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俺が愛した幻想郷

作者:茅島裕
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俺は愛せる? 幻想郷...
吸血鬼ってこんなん?
  第三十話 吸血

 
前書き
ミルクティーは紅茶◯伝派ですが、最近午後ティーのミルクにハマっているどうもうp主妹紅です。

いい加減しつこいですが——いや、初めてかな。
私の書く前書きは後書きと思ってください。本編を書いたあとに前書きを書くのでね。

いやはや、今回は書くのがいつも以上に楽しかったですが、いつも以上に苦労しました。構造はかなり練っていて、それこそかなり完成度の高いもの(自称)なのですが、自分の表現力の限界が見えましてね。
読者様に伝わるかどうかちょっと不安なのです...

っと、弱音ばっか吐いてたらどうにかなるものもならないですね。明日も朝から頑張るぞいっと。


本編どぞ。 

 
「ちぃ、ちょうだい」

ただでさえ紅い瞳を紅く光らせ、舌足らずに彼女は喋った。

ちぃ... "血"のことであるのは確かなはずなのだ——だが、念のため。

「その『ち』とは俺達の身体の中を回ってる『血』のこと...だよな?」

こくり。彼女はその身体に等しく、小さく頷いた。
そんなことさっき確かにしたはずだった。なのに、念のため聞いたせいだ。俺は恐怖を隠せなかった。

俺は、目の前にいる彼女——俺の式神、悪く言えば主従関係、良く言えば相棒——から一歩後ずさった。一言で言うなら、びびった、そう言うことだろう。

だって考えてみろ、血をよこせって言っているんだ。何が怖いとかじゃない、そんなもの欲しがるとか、普通あり得ないだろ。
それが目の前であり得てるんだ。怖いに決まっている。

——待て。血だと?

昨日の朝だ。口の中で血の味がした話、舌には穴が開いていた。

『"吸血鬼"って信じますか?』

不意に、博麗ちゃんの言葉を思い出す。

『案外、近くにいるかもしれませんよ』

この目の前にいる彼女が現れたのはいつだ? 一昨日の夜だ。舌に穴が開いたのは昨日の朝...
一般的に吸血鬼は血を吸う。血をくれと言っているやつがいるとする、そいつは確実に吸血鬼だろう。

「最後の質問。お前、吸血鬼か?」

その吸血鬼の主人だというものの、恐怖はまだ消えず、震えそうな声を抑えて質問する。
案の定、彼女は頷いた。
彼女の表情は至って変わらないが、そりゃそうだろ、とでも言いたげな顔... 俺にはそう見えた。

「あ、ごめん。やっぱ最後じゃない、もう一つあった」

雰囲気をぶち壊したくなかった為、言うか言わまいか迷ったが、これも今聞かなければまずいことである。

——血はどれだけ必要か。

この子の性格上——というか舌足らずなところからしてあまり饒舌ではなく、そもそもお喋りを得意としなさそうだが...

「その血ってどれくらい必要なんだ...?」

お前の全部だよ、なんて言われたら違う液体まで吐き出すことになり兼ねないので恐る恐る質問する。
すると、もっとも意外な反応だった。素っ頓狂...?
首を傾げて如何にも頭に大きなハテナを浮かべている様子だった。自分でも量がわかっていない、そう言うことだろう。

「昨日の朝——もしくは一昨日の夜に俺が寝たあとに吸ったんだよな? そのときはどうだった?」

「すこぉ〜し、だけ」

吸血鬼なんて怖い種族に似合わない可愛らしく大人しい澄んだ声に舌足らずな言葉で彼女はそう言った。
少しだけ。要は夜食感覚で食事を楽しんでくれたのか。

「お腹、空いてるんだよな...」

ふと、思い出す。式神の飼い方メモ、何番かまでは思い出せないが、その子の好きな物をあげると書いてあったんだ。
血くらいくれてやろう。

大の字に腕を広げ、その場に座る。実際に吸血鬼がどうやって血を吸うか知らない。知らないけど、現実の世界で俺が得た知識によれば首だ。邪魔にならないよう腕を広げたのだ。
ちょっとした手違いで殺されても困る。なんの抵抗もしないよう手に拳を作って耐えてみることにしよう。

すると、俺の気持ちが伝わったのか、一度は光を収めた紅い瞳をもう一度紅く光らせ、俺に擦りつくように近づいた。
やってはいけないことかも知れないが、恐怖に耐え切れなかった俺は強く目を閉じた。
彼女の... 式神の..... "吸血鬼"の吐息が近くなったのを感じ、息を止めた。
徐々に徐々に、心臓の鼓動が早くなるのがわかる。


ダメだ。怖い。怖い怖い。怖い怖い怖い怖い怖い!


