おぢばにおかえり
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第三十三話 明治の中でその十一
「それで何でなのよ」
「何か原作で色々あったみたいですよ」
「色々なの」
「柴田錬三郎さんの」
「そうなの。それで阿波野君は眠狂四郎になりたいの」
「はい、浪人に」
「浪人ね」
「先輩が町娘なら丁度いいですよね」
にこにことしてこんなことも言ってきました。
「それなら」
「そう?」
「僕はそう思いますけれど」
いぶかしんだ私にこんなことも言ってきました。
「お似合いですよね」
「そうよね、ちっちとこの子一緒にいたらね」
「結構絵になってるし」
「それじゃあね」
「その組み合わせもね」
「いいかもね」
「そうかしら」
首を傾げさせてしまいました、皆のお話を聞いてまた。
「私は別に、というか何で一緒なのよ」
「だからデートしてるんでしょ?だったらよ」
「ちっちとその子が一緒にいてもいいってね」
「そう思ったんだけれど」
「私は思わないわよ」
眉を顰めさせもしました、何か今日は表情が色々変わります。
「だからたまたまここでも会って映画村の中見回っただけで」
「それでも一緒にいたじゃない」
「そうそう、結構絵になってるしね」
「そのまま一緒にいたら?」
「今日はね」
「一緒にって」
私はまた阿波野君を見ました、嫌になる位にこにこしています。その阿波野君を見てから眉を顰めさせてこう言いました。
「この子と」
「僕はいいですよ」
これが阿波野君の返事でした。
「先輩はどうですか?」
「仕方ないわねって言ったらどうするの?」
どうしてかここでこんな言葉が出ました。
「その時は」
「喜んで」
「仕方ないわね」
本当に言ってしまいました。
「それじゃあね」
「それならこれからも一緒にいましょう」
「全く、どうしてこうなるのよ」
今度はこの言葉が出ました。
「まあ映画村にいる間だけはね」
「いや、嬉しいですね」
「嬉しいの?」
「とても」
心から嬉しそうな顔での返事でした。
「先輩と一緒なら何処でもですし」
「何処でもって」
「ましてやここ凄く楽しいですからね」
「映画村が楽しいことは同意よ」
私としてもです。
「そのことはね」
「そこで先輩と一緒ですから」
だからと言って止まりません。
「僕嬉しいですね」
「あらあら、それはね」
「もう決まりね」
「ちっちも隅に置けないわね」
「年下殺しなのね」
「いい加減にしないと怒るわよ」
私は囃し立てにかかった皆に八重歯を剥いて言いました。どうも子供の頃から怒ると八重歯が出てしまいます。
「だからこの子は彼氏とかじゃないから」
「はいはい、同じ大教会の後輩ね」
「そういうことよね」
「そうよ、全く」
私は八重歯を出したままクラスメイトの皆に言いました。
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