Blue Rose
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第二十話 小さくなる身体その三
「君もね」
「声が高いから」
「うん、小柄なんだ」
「そうですか」
「日本の声優さん、女性の人は小柄な人が多いね」
「あっ、それ友達が言ってました」
岡島のこの指摘にもだ、優花は応えた。
「女性声優さん達は小柄な人がかなり多いって」
「一五五ない人が多いんだ」
「そうみたいですね」
「一五〇ない人も多いよ」
「僕もそれ位になりますか」
「多分ね」
「そうですか」
「君はかなり声が高いから、歌うと」
その場合の声域はというと。
「ソプラノ、それもレッジェーロだね」
「ソプラノで一番高い声域ですね」
「それになるね」
「だからですか」
「うん、一五〇かそれよりまだ小さいか」
「そこまで小さくなるんですか」
「そうなると思うよ、声優さんが小柄なのもね」
声優のことをだ、岡島はさらに話した。
「声域が高いからだしね」
「本当に声が影響するんですね」
「実は僕も応援している声優さんがいてイベントに出たことがあるけれど」
何気に自分の趣味のこともだ、岡島は話した。
「その人は一四五ないからね」
「一四五もですか」
「一四四だね」
「それはまたかなり小さいですね」
「しかも童顔だから本当に子供みたいだったよ」
「可愛い感じの」
「そうそう、本当にね」
実際にという返事だった。
「大学を出てる様には思えないね」
「声ってそれだけじゃないんですね」
「そうだよ、だから君も小さくなるから」
今よりもというのだ、女になれば。
「そのこともわかっていてね」
「わかりました、覚えておきます」
「そういうことでね、それで今日だけれど」
「はい、今日は確か日曜でしたね」
「外に出るかい?」
優花の目を見てこう問うた。
「そうするかい?」
「外にですか」
「うん、僕の車でね」
「いいんですか?」
「君は結核とかじゃないからね」
伝染病でここにいる訳ではないからだというのだ。
「だから許可が出て職員の付き添いがあればね」
「外出してもいいんですか」
「そうだよ、どうかな」
「はい、じゃあちょっと」
岡島の言葉を受けてだ、優花もすぐに返答した。
「長崎の街まで」
「行きたいんだね」
「外出出来るとは思っていなかったです」
「ここにいれば何でも足りるしね」
「はい、何でもしてもらって」
「そうした場所だからね」
それでという返事だった。
「だからね」
「それで、ですか」
「そのことは普通だよ」
「そうですか」
「僕達の仕事だしね」
患者、療養所にいる彼等の世話はというのだ。
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