ピタリ。研ぎ澄まされた感覚神経が何一つ紛れもなく俺に表した感覚だ。働いた感覚は唇。触れたそれは実に生暖かく、それとなく濡れていた。
生暖かく濡れている小さいソレは、口の中へと入っていき開けろと言わんばかりにソレは口の中で動いた。

気がつくと、俺の中にあった怖いという感情は一つ残らず消えていた。それと同時に好奇心が湧いた。何が起きているのだろうか、と。
それと同時に、口の中で動いているソレを舌で探していた。
探し求めていたソレが舌と触れるときには、舌を全開まで伸ばしていたのだ。いまだ目を瞑ったままの俺にはそれしかわからなかった。

何を... やっているんだ...?

次のそれは、感情と考えの整理がつかないうちを狙ってやってきた。

——っ!?

今の現代では言葉にならない感覚。痛みでもなく、快感でもなく、ただ何かが神経と繋がった... そんな感覚。

ここで初めて、俺は目を開けることにした。一瞬の出来事でも、一時間以上もの長さに感じ、気になっていたことを今確かめることができる。

吸血鬼(かのじょ)の紅く光る瞳が目の前にある。
そして、今もなお続いている言葉にならない感覚は、全開まで伸び切っていた"舌"からである。

これは恐怖ではない、何故なら、恐怖は遂に先ほど消えたのだ。なら、これはなんの震えだろう。
大の字にも出来なくなり、力を失くして地面に付いているはずの手が震えているのだ。
支えの効かなくなった手が地面を滑らせ、地面に背をつけた。

これが世にいう床ドンというやつか。

よかった、冗談を考える余裕はある。

これ、吸われてるのか。まだ感覚が消えないし、だとしたら今もずっと吸われているんだな。
でも待て、この感覚が舌から来てるということは、舌から吸われているということだろう? でもそうか、昨日の朝もそうだった、穴が開いていたのは舌。この子の吸血は舌からなんだ。もしかしたら本物の吸血鬼はみんなそうなのかもしれない。首から吸うのは物語での——空想での吸血鬼だけなのかもしれない。
冷静になって考えてみるべきだった。一度吸われている、あそこまで怖がる必要もなかった。
カッコ悪...

ぬちゃりと小さな音が聞こえ、同時に吸われる感覚が消える。
もう一度光りを収めた瞳が離れ、彼女(きゅうけつき)全体を視覚できるようになる。

指先を舌先でチロチロと舐める彼女がいた。

首だけ起こしていた身体を起こし、立ち上がろうとする——が、恐らく貧血による眩暈がし、立ち上がることをあとにした。
全く吸われてる感覚がしなかった為、大丈夫だと思ったが、かなり吸われていたようだった。

「どうだ、お腹いっぱいか?」

こくこくと大きく頷く。心なしか頬が上がっているように見え、大満足と言ったところだろう。

それはよかった。

——ところで。

なんでドアの小さな隙間から向かい側のドアの小さな隙間まで見え、この部屋にあるありとあらゆる埃を一つも見間違えずに見れ、ひっろい家のもっとも遠いところにいるであろう橙と藍の会話も聞こえ、恐らく紫が夜食で食べているのであろうカップラーメンらしき香りのする味噌のスープの香りがここまでするんだろう。

と、取り敢えず。血の味がする口の中をどうにかしたい。

腕を伸ばせば届く位置にある冷蔵庫の取っ手に手を添え——取れる。取っ手が取れる。
付け根の部分から破片をこぼして取れている。

目のやりどころに困り、俺をジッと見ている彼女に目を合わす。

こくん。

は!?
こいつなんで頷いたの!? なんで今、目を合わせて頷いたの!?

「なんだ、何がおこってんだこっ——ってぇ!」

舌を噛む。普通に喋っているだけなのに舌を噛む。これはダサいとかではない。不可解なことがおきているのだ。それは先ほどの取っ手しかり、五感しかりもだが...



「——なんでこんなに長い八重歯がついてるんだ...?」
 
 

 
後書き
もう一度彼女に目を合わせる。
すると彼女は、指を口に引っ掛け、八重歯を見せてくる。

「お揃いってか!? わらえねっ——だぁ! ちくしょう!」

なんでこっちの八重歯では噛むと痛いんだ!
 
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