお部屋にです、今は私が三年生で二年の娘と一年の娘の三人のお部屋です。長池先輩の立場になっています。 
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