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雷と鉄と妖と

作者:百瀬杏樹
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第一話:鉄の出会い:

 
前書き
一応ラクサスが帰って来た後ぐらいの設定です。 

 
それは、クエストの帰り。


「ふわぁ〜ぁ・・・」
何事もなくクエストを終え、ガジルはギルドへと足を進めていた。
今は、マグノリアから少し離れた街にいた。
街には活気とした空気と同時に、どんよりとした空気も流れていた。
それもその筈だった。
「この男、安くしとくよ?」
「愛玩用に、どうだい?この子。結構良いだろ」
今ガジルが歩いている通りは、闇ギルドによる人身売買が行われている通りだった。
女子供関係なく、人が買われては売られ、売られては買われる。ガジル自身、犯罪だとわかっていながらも、咎める気は殆どなかった。

「・・・・お兄さん、ねぇ、そこの黒髪のお兄さん」
不意に声をかけられて、ガジルはくるっと後ろを向いた。
そこには、黒いローブで顔を見えないようにしている女が立っていた。
「お兄さん、珍しいモンがあるんだけどねぇ、買わないかい?」
「買わねぇよ」
「つれない事言わないでおくれよ。見るだけでもいいよ?色んな闇ギルドが喉から手が出る程ほしがってるモンだからねぇ」
「・・・」
色んな闇ギルドが喉から手が出る程ほしがってるモン。
そんな奴が、本当にあるのか?そしてあったとしたら、一体何なのか?
小さな興味を沸き立てたガジルは、薄く笑みを浮かべて「見るだけでもいいんだよな?」と言う。
すると、女もフフッと笑い、「そうだよ」と言って、ガジルを手招きした。
女の手招きに続いて行ったのは、小さな奴隷小屋だった。みすぼらしいと言ってもおかしくない、古くさい小屋だった。
「アンタ達、お客さんが来たよ」
女がそう言うと、二人の男がこっちを振り向いた。
一人は頭に赤いターバンのような物を撒いていて、もう一人は白い布を適当に頭に巻き付けていた。どちらも体が日焼けしていて、体も大きい。
二人の後ろには、一つの牢屋に朱色の布がかけられていて、そこからガシッ、ガシッ、という音がしていた。
「それが珍しいモンか?」
「そうだよ。気に入ってもらえると嬉しいねぇ」
女がそう言うと、白い布の男が、牢屋にかけていた布を取った。
「・・・フーッ、フーッ・・・」
「・・・!!」
布がなくなり牢屋の中があらわになり、ガジルの目に一人の少女の姿が映った。ただ、その少女は、あまり人間に見えない容姿をしていた。
金髪のようでそうでない、少しあせたぼさぼさの髪の上から、黄色い、犬の耳のようなものがあった。濃い藍色の目は鋭くつり上がっていて、口の中の歯も、獣のように鋭い。綺麗な純白の色をした肌は、ムチのような傷跡や痣が至る所についていて痛々しい。後ろから何やら、黄色い毛色をした二本の尾のようなものが動いている。
「・・・これ、人間か?」
ガジルが女に問いかけると、女は微かに見える口元の端を怪しく上げて、笑ってみせた。
「人間じゃあないよ。妖って言う、人間の前に滅多に姿を見せない存在さ。これはその妖の一種で、弧族(こぞく)って言うんだったかねぇ」
「・・・で?これのどこが良いんだ?」
ガジルが聞きたかったのは、その妖が何故、色んな闇ギルドが欲しがるのか、という事だった。すると、赤いターバンの男が口を開いた。
「弧族はな、魔法以上の力が使えるんだよ」
「・・・はぁ?」
魔法以上の力?何を言ってんだ、こいつは。
ガジルが首を傾げてみせると、女が再び口を開いた。
「簡単に言えば、弧族が妖の中でも上位って事だよ。その弧族の力があれば、すぐに名前が有名になるだろ?だからだろ」
・・・あぁ、つまりは名声欲しさか。
心の中で納得すると、ガジルは頭をガシガシとかいた。
「・・・ま、確かに面白そうだな」
そう言うと、ガジルはギヒッと笑った。
「買う」
「お兄さんならそう言うと思ってたよ」
女がそう言うと、二人の男が牢屋を開け、少女を引っ張り出す。
少女が「離せ!」と叫び、男に噛み付こうとして、女がパチッ、と指を鳴らした。
すると、少女はガクッと崩れ落ち、何やら苦しそうに顔を歪めていた。
「鎖の鍵はこれだ。暴れそうになったら、これを打込んでやんな。すぐに大人しくなる。弧族は一日一回の食事でも生き延びれるから、そんなに与えなくても大丈夫だ」
「わかった」
白い布の男から説明を受けると、ガジルは少女を担いだ。
「じゃあな。ギヒッ」
ガジルはそう言って、少女を抱えて女達に背を向けた。



「・・・離せ・・・クソ野郎が・・・」
しばらくして、少女が口を開き始めた。
「お前なんかの相手・・・してられっか・・・私は、行かなきゃ・・・なんない、んだぞ・・・」
「へーへー」
ガジルはそう言って、近くの裏路地に入って、担いでいた少女をおろした。
「おまッ、何するつもり・・・」
「何もしねぇっての」
「ッ、触んな・・・」
伸びてくるガジルの手をもがくようにして離れようとする。ガジルは少女の首を掴み、鎖を自分の方へグイッと引き寄せた。
「やめ・・・・?」
ふっ、と、首の周りから重みが消えた。その瞬間、首にあった鎖が地面にガシャッと落ちた。
「・・・・・・?」
少女が困惑の目でガジルを見たが、ガジルは既に別の行動に移っていた。
少女の両腕につけられていた鎖を外したのだった。
「っし。ほら、気分はどーだじゃじゃ馬娘」
「・・・・・・」
少女は混乱しながら、ガジルを見つめていた。
「・・・・何で・・」
「んだよ。鎖はつけたままが良かったのか?」
「んな訳ない!!け、ど・・・」
何で助けた?
少女の目がそう言っているのを、ガジルはしっかりと捕らえていた。
「・・・理由なんて言うつもりはねぇ」
「・・・行かなきゃ」
「は?」
立ち上がろうとした少女の腕を掴み、ガジルは呆れたような顔をした。
「お前馬鹿か?その傷で言っても何も出来ねぇぞ」
「でも、私は妹達を救わなくちゃならないんだ・・・」
「・・・そんなら俺が救ってやろうじゃねーか」
「・・・え?」
少女はまたキョトンとした顔でガジルを見つめた。正直、ガジルもこんな事を言ってる訳が自分でわからなかった。
「・・・お前、名前は?」
「え?ス・・・スバル」
「スバル、俺のギルドに来い。そしたら妹も救ってやる」
「・・・」
やはり理解出来ていないようだった。
それもそうだろう。つい先程自分を奴隷として買った人間が、急に自分の妹達を救ってくれると言うのだ。混乱しない者などいないだろう。
それでも、スバルの中に、ガジルに縋る以外の方法はなかった。
「・・・い、いいの、か・・」
「あぁ。ほら、こっち来い」
ガジルに腕を引かれて、スバルはそのまま足を進めて行った。 
 

 
後書き
国語力なくてすいません。 
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