雷と鉄と妖と
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第四話:普通に過ごして:
スバルがガジルの前で涙を流した、その翌日。
「・・・・・んぅ・・・」
——ギャハハハ・・・
微かに聞こえる笑い声に、スバルは眠りから目覚めた。
「・・・ふわぁあ・・・」
大きなあくびをして、目に浮かんだ涙を軽く拭うと、目の前に何着か服がある事に気付いた。
側には手紙が一つ。エルザからだった。
『尾が邪魔にならない物を至急取り寄せてみた。私の物もあるが、気に入ってくれると嬉しい。エルザ』
「・・・ふふ」
クスッと笑うと、手紙をテーブルの上において、適当に服を手に取ってみる。
服は袴だった。尾の部分に切り込みが入っていて、上から着る羽織りが、その切り込み部分を隠す構造になっていた。
「・・・どれにしよう」
スバルはそう言いながら、袴を目の前に並べてみた。色々な柄や色があって、なかなか選べない。
「・・・これにしよっと」
スバルはそう呟いて、選んだ袴に着替えて部屋のドアを開けた。
「——む、来たか」
真っ先にスバルに気付いたのはエルザだった。エルザはスバルの方へ駆け寄ると、顎に手を当ててスバルの全身をまじまじと見つめた。
「・・・うん。似合うではないか。気に入ってくれたか?」
「あぁ。ありがとな」
スバルは尾をシュルっと動かしながら、嬉しそうに礼を述べた。
スバルの選んだ袴は、上が無地の桃色で、下は紫と白の千鳥模様だった。羽織りは白い生地に桜の柄が描かれていた。
「可愛い!すっごく可愛い!」
そう言って横から飛んで来たのはルーシィだった。
「凄く似合うよ!ガジルも早く帰って来ればいいのにねぇ」
「え?ガジルはいないのか?」
ルーシィの言葉に反応して、スバルは一瞬だけ尾の動きを止めた。
「うん。前から予約してたクエストがあってね、夕方ぐらいには帰るんじゃないかな?」
「・・そっか・・・」
「会いたかった?」
「へっ?」
ルーシィの問いかけに、スバルの返事は力のないマヌケな返事になってしまった。
ルーシィはそんなスバルを見て、とても面白そうに笑っている。
「み、耳元で笑うなっ!」
「ご、ごめ〜ん・・・返事が凄い面白くって・・・」
「面白くないっ!・・・ちなみに、今何時?」
スバルが問うと、ルーシィではなくエルザが言った。
「もう昼だ」
「やっぱり・・・」
どうりでお腹が空くわけだ、と、スバルは一人で納得していた。
そこからのスバルは普通に楽しそうだった。
ルーシィに紹介されて、レビィ達とも仲良くなった。
ミラやリサーナの手伝いをしたりもした。
その姿は、昨日来たばかりの少女とはとても思えなかった。
「ルーシィは本を書いてるんだな」
「ま、まぁね〜。あんまり人気ないけど・・・」
「いや、凄い面白いよ!スバルの部屋の本棚にもあったと思う!」
「ほんと?見る!」
「やめよう!?」
そんな風な、他愛も無い話も、スバルを楽しませていた。
そんな、そんな時だった。
「帰ったぁ〜!!」
勢い良く扉が開けられて、中に眼鏡をかけた女性が入って来た。
「あ、雷神衆だ」
レビィの言葉に、スバルは軽く首を傾げた。
「・・・レビィ、何だそれ?」
「え?あぁ、雷神衆の事?マスターの孫のラクサスが作ってる・・・チームみたいなもの?」
「・・・ラクサス・・・」
「そう。ほら、今入って来た、ヘッドフォンしてる人だよ」
レビィはそう言って、ラクサスを指差した。
スバルはレビィの指差した方向にいる一人の男を見つめた。
「・・・あれがラクサス・・・」
スバルがそう呟いた瞬間、ラクサスとスバルの目がばちっと合った。
